【第1幕】見つめられただけで、身体が反応していた
その日、夫は早朝から出張へ。
子供は友人と朝から遊びに出かけ、家には私ひとりだった。
梅雨が明けたばかりの、湿った空気が残る午前10時。
エアコンの効いた部屋でも、足の裏に微かな汗を感じる。
ピンポン──
その音に、私は少しだけ息をのんだ。
玄関を開けると、そこにいたのは先週、自宅での内職ワークに応募してきた青年。
大学生とのことだったけれど、その目元には歳以上の熱が宿っていた。
「こんにちは……あの、先日メールさせてもらった葵です」
低く、抑えた声。
なのに、湿気を帯びたような響きが鼓膜に残る。
「ちょっとだけ、お時間いいですか?」
玄関の戸を半開きのまま、その声を聞いていた。
なぜだろう、すぐに断れなかった。
うなずいたのは、言葉より早く身体だった。
リビングに通すと、彼は緊張したように笑いながら、少しだけ距離を置いてソファに腰を下ろした。
けれど私の視線は、なぜか彼の喉元へ引き寄せられていく。
シャツのボタンが少しだけ外れていて、首筋を伝う汗の粒が光っていた。
(喉仏……男の人の)
「あの……奥さんに、ちょっとお願いがあって来たんです」
その言い方が、なぜかくちびるの内側を乾かす。
言葉の意味よりも、その声の湿度に反応していた。
「実は……こんなものを見せるのは失礼かもしれませんが」
そう言ってスマホを差し出された。
そこに映っていたのは、昨日の私──
エプロンの下からブラのレースが透け、台所でかがんでいる後ろ姿。
腰のライン。太ももの付け根。しゃがんだ拍子に浮いたパンティの輪郭。
「……どこで……?」
「台所の窓。たぶん気づいてなかったと思いますけど」
震える手を抑えるように指を組む。
けれど、心拍数は落ち着かない。
彼は続けた。
「これで何かしようってわけじゃないです。
ただ……欲しいと思ってしまったんです。奥さんのこと」
「……それって……」
「正式に“契約”してもらえませんか?」
その言葉を、冗談と受け取れたらどんなによかっただろう。
けれど私の下着は、すでに肌に貼りつくほどに湿っていた。
「奥さんだけですよ。僕がこんなふうに、本気になったの」
その視線が、まっすぐすぎて、怖い。
けれど、その怖さごと、どこかで身体が悦んでいるのを自覚していた。
「……主人は……出張で……しばらく帰りません」
そう口にしたとき、自分が何を許してしまったのかを、はっきりと知っていた。
彼が立ち上がる。
私の前に立ち、唇が頬に触れた。
一度だけ──それはとても柔らかく、甘い湿度を残す。
そのあと、彼の手が私のあごをそっと上に向けた。
瞳が交差する。舌の熱が、くちびるの隙間にゆっくり入り込んできた。
私の背中がぞわりと粟立つ。
その瞬間、脚のあいだが――濡れた。
「……奥さん、契約の“最初の条項”、交わしませんか?」
そう囁かれたときには、すでに彼の指先が、私のワンピースの胸元に触れていた。
【第2幕】理性と濡れの境界線が、舌の奥で溶けていった
「……こんなこと、してはいけないのに……」
誰に言うでもなく、私の口から漏れた言葉だった。
けれどそれは、たったいま押し込まれた彼の舌によって、喉の奥で濡れてかき消されていた。
くちびるを割るように入り込んだ舌は、甘く、熱く、意志を持っていた。
唇の内側、歯の裏、舌の下──そしてそのまま、私の欲望の理性に火をつける。
「……んっ……やだ……舌……そんな……」
なのに、私の舌は彼を拒めず、押し返すように絡みついた。
それはまるで、体内の奥で交わる前戯のように、淫らで、震えていた。
彼の手が、ワンピースの布をひとつずつ丁寧に外していく。
ブラのフックが外れたとき、乳首にかすかに冷たい風が触れ、次の瞬間にはそこに舌先が──
「……だめっ……そんなの、やめて……」
声と反して、乳首がピンと立っていた。
彼はそこを吸い上げ、舌で弧を描くように転がし、左右を交互にくちびるで挟んでいく。
腰が揺れる。
脳が震える。
指先から、足先まで、熱がひたひたと伝っていく。
「ねえ……奥さん、下着、もう濡れてる」
彼が囁きながら、ショーツの内側に指を滑り込ませる。
くちゅっ……という音が、あまりに艶かしく、私の羞恥を破っていく。
指が一本、膣口をなぞり、外側のヒダをゆっくりと押し開いていく。
割れた花弁が、彼の指に迎え入れるように震えていた。
「……もう、こんなに濡れてる……中、見たいな」
その言葉と同時に、彼は私の膝を割って、ソファの縁に私を座らせた。
彼の顔が脚のあいだへ沈む。
