【第1部】夜に隠された封筒──妻の微笑みの裏に潜む影
私の名は佐伯 啓介(さえき・けいすけ/46歳)。
大阪の郊外、古い団地の一角に妻と二人で暮らしている。
彼女は佐伯 真奈美(さえき・まなみ/42歳)。市内の工場でパートをしている、ごく平凡な主婦だ。
普段の真奈美は、質素で控えめ。けれどその容姿には、年齢を重ねた女だけが纏う柔らかな艶があった。
黒髪をひとつに束ね、台所で鍋をかき混ぜる姿は日常そのもの。だが、その後ろ姿を眺めるたび、私は密かに胸の奥で疼きを覚えていた。
◆ホームパーティの夜
その夜、彼女は小さく言った。
「今度の土曜、同じ部署のみんなでホームパーティするの。親睦会みたいなものだから…」
真奈美は滅多に外へ出たがらない。だから私は快く送り出した。けれど玄関先で見た彼女は、いつものエプロン姿とは違っていた。
ベージュのワンピースに軽やかな口紅。わずかに揺れるイヤリング。
まるで、私の知らない女がそこに立っているかのようだった。
「どう?変じゃない?」
照れ隠しのように微笑んだその顔に、私は一瞬、返事を忘れた。
「……いや、似合ってる」
そう言うしかなかった。
◆封筒の発見
パーティの翌日、真奈美は普段どおりの主婦に戻り、何事もなかったように家事に勤しんでいた。
だが数日後、私は偶然、彼女の部屋の引き出しを開けてしまった。
そこに置かれていたのは、一通の封筒。白地に、癖のある字で「会社四季報ww」と書かれていた。
胸がざわめいた。
こんなふざけたラベルを、几帳面な彼女が書くはずがない。
指先が勝手に動き、封筒を開ける。中から出てきたのは一枚のディスクだった。
私は逡巡した。だが、どうしても見ずにはいられなかった。
リモコンの再生ボタンを押した瞬間、画面に現れたのは――グラスを傾け、楽しげに笑う真奈美の姿だった。
◆私の知らない妻
映像の中で、妻は見知らぬ男たちに囲まれ、乾杯をしている。
その笑顔は、家では決して見せないほど艶やかで、少し酔いを帯びたように頬が赤い。
彼女の横顔を見つめながら、私は息を呑んだ。
――これは、ただの記録なのか。それとも、もっと別のものなのか。
画面の奥に漂うざわめきと笑い声が、私の心を締め付けていく。
「まさか……」
胸の奥で不安が形を持ちはじめたとき、映像の空気がゆっくりと変わっていった。
【第2部】封印された映像の中で──妻が堕ちていく濡れの予兆
画面の中で、真奈美は輪の中心に座らされていた。
グラスが幾度も傾けられ、赤みを帯びた頬が次第に熱を増していく。笑顔は柔らかいのに、その瞳はどこか焦点を失い、甘い霞に覆われていった。
◆触れ始める影
「真奈美さん、飲みっぷりいいですね」
「いやだ、そんなに見ないでくださいよ…」
彼女の声は笑い混じりだったが、すでに舌が少し回らなくなっていた。
その隣、肩に置かれた男の手。最初は軽く触れるだけだったはずなのに、映像は残酷なまでに、その動きを克明に捉えていた。
肩口から鎖骨へ、ゆっくりと滑る指先。
真奈美は身じろぎし、わざとらしくグラスを持ち直す。
しかし、そのわずかな動揺がすでに“拒めない”ことを示していた。
◆乱れる呼吸
「だめ…そんな、見られたら……」
声は小さく、誰にも届かない。だがカメラのマイクはその震えを拾っていた。
ブラウスのボタンに忍び込む指。
彼女は一瞬だけその手を払いのけた。だが、次に重ねられた指に、抵抗の力は抜けていた。
吐息が深くなり、肩が小さく上下する。
画面越しにも伝わる――妻が自分でも気づかぬまま、濡れの予兆に引きずり込まれていることが。
◆羞恥と快楽の境界
ソファに背を預けた真奈美は、数人の男に囲まれていた。
一人は耳もとに口を寄せ、囁きながら髪を撫でる。
もう一人は膝の上に手を置き、指先をゆっくりと腿の内側へ。
