【第1部】和歌山の夜、24歳・亮介が落ちた深いまどろみと蠱惑の誘い
和歌山。
紀ノ川の流れを遠くに感じながら、地方都市特有の静けさがホテルの窓辺に張りついていた。
24歳、営業職に就いてまだ一年あまりの私は、今日も一人、出張先の常宿に身を沈めていた。
名前は亮介。
東京からこの和歌山へ月に二度は足を運ぶ。同期よりも早く担当を任されたのは、決して有能だったからではない。私の生まれ故郷がこの地であり、土地勘が効いた。ただそれだけの理由だった。
それでも、日中は得意先を駆けずり回り、夜になると疲労で身体は石のように重い。
「せめてホテルにいる時くらい、誰かに解きほぐしてもらわなきゃやってられない」
そんな思いから、宿泊のたびに決まってマッサージを頼むのが私の習慣になっていた。
シャワーで汗を流し、浴衣に袖を通す。窓を開けると、潮を含んだ湿った風が頬を撫でた。港町らしい生臭ささえ、なぜかその夜は甘い予兆のように思えた。
──ピンポン。
控えめなチャイムに胸がざわめく。
「失礼いたします」
入ってきたのは、黒髪をひとつに束ねた、品のある女性セラピストだった。年の頃は三十を少し過ぎたくらいだろうか。落ち着きと、どこか艶を帯びた雰囲気。私はその横顔を見た瞬間、わけもなく胸が熱を帯びるのを感じた。
「うつ伏せでどうぞ」
言われるままにベッドへ身を投げる。
オイルを手に広げる音がした。すぐに、掌が背中に触れる──ひやりとした温度の後に、じんわりと広がる温もり。肩、腰、脚へと移動していくその手は、ただの施術以上のなにかを私に予感させた。
目を閉じると、耳に響くのは彼女のかすかな吐息。
（ああ……気持ちいい……）
筋肉が溶け出すように緩み、意識が半ば夢へ滑り落ちていく。
──とん、とん。
腰を軽く叩かれて、私は小さく目を開いた。
「延長、されますか？」
囁き声は、不思議に湿りを帯びていた。
「……はい」
かすれる声で答えた瞬間、自分の中で何かが決壊するのを感じた。
その先に待つのは、ただの延長ではなかった。
【第2部】浴衣の隙間から零れた欲望──和歌山の夜に芽吹く“特別マッサージ”
腰を軽く叩かれた余韻がまだ残る中、私は半ば眠りの淵から引き戻された。
「特別マッサージもございますけれど、どうなさいます？」
彼女の声は、まるで湿った夜風が耳をかすめるように艶を含んでいた。
言葉を探す前に、頷いてしまったのだろう。曖昧な意識の中でも、その瞬間の空気に逆らえなかった。
──次の刹那、彼女の指先は既に私の太腿の内側をゆるやかにさすっていた。
浴衣は知らぬ間にはだけ、脚は無防備に開いている。内腿を這うその手は、強くも弱くもない、絶妙な加減で肌をなぞり、じわじわと中心へと近づいていく。
（これは……もう、施術じゃない）
心の奥でそう理解しながらも、私は抗えなかった。むしろ、抗いたくなかった。
やがて掌は股間を覆った。
「ん……熱いですね」
彼女が吐き出した小さな呟きは、私の意識を一気に覚醒させる。羞恥と昂ぶりが同時に胸を突き上げ、息が詰まりそうになった。
指先が軽く撫でるたび、下腹から火照りが湧き上がる。疲労に沈んでいたはずの肉体は、逆らうように昂ぶりを取り戻し、浴衣の下で形を主張し始めていた。
「……んっ」
自分でも抑えきれない声が漏れる。
ヌルリとした感触が走った。ローションだ。
冷たい一瞬ののち、全てを蕩かすような熱が広がる。五本の指が根元から先端へ、先端から根元へと緩急をつけて往復し、時に爪先がかすめるだけで、雷鳴にも似た痺れが背筋を駆け抜けた。
「気持ちいいですか？」
問いかけの声に、私は答えられず、ただ荒い呼吸で返すしかなかった。