最初は、吐息だけだった。
息がかかるたび、クリトリスが跳ねる。
そのあと──舌が、花弁をなぞるように優しく触れてきた。
「……あ、やだ……そこ……だめ……んっ……舌、そんな……あ……」
下唇を噛みながらも、腰が逃げられない。
彼の舌は、まるで私の“性感の地図”を知っているようだった。
舌先でなぞる、吸う、巻き込む。
ときには深く、穴の奥へ入れ、指と同時に、音を立てて私を味わっていく。
「あっ……ああ……奥、入って……っ……もう、だめ……」
そして、彼は私の身体をゆっくりとベッドへ運んだ。
脚を開かされたまま、背中をシーツに沈め、腰の下に枕を入れる。
「ここ……一番感じる体勢、ですよね?」
そう言って、彼は私の中へ、ゆっくりと熱を差し込んできた。
——挿入。
重く、太く、意志を持った熱が、私のなかを開いていく。
「ん……ふっ……やっ……おおき……い……」
彼のペニスが奥へ届くたび、心も濡れていく。
突き上げるたびに、乳首が跳ね、くちびるからは喘ぎが漏れていく。
彼は私の上で体位を変えた。
私を抱き寄せたまま、側位になり、片脚を彼の肩に預ける。
その体勢で、角度が変わり、奥の奥──膣の天井を何度も擦られて、私は震えを止められなくなる。
「やば……奥さん、締まりすぎて……っ……」
彼の喘ぎが、私の名前を呼ぶ。
名を呼ばれるたびに、身体の芯が濡れ、私はまるで彼に“契約印”を刻まれていくようだった。
「出しません……ちゃんと……避妊しますから……もっと、抱かせてください……」
その言葉に、私の腰が自分から動いた。
男の快楽を欲しがる女の体へ、知らないうちに変わっていた。
——契約。
それは、言葉ではなく、濡れた膣と、つながった奥で交わされていた。
【第3幕】理性の崩壊と、声にならない絶頂の余韻
もう、抗えなかった。
天井を見つめながら、脚は彼の腰に絡まり、自ら締めつけていた。
「……あっ……だめ、奥……そこ……あっ……」
繰り返される突き上げに、喉の奥から声が漏れる。
それでも彼は止めなかった。
私の髪をすくい上げ、耳の裏にキスを落としながら、言葉より深く、**奥の“感じる場所”**へ焦点を合わせてくる。
「奥さん……イキたいんでしょ。言って、声にして」
恥ずかしくて言えない。
なのに、身体のほうが先に答えてしまう。
膣壁がきゅっと締まり、ペニスを咥え込んだまま痙攣してしまう。
「あ……あっ……ああ、やぁ……もう……っ……」
私の叫びが、ベッドの軋みにかき消される。
ふとももの内側が震え、内臓の奥で熱が破裂するような快感が走る。
絶頂。
けれどそれは一度では終わらなかった。
「まだ終わらせませんよ……今度は後ろから、いいですか」
そう言って、彼は私の身体をゆっくりとうつ伏せにした。
枕に顔を埋め、脚を開かされ、膝を立てる。
そのまま、彼の熱が後ろから差し込まれる。
後背位。
奥の角度が変わり、さっきまでとは違う場所にペニスが当たる。
何度も突かれるたび、子宮の手前が甘く腫れていく。
「うっ……くぅ……おく……おくっ……あああ……っ……!」
シーツを握りしめ、背中をそらし、私はもう声を押し殺せなかった。
気づけば、腰を自分から打ちつけていた。
汗と愛液で濡れた脚の付け根が絡み合い、音を立てる。
彼の腰が速くなる。
呼吸が荒くなる。
そして──
「奥さん……もう出そう……いい……ですか……?」
「っ……いい……避妊薬……飲んでる……から……っ……」
言ったと同時に、彼の熱が膣の奥に吐き出された。
びくびくと震えるペニス。
奥でぬるりと広がる精液。
そして──私もまた、その瞬間、絶頂に達していた。
「は……ぁ……あぁ……ぅ……ふ、ぁ……」
言葉にならない声。
汗ばむ肌と肌。
ふとももの奥を伝う液体の温度だけが、交わりの事実を教えていた。
そして、静かに、彼が私の上に覆いかぶさってきた。
「……奥さん、ありがとうございました。……でも、これで終わりじゃないですよね」
言葉の代わりに、私は彼の髪を指に絡めた。
それが、続きの“契約”のサイン。
その夜。
シャワーを浴びたあと、子供の寝息が聞こえる部屋の隣で、私はタオル一枚を巻いただけの身体でソファに座っていた。
彼からのLINE。
「明日、また“続きを”したいんです。
奥さんの中の、あの奥まで。」
私はそれを読みながら、ふとももを閉じることができなかった。
そこには、まだ彼の気配が、残っていたから。



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