運命に導かれて
「星がよく見える場所を知ってるんだ」
湊斗の言葉に、胸がかすかに高鳴った。彼とは仕事で何度か顔を合わせたことがあったが、深く話す機会はなかった。それでも、その落ち着いた雰囲気と鋭い眼差しが、いつしか私の心に静かに入り込んでいた。
私は31歳のフリーライター。そして人妻だった。
家庭の中では良き妻、良き母であろうと努めてきた。それでも、心のどこかで満たされないものを抱え、都会の喧騒から逃げ出したくなる瞬間があった。
湊斗は29歳の天体写真家。星を追い求め、夜空の美を切り取る彼の仕事に、私は密かに憧れを抱いていた。
「どうしてここなの?」
「空気が澄んでいて、星の光が君を綺麗に映し出してくれるから……」
彼の言葉には、どこか確信めいた優しさがあった。
静寂の中の誘惑
都会のネオンから遠く離れた山奥。木々の間から見上げる夜空には、無数の星が煌めいていた。静寂の中、二人の吐息だけが夜に溶ける。
湊斗の視線が、ふと私に向けられた。
「少しポーズを変えてくれる?」
カメラを構える彼の声が、心を甘くくすぐる。
「君の横顔が、月光に照らされて美しい……」
シャッターの音が響く。彼の眼差しが私をじっと見つめ、まるで心まで見透かされているようだった。
近づく距離
「寒くない?」
「……少しだけ」
彼がそっとジャケットをかける。温もりが布越しに伝わり、胸の奥で何かが震えた。
「桜子……君は、本当に綺麗だよ」
「そんな風に言われると……」
彼の指がそっと頬をなぞる。滑らかな軌跡を描く指先に、心も身体も反応してしまう。
「スレンダーで、しなやかで……肌も驚くほど柔らかい……」
彼の低い声が、夜気の冷たさと対照的に熱を帯びていた。
「湊斗さん……」
声が震える。私の中で、何かがゆっくりと崩れていく。
夜空の下で解けていく理性
彼の唇がそっと触れる。優しく、しかし確かな熱を持つ口づけ。
「……もっと……」
湧き上がる感情に、理性が追いつかない。
「いいの?」
「うん……あなたとなら……」
夜風が肌を撫でるたび、熱が身体を巡る。
彼の指がそっと肩に触れ、滑るように背へと移動する。
「君のすべてが……愛おしい……」
彼の囁きに、体の奥が疼く。ふたりの熱が溶け合い、夜の静寂と共鳴する。
「湊斗さん……」
彼の腕の中で、私は初めて、ひとりの女として存在することを許された気がした。
解き放たれた情熱
木々のざわめきと、静かな夜の吐息が混ざる。
「……綺麗だよ、桜子」
彼の囁きが、余韻とともに私の心に沁み渡る。
「こんな気持ち……もう、戻れない……」
家庭の中では決して知ることのなかった、自分の奥底に眠る感情が目覚める。
湊斗の手が私の背を引き寄せる。熱を帯びた肌が重なり、彼の鼓動が私の中に響く。
「……桜子、君が欲しい」
彼の声は掠れ、私の名を呼ぶたびに、奥底に秘めていた何かがこぼれ落ちた。
「私も……湊斗さんが欲しい……」
彼の指が私の頬を包み込み、見つめる瞳がすべてを語る。
私はゆっくりと彼の上に身を乗せた。月光に照らされる私たちの影が揺れ、夜の静寂に溶けていく。
湊斗の手が私の腰を包み、私の動きに呼応するように優しく引き寄せる。
「桜子……美しい……」
ゆっくりと、波のように揺れながら、二人の熱は頂点へと昇り詰める。
月光に照らされた私たちは、互いにすべてを預け、溶け合う。
甘く、蕩けるような感覚の中で、私は彼と共に果てていった。


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