ベランダに干した赤いベビードールが、風にさらわれて舞い落ちたのは、湿った午後のことでした。
あれは、きっと偶然じゃなかった――そう思えるほど、その瞬間から私の運命は熱を帯び始めたのです。
下の階に住むのは、大学生の蒼汰くん。
細身なのに肩幅がしっかりしていて、Tシャツの下に覗く鎖骨が妙に色っぽい。
無口だけど、挨拶するときだけ、少しだけ口元をゆがめて笑うの。
あの笑みの裏に、私が知らない“男の本能”が潜んでいるなんて、その時はまだ――思いもしなかった。
「……これ、落ちてきました」
ピンポンの音とともに、扉を開けると、そこにいた彼の手には、透けたランジェリー。
赤く濡れたようなレースが、彼の指に摘まれているだけで、喉が音を立てて鳴った。
私の奥の奥が、ひとつ、ゆっくりと疼いたのを覚えています。
「これ、下着……よね?」
「はい……すみません、風で……」
目を合わせられず、私は彼の手からそっとそれを受け取った。けれど、彼の指が、わざと遅く離れた。
レースが、ぬめるように指を滑ったその感触――忘れられません。
たぶんそのときには、もう私は、彼に“見られる女”になっていた。
次の週末、私は意図的に、あのランジェリーをまた干しました。
赤く、透けて、下着とは思えないほど淫靡なそれを――わざとベランダの縁に。
そして案の定、また風が吹いた。
「また落ちてましたよ」
彼の声に振り向いた瞬間、心臓が跳ね上がった。
彼は、部屋の中に足を踏み入れていた。
洗いたてのTシャツに、ジーンズ。だけど目が……いつもと違った。
どこか獣のような、飢えた視線。
「奥さん……これ、だれのために着るんですか?」
その一言が、すべてを解いた。
私は口を開く前に、彼の手が私の腰を引き寄せ、熱を帯びた舌が、耳の後ろをくすぐってきた。
「だめ……」
声はそう出たけれど、身体は拒まなかった。
むしろ、期待していた。
若く、熱く、飢えた男の手に、溶かされる瞬間を。
彼の手は、容赦がなかった。
ベビードールの胸元をなぞり、乳首の輪郭が浮かぶほどに布越しに指を滑らせる。
「……こんなに透けてるなんて、男を誘ってるのと同じですよ」
恥ずかしさと興奮が交差して、私は腰を引こうとしたのに、彼の手がそれを許してくれなかった。
むしろ、さらに深く、私を沈めていく。
ベッドに押し倒される。
彼の指が、Tバックの上から、熱い中心に触れる。
下着越しに擦られるたびに、甘い液が溢れてきて、自分でも音が聞こえた。
「濡れてますね……すごい」
彼の声が低くなり、指が布の隙間から侵入する。
たった一本の指が、奥を撫でただけで、私は足をすぐに閉じられなくなった。
そのあと、彼は私のTバックを口で引き下ろし、まるで果実を味わうように、舌でじっくりと中心を這ってきた。
「やだ……そんなとこ……」
でも、やめてほしいとは言えなかった。
柔らかな唇が、舌が、ひとつの点を何度も吸い、円を描くたびに、
私の身体は呼吸を忘れ、硬く震え、溢れ出していく。
快楽が波となって押し寄せ、私はベッドの上で背を弓のように反らした。
そして――彼はズボンを脱いだ。
「……っ!」
目の前に現れたそれは、信じられないほど太くて、長かった。
私の主人より……遥かに。
でも、恐怖よりも先に、唇が、喉が、求めてしまった。
彼の硬さを口に含んだ瞬間、私は自分が、もう後戻りできないところに来ていることを悟った。
「奥さん……気持ちいい……」
その声に応えたくて、私は口を深くまで使い、舌を絡ませた。
若さと力に満ちたそれは、奥を突くたびに喉を鳴らし、涙を滲ませながらも、私は夢中になっていた。
そして――彼が私の身体に入ってきた。
最初の一突きで、息が止まった。
全身が貫かれるような衝撃。
それほどまでに、大きく、熱く、硬かった。
「ああっ……そんな……深い……っ」
彼は腰を押し付けるように、ゆっくりと、しかし確実に、私の奥を突き上げてきた。
その律動が次第に激しくなり、私は声を上げずにはいられなかった。
身体の奥が、擦られるたびに快楽で痙攣し、私は何度も果てた。
松葉崩し、寝バック、騎乗――
彼の若く鋭い欲望は、私の中のすべてを蹂躙し、解き放っていった。
何度も、絶頂の波に呑まれ、気がつけば私は、女として、完全に“堕ちて”いた。
静かな余韻の中で、彼の胸に顔を埋めた私は、
