高層マンションの隙間から始まる背徳と快楽の夜

タイトル:
「仕切りの隙間、視られる悦びと禁忌の夜」

高層階のマンション。都心の喧騒から少しだけ離れた場所に建つその部屋を、私は気に入っていた。朝は遠くのビル群に陽が差し、夜はベランダに出れば、どこか孤独な夜景が広がる。

ベランダは広く、観葉植物たちの葉が風に揺れ、時折その葉擦れの音だけが静けさを満たす。だが、そのベランダにはひとつだけ、気になる構造があった。

隣の部屋との境界に設けられた仕切り板。その下には、三十センチほどの隙間があり、上からは背伸びすれば隣の様子が覗けてしまう。

私はその事実を、最初は気にしていなかった。けれど、ある日、隣の部屋に若いカップルが引っ越してきた。

彼女の姿はほとんど見かけなかったが、彼──二十代半ばくらいだろうか──はよくベランダに出てきていた。上半身裸で煙草をくゆらせる姿は、どこか無防備で、それでいて意識的な色気を感じさせた。

それから、私は夜のベランダに出る時間が少しずつ遅くなっていった。

ネグリジェ一枚。風を受けるたびに、薄布が肌に貼りついて、私はそこにいる自分を、まるで誰かに“見せている”ような錯覚に陥った。

ある日、風が強く吹いた午後。

私は洗濯物を干していた。
白いレースのショーツが風に煽られ、仕切りの下をすり抜けて、隣のベランダへと飛んでいった。

思わず口元を押さえたまま凍りつく。だが、すぐに彼の影が現れ、ベランダに腰を下ろして、私の下着をそっと拾い上げた。

指先でその布を持ち上げる仕草は、あまりに慎重で、まるで儀式のようだった。

そして、彼は私の方を見た。

視線が交わった。

それが、始まりだった。

数日後、私はあることに気づいた。

彼は、仕切りの上から、私を“見ていた”。

視線を感じて振り返れば、煙草の火がふっと消える。そのときから、何かが変わり始めた。

それは恐怖ではなかった。むしろ、私の奥に眠っていた何かが、静かに目を覚ましたのだ。

ある夜、私は仕切りのそばにしゃがみ込んだ。鉢植えの手入れを装いながら、そっと隙間に目をやる。すると、仕切りの下、わずかな隙間からスマートフォンのカメラレンズが覗いていた。