「んっ……だめ……」
掠れた声が漏れる。
けれど、その声は拒絶のためではなく、熱を帯びた鼓動を抑えきれないがゆえの、甘い震えだった。
薄布の下で脚がわずかに震えるたび、布越しに滴るような気配が伝わってくる。
まるで、彼女自身が身体の奥で“裏切り”を濃く育てていくかのように。
◆画面の前の私
私はその姿を見ながら、拳を固く握りしめていた。
怒りと嫉妬、そして抗えない昂ぶりが入り混じる。
――なぜ拒まない。なぜ、そんな顔をしてしまうのか。
画面の中で真奈美は、瞳を潤ませ、唇を震わせていた。
「見ないで……お願い……」
そう呟いた瞬間の表情は、確かに羞恥のはずなのに、同時に甘美な悦びに濡れていた。
私は息を荒くしながらも、次に訪れる光景を予感していた。
この“濡れの予兆”は、もう引き返せない領域へ妻を導いていく――。
【第3部】背徳の絶頂──妻の喘ぎと夫の視線が交錯する夜
映像の空気が、一気に変わった。
さっきまで笑い声で満ちていた部屋が、いまは湿り気を帯びた吐息と、衣擦れの音で埋め尽くされている。
◆堕ちていく姿
ソファに沈められた真奈美は、複数の男に囲まれていた。
片方の肩紐はいつのまにか外され、素肌が露わにされている。
白い胸元に重なる手。震える吐息が、マイク越しに耳を突き刺す。
「ん……やぁ……っ」
拒絶の言葉のはずなのに、声の奥に忍び込む甘い熱が、すべてを裏切っていた。
脚を閉じようとする仕草はか細く、逆に男たちの指に絡め取られ、ゆっくりと開かされていく。
濡れの予兆はすでに頂点を超え、彼女の身体は抗えぬ欲望に支配されていた。
◆夫の視点からの狂気
私は画面の前で、心臓が破裂しそうなほど脈打つのを感じていた。
怒りと嫉妬が、同時に肉体を焦がす。
だが、それ以上に目を離せない――愛する妻が、知らない男たちに翻弄され、女として快楽に堕ちていく姿から。
「……真奈美……」
名前を呼ぶ声は、もはや彼女に届かない。
モニター越しの彼女は、私の存在を忘れ、ただ肉欲に翻弄されていた。
◆喘ぎと絶頂
背後から抱きすくめられ、唇を奪われる。
真奈美は小さな呻きを漏らした。
「んんっ……んぁ……」
もう一人の男が胸を覆い、もう一人が太腿を撫で上げる。
至るところから与えられる刺激に、彼女の腰は震え、呼吸は乱れ、
ついに――その声は押し殺せぬ絶頂の叫びへと変わった。
「ああぁっ……だめぇっ……もう……!」
その瞬間、全身が弓のように反り返り、身体を大きく震わせた。
潤んだ瞳の奥に、羞恥と恍惚が混じり合う。
私は拳を握りしめながら、その姿を目に焼き付けた。
◆余韻の交錯
絶頂の波が去ったあと、真奈美は男たちの腕に崩れ落ち、汗に濡れた肌を震わせていた。
「……見ないで……」
小さく呟いたその声は、確かに私に向けられたもののように思えた。
だが私は、画面の前から動けなかった。
怒り、嫉妬、興奮、そして抑えきれぬ昂ぶり――。
妻の喘ぎは、私をもまた別の絶頂へと導いていたのだ。
まとめ──裏切りの悦楽と、夫が抱えた余韻
封印されたディスクに映っていたのは、私の知らない妻だった。
家庭的で控えめな彼女の奥底に潜んでいた、もう一人の女。
男たちに囲まれ、濡れ、喘ぎ、果てていくその姿は、裏切りであると同時に、抗えない女の本能の発露だった。
私はいまも答えを見つけられない。
――妻を責めるべきなのか。
――それとも、その姿に欲情してしまった自分こそが、罪を背負うべきなのか。
ただひとつ確かなのは、あの夜の映像が私の奥深くに刻まれ、もう二度と消えないということだ。
背徳と興奮の余韻は、夫婦の関係を破壊するのか、それとも新たな扉を開くのか。
その結末はまだ、誰にもわからない。
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