「……こんな風に抱かれたの、何年ぶりかしら」
そう呟いた。
彼は黙って、私の髪を撫でた。
若いのに、優しくて、荒々しくて――そして、誠実な指。
今でも思い出します。
あの午後、干された欲望が風に舞って、若い指にほどけた瞬間を。
いまでも時々、ベビードールをベランダに干してみるのです。
あの風が、また私を、あの日のように――“女”にしてくれないかと願いながら。
あれから、幾日かが過ぎていました。
日常は、何事もなかったように流れています。
洗濯物を干し、買い物をして、夕飯を作り、夫の帰りを待つ。
けれどその間、私はふとした瞬間に――彼の指を思い出してしまうのです。
深く差し込まれたときの圧迫感、
濡れた音を立てながら自分の中を掻き混ぜられた感覚、
そして、あの熱くて、あり得ないほど太い彼の肉体が、
私の奥に触れてくるたび、喘ぎ声が止まらなかった夜。
あれが“たった一度”で終わるはずがないことなんて、
わかっていたのです、本当は。
その日も、私はわざと赤いベビードールをベランダに干しました。
主人は出張で不在。
心は言い訳をしていた。「乾きやすい場所に干しただけ」と。
でも身体は、きっともう決めていた――誘う準備を。
昼下がり、チャイムが鳴きました。
私の心臓も、それと同時に騒ぎ出します。
「また落ちてましたよ」
ドアの向こうで、あの声がする。
大学生の蒼汰くん――あの若い、でも獣のように濃密な快楽をくれた彼。
扉を開けると、彼の目が、すぐに私の胸元を見たのがわかりました。
今日は意図的に、ノーブラのワンピース。
「あがって、少しだけ……お茶でも」
口実は、もはや形式でしかありません。
リビングに座るなり、彼の視線が私を犯してくる。
言葉なんてもういらなかった。
「……また、着てくれませんか?」
唐突に、彼がそう言った。
その声が、なぜか愛おしくて、私は頷いた。
「……目、つぶってくれる?」
私はそっと席を立ち、寝室へ。
鏡の前で、もう一度――あの赤いベビードールに着替えた。
心がざわめく。
けれど身体の芯は、もうとっくに答えを出していた。
部屋に戻ると、彼はすでに立っていた。
目が合った瞬間、彼の喉仏がごくりと動いた。
「……やっぱり、綺麗です」
そう呟くと同時に、彼の手が私の腰に絡んでくる。
そのまま押し倒され、リビングの床の上。
昼の陽がカーテン越しに差し込み、私の肌にレースの影を落とす。
彼の指が、またTバック越しに中心をなぞった。
もう、反応は隠せない。
ぬめるように濡れたその場所が、彼の指にまとわりついて離れない。
「……もう、こんなに」
「見ないで……」
恥じらうフリをしながら、私はもっと触れてほしかった。
指が布の隙間から侵入し、敏感な奥をくすぐられ、
「やっ……あぁっ」
腰が跳ね、声が漏れる。
そのたびに、彼の口元が歪み、
若い欲望の熱がじりじりと私を焦がしていく。
「今日は……ベッドじゃなくて、ここで抱かれたい」
私は自分でも驚くほど素直に、そう言っていた。
彼は無言でズボンを脱ぎ、肉棒を露わにした。
何度見ても――太く、長く、膨らんでいる。
「……入るかな」
「試してみて」
そんなやりとりをしている時点で、もう私たちは理性を脱ぎ捨てていた。
濡れ切った私の中に、
ゆっくりと、でも確実に――彼の肉体が侵入してくる。
「……ああっ……入って……くる……っ」
身体が裂けそうな感覚とともに、奥まで満たされる。
動き始めた彼の腰は、前よりも滑らかで、深く、リズムが狂おしいほど正確だった。
私の身体がベビードールの中で揺れ、乳房が跳ねる。
乳首に吸い付きながら、彼が私の名を囁く。
それだけで、また絶頂が来てしまいそうで、必死に唇を噛んだ。
「奥まで、突いて……私、壊して……」
昼間のリビングで、人妻が大学生に犯されている。
その背徳感が、私をよりいっそう濡らしていた。
何度も絶頂を繰り返し、
最後、彼は私の中で熱く脈打ちながら果てた。
ベビードールのまま抱き合い、私は彼の肩に頬を寄せた。
静かな午後、時計の針の音だけが響く部屋で、私は“妻”ではなく、ただの“ひとりの女”だった。
もう、終わりにしなければ。
そう思っていたのに――
その翌週、また風が吹きました。
赤いベビードールは、
ふたたび風に乗って、彼の部屋の前へと、舞い落ちていったのです。



コメント