彼女はそれを理解したのか、根元をきゅっと締め上げて一気に解放する。
──焦らされ、追い込まれる。
そのもどかしささえ、快楽の渦に変わっていく。
空いた片手が、垂れ落ちたローションを拾うようにして、後ろをゆるやかに撫でていく。
差し込まれることはない。ただ境界をなぞるだけで、全身がびくりと反応する。
「ふぅ……」
彼女の吐息が近くに落ちた。耳のすぐそばで、甘く湿った気配が震える。
私は抗うことなく脚を開いた。
羞恥ではなく、解放の意志で。
和歌山の夜、あの静謐なホテルの一室で、私は確かに“されるがまま”の悦びに身を委ねていた。
【第3部】胸の谷間に沈み、口内に溶ける──和歌山の夜に果てた二度の絶頂
私は、もはや彼女の手の操り人形だった。
股間を濡らすローションの音が、部屋の静寂に淫靡に響く。
「ジュプ……ヌチュ……」
その響きが耳に焼きつき、理性はとっくに役立たなくなっていた。
「もう少し……我慢してくださいね」
彼女の低い声に、震えるほどの甘美な支配を感じる。根元をきつく締められ、頂点に届きかけた快感は寸前でせき止められる。焦らしに焦らされるほど、昂ぶりは鋭さを増していく。
そして、次の瞬間──。
両の乳房が私の腰に沈み込み、灼けるような柔らかさが昂ぶりを呑み込んだ。
「んっ……すごい……」
谷間の奥深く、彼女は自らの肉を寄せて私を挟み、ローションを潤滑にして上下へと蠢かせる。
柔肉に押し潰されるたび、脈打つ熱が弾けそうになる。
ヌチャ、ヌチャ……。
胸の谷間でくぐもる音が、私の心を狂わせた。
「ふぅ……ぁっ……」
我慢できず、喉の奥から嗚咽のような声が漏れる。
次の一撃で、限界が崩れ落ちた。
どくん、どくん──。
熱が暴発し、彼女の乳房の奥で白濁が迸った。
谷間を突き破るように、精が溢れ出して滴り落ちていく。
「ん……いっぱい……出てますね」
彼女の囁きが、羞恥と陶酔をないまぜにして私をさらに震わせる。
だが終わりではなかった。
放心した私の昂ぶりを、彼女はそのまま唇で包み込む。
「ジュル……ジュポ……」
喉奥まで呑み込み、舌で根元を嬲る。手を添えることなく、唇だけで吸い尽くす技巧。
再び熱が昂ぶり、我知らず腰が浮いた。
「……もう、だめ……出るっ……」
声にした瞬間、二度目の絶頂が訪れた。口内に注ぎ込まれる奔流を、彼女は喉を鳴らして飲み下し、最後のひとしずくまで舌で掬い取る。
「はい……きれいになりました」
唇を離した彼女の声は、どこか慈しみを帯びていた。
残されたのは、汗に濡れた身体と、なお震え続ける心臓の鼓動だけ。
和歌山の夜。
潮の香りと彼女の吐息が入り混じり、私は二度の果てに、抜け殻のように横たわっていた。
その余韻は、出張という言葉では到底片づけられない記憶となり、今も私を熱く蘇らせる。
まとめ──和歌山の夜に刻まれた“特別マッサージ”の記憶
和歌山のビジネスホテル。
ただの疲労回復を求めたはずのマッサージは、思いがけず「特別」の名を冠した悦楽へと変貌した。指先に焦らされ、乳房に呑み込まれ、口内で吸い尽くされた二度の絶頂──その一つ一つが、私の肉体と心を震わせ、今なお鮮烈に蘇る。
彼女の囁き、吐息、乳房の柔らかさ、舌のぬめり──どれもが記憶の底で脈打ち続けている。
あの夜は単なる「出張の延長」ではなかった。孤独に沈む二十四歳の私が、和歌山の静かな夜に出会った、淫らで優しい奇跡だったのだ。
だからこそ私は思う。
出張の記憶の中で最も強烈に輝くのは、商談でも成果でもなく、あのホテルの一室で味わった“特別マッサージ”の熱だった、と。
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