私は、その赤い録画ランプを見て、なぜか身体の奥がじわりと熱を帯びた。

見られている。

私は、そう確信した。

そして、私はそれを──受け入れた。

それから、私は“見せる”ことに意識的になった。ゆっくりと前かがみになって葉を撫でたり、腰を落としたまま脚を崩したり。

ある夜、私はわざと仕切りの下に手を伸ばしてみた。

彼の手が、触れた。

初めての接触は、電気のようだった。

指先が触れ合い、そっと、彼の熱を確かめるように私は手を滑らせた。

やがて、その熱が膨らみを帯びて押し返してきた。

私は、布越しに彼のそこを包み込み、ゆっくりと動かした。

仕切り越しの行為。顔も見えず、声も交わさない。

けれど、その行為は、私の奥深くまで震わせた。

次第に私は身体を屈め、仕切りに唇を寄せる。彼の熱が、そこにあった。私はゆっくりと、舌を這わせ、彼の先端を口に含んだ。

風の音だけがふたりの吐息を包む。

そのうち、彼の指が仕切りの下から伸びてきて、私の太ももを撫でた。

私は自然と脚を開いていた。彼の指がショーツの奥に触れ、濡れた感触に戸惑いながらも、慎重に、私をかき回していく。

「……だめ、そんな……」

小さく声が漏れる。でも身体は、拒んでいなかった。

快楽の波が押し寄せ、私は目を閉じ、仕切りに額を預ける。

彼の指が奥へと届く。

そして私は、こらえきれずに震えた。

そのまま、私は立ち上がり、ベランダのガラス戸を開けた。

「……来て」

一瞬の間のあと、彼が姿を消した。

私は玄関のドアの前で、鼓動の音だけを聞いていた。

やがて、チャイムが鳴る。

私は無言でドアを開けた。そこには、少しだけ息を弾ませた彼が立っていた。

もう、躊躇はなかった。

私は手を伸ばし、彼を自分の部屋へと導く。

「入れて……ほしいの」

声は震えていたけれど、欲望は確かだった。

私は彼の腰に手を回し、ソファへと倒れこむ。

唇が重なった瞬間、全身に火が灯るようだった。舌が触れ合い、湿った音が部屋の空気を濡らしていく。

彼の手が私の背中を這い、肩紐を落とした。キャミソールが音もなく滑り落ち、胸が露わになると、彼は迷いなく唇をそこへと下ろした。

吸われ、舌先で転がされるたびに、息が震える。硬くなった先端を優しく甘噛みされ、私は背中を仰け反らせた。

「……もっと、触れて……」

私の声に応えるように、彼の指が太ももを撫で上げ、ショーツの上から湿った感触を確かめる。

布越しに何度も擦られ、私は耐えきれず自らそれを脱ぎ捨てた。脚を開き、彼を迎え入れる姿勢を取ると、彼はそこに顔を埋めた。

舌が花びらをなぞり、奥へと潜り込んでくる。

「やっ……あ……」

舌先が中で跳ねるたび、私は堪えきれず腰を浮かせた。甘く崩れていく快感の波が幾重にも押し寄せる。

「もう……お願い……欲しいの……」

私の言葉に、彼は顔を上げ、熱を帯びたそこを自らの手で導きながら、私の入口に押し当てた。

瞬間、私の身体がその熱を飲み込むように開いていく。

「……っ、入って……きた……」

濡れた奥に、彼のすべてが沈んでくる感覚。

私は爪を彼の背に立て、強く引き寄せた。彼の動きがゆっくりと、しかし確かに始まり、深く突き上げられるたび、息が漏れ、声にならない熱が喉元で震えた。

「もっと……奥まで……来て……」

ソファの軋む音、肌と肌の打ち合う音、熱く交わる呼吸が空間を満たしていく。

彼の動きが徐々に速く、激しくなり、私はソファに指を食い込ませながら、何度もその波に溺れた。

「やっ……だめ……イく……」

彼が一気に奥へ突き上げた瞬間、身体が跳ね、脳が白く染まった。

そのまま彼の腕に包まれて、震える身体を預ける。

静寂が戻る部屋の中で、私は汗の滲む胸に彼の頬を感じながら、指先で彼の髪を梳いた。

だが──それはまだ終わりではなかった。

彼の熱は、まだ収まっていなかった。私の中に残されたその余韻が、再び疼き始める。

彼は体を起こし、私の太ももを掴んだまま、膝を割るように開かせた。

「まだ、足りない──」

低く囁かれた声が、震えるように私の奥に響いた。

再び熱が押し込まれる。今度はソファではなく、床へと移され、脚を高く持ち上げられた姿勢で、奥の奥まで突き上げられる。

「やっ……そんな……っ、深いの……っ」

脚が震え、腰が浮き、何度も打ちつけられるたびに、粘膜が擦れあい、水音が響く。

彼の腰が上下するたび、私の奥は熱を求めて収縮し、快感の波がとどまることなく続いた。

「イク……また、イク……っ!」

私の絶頂と重なるように、彼の動きがさらに激しさを増し、全身が跳ねるほどの衝撃が奥を叩く。

唇を噛んでこらえる快楽も、もはや押し留めきれない。私は彼に抱きつき、爪を立てて彼の背をかき抱いた。

「もっと……壊れるまで、して……っ」

欲望は理性を凌駕し、身体の奥から溢れ出す蜜が、濡れた音をより艶やかに響かせる。

彼が最後のひと突きを与えた瞬間、私の身体は痙攣のように震え、視界が滲んだ。

汗に濡れた額を重ね、ふたりで崩れるように抱き合ったまま、しばらく動けなかった。

やがて、私は指先で彼の唇をなぞり、笑みをこぼす。

「……見てただけじゃ、満足できなかったでしょ?」

彼は何も言わず、けれどその瞳は、すべてを物語っていた。

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