人妻不倫|元彼と昼下がりのホテル、身体が憶えていた

結婚して八年。夫とは穏やかで、安定した日々だった。夕食の献立を決め、洗濯物を畳み、週末は近所の公園を歩く。愛情はある。信頼もある。ただ、身体の内側が熱を持って疼く夜は、とうに終わっていた。

その日は、午後の休みだった。駅近くの文具店で手帳のリフィルを探していると、後ろから名前を呼ばれた。

「結衣」

振り返ると、大学の研究室で隣の席だった櫂が立っていた。当時より少し声が低く、視線が落ち着いていた。

「久しぶりだな。綺麗になった」

社交辞令だと分かっていても、胸の奥がざわついた。学生の頃、彼に触られるたびに先に身体が反応していた記憶が、急に蘇る。夫の前では決して出さない自分が、すぐそばまで来ている気がした。

「少し、話さないか」

自然な誘いだった。断る理由はいくらでもあった。それでも私は、小さく頷いてしまった。

ホテルの部屋に入る頃には、もう互いの熱を隠せていなかった。ドアが閉まる音がした瞬間、私は彼の胸に額をつけた。唇が重なる。舌が深く入り、唾液の味が口の中に広がる。彼の手がスカートの上から腰を掴み、そのまま壁に押し付けられた。

立ったまま、下着の上から指が滑る。布の隙間に入り込んできた指先が、すでに熱く湿った襞をゆっくり開いた。

「こんなに……結衣、待ってたのか」

否定できなかった。夜、夫が寝たあと、一人でこの感触を思い出していた自分がいた。指が奥へ入り、内側をなぞられるたび、膝が震え、甘い吐息だけが漏れた。

「見ないで……恥ずかしい」

そう言いながら、私は自分の手を彼の手首に重ね、もっと深く入れてほしいと動かしていた。壁に背を預け、脚を開いたまま、自分の指でもそこを撫で始めた。彼に見られていることが、かえって熱を加速させる。内面に隠していたものが、音になって出てきた。

「んっ……ここ、自分でも触ると……変になる」

彼が膝をつき、後ろから舌を当ててきた。立ったまま、鏡に映る自分の顔を見ながら舐められる。熱い舌先が芯を捉え、吸われ、擦られ、奥まで入り込んでくる。視覚と触覚が同時に重なり、腰が勝手に前へ出た。

「はぁ……櫂、そこ……舌、だめ……あぁ、聞こえるでしょ、音」

濡れた音が部屋に響く。恥ずかしいのに、止められなかった。絶頂が近づくたび、鏡の中の自分が紅潮して、見知らぬ女に見えた。

彼が立ち上がり、私をベッドへ導く。今度は彼の上に、後ろ向きに跨がった。自分で腰を沈め、奥まで受け入れる。夫には見せたことのない角度で、自分の動きだけで彼を出し入れする。背中に彼の手が回り、胸を掴まれる。

「見て……この顔、夫には見せないのに」

自分でそう呟いてしまい、耳まで熱くなった。腰を前後に揺らし、奥を擦り上げるたびに、甘い痺れが下腹部から背筋へ走った。彼の熱が内側で脈打ち、私の中が締めつけて離さない。

「結衣……そんな声、出すな」

「出せない……でも、出てくる。櫂、もっと奥……お願い、動かないで、このまま」

逆に彼が腰を浮かせ、立たせたまま後ろから深く突いてきた。足が床につかず、預けた体重全部が結合部に集中する。肌が打ち合う音、濡れた音、彼の低い吐息。五感が一度に溶けて、私は彼の腕の中で何度も小さく達した。

最後、彼が抜き、熱いものが私の下腹部にかかった。白い筋が肌を伝う感触と、彼の視線が重なる。私はそれを指でなぞりながら、まだ脈打つ内側を自分で押さえた。

静寂の中で、心臓の音だけが残った。

「また会いたい」

彼の声が、少しだけ弱かった。

「分からない。今は、これだけでいい」

窓の外はまだ明るい午後だった。誰のものでもない自分に、ほんの短いあいだ戻れた気がした。濡れた身体をシーツで包みながら、私は目を閉じた。日常に戻る前の、熱だけが残っていた。

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