【第1部】潮風に囚われた宿──寂しさを隠す女将との邂逅
二十歳の夏、僕は生まれて初めての一人旅に出た。
向かった先は、北陸の小さな港町。
雑誌で見かけた「古びた漁師町の民宿」が妙に心を惹きつけたのだ。
夕方、まだ空に朱が残るころ、僕はその宿に到着した。
潮の匂いが鼻腔にまとわりつき、遠くで漁船のエンジン音が低く響いている。
木造二階建ての宿はどこか懐かしく、入口に吊られた暖簾が潮風に揺れていた。
迎えてくれたのは、女将の藤崎遥香（ふじさき はるか）さん──三十六歳。
黒髪を後ろでひとつに結び、薄い紺色の浴衣に身を包んだその姿は、港町の静けさに似合いすぎていて、思わず息を呑んだ。
「遠いところから、よく来てくれたわね」
柔らかな声とともに、僕の荷物を受け取る彼女の指先が、ほんの一瞬、僕の手に触れた。
その温もりに、胸がざわめく。
夕食の支度をしながら、彼女は少しずつ自分のことを話してくれた。
漁師の夫を手伝いながら、この宿を切り盛りしていること。
結婚して十二年になるけれど、夫は亭主関白で、女性として見られることがほとんどないこと。
「……夜もね、もう何年も、あの人とそういうことはないの」
彼女は笑ってみせたが、その笑みは痛いほどに寂しかった。
僕はただ、黙って頷くしかなかった。
けれど、視線を逸らそうとするたびに、彼女の浴衣の胸元が揺れ、白い肌がちらりとのぞく。
潮騒と蝉時雨が混じり合う音の向こうで、僕の心臓は早鐘のように鳴り続けていた。
「学生さん、まだ若いのに……純粋そうね」
そう囁かれた瞬間、喉が乾き、声が出なかった。
童貞であることを見透かされた気がして、耳まで赤くなる。
遥香さんの瞳が、その赤みを確かめるように僕を見つめていた。
その視線の奥には、長い渇きと、満たされぬ欲が潜んでいる。
──その夜、港町の静けさに溶けるように、僕は彼女の吐息を探し求めてしまうことになる。
【第2部】潮騒に濡れる唇──女将の口に導かれた初体験
夜半を過ぎ、宿の廊下はしんと静まり返っていた。
僕の部屋の襖が、二度、控えめに叩かれる。
「……眠れないの」
月明かりを背に、浴衣姿の遥香さんが立っていた。
胸元は少し乱れ、肩口からこぼれた白い肌に、灯りが淡く落ちる。
小さな盃を片手に、彼女は僕の部屋へと入ってきた。
狭い卓を挟んで並ぶと、彼女の吐息が酒と混じって甘く香り、
僕の喉はからからに乾いていく。
「学生さん……まだ経験がないんでしょう？」
彼女の言葉に、僕は視線を伏せる。
その沈黙こそが答えだった。
遥香さんは少し笑い、そして真剣な眼差しで僕を見つめた。
「大丈夫。わたしが……教えてあげる」
浴衣の裾をすべらせ、彼女は布団へと僕を導いた。
震える僕の手を取り、ゆっくりと帯を解く。
熱に浮かされたように、下腹がせり上がり、抑えきれない硬さを示していた。
「……すごいわね」
彼女の瞳が、驚きと欲望で揺れる。
布越しに形をなぞる指先が、まるで大きな獲物を確かめるように愛撫する。
僕は声を押し殺したが、喉奥から掠れた吐息が洩れる。
遥香さんは静かに僕の衣服を脱がせ、昂ぶりを露わにした。
月光に濡れるそれを見つめ、唇をかすかに震わせながら囁く。
「こんなに立派に……若いのに、立派すぎる……」
彼女の唇が、先端に触れた。
ひんやりとした舌先が、鈍く疼く先端をゆっくりと舐め上げる。
「ん……ふ……」
湿った音が静かな部屋に広がり、僕の腰は反射的に震えた。
唇が吸い込み、舌が裏筋をなぞり、
熱と湿り気が絡みつくたび、脳髄が痺れるような快感が奔る。
「んっ……ん、ちゅ……はぁ……おいしい……」
彼女の声は喉を震わせ、振動が直接に伝わる。
僕の巨きさに喉奥が押し広げられるたび、彼女は目を潤ませながらも吸い続けた。
唇と舌と喉が一体となり、波のように僕を飲み込む。
浅く、深く、また深く。
吸い上げられるたび、腰が勝手に浮き、視界が白く滲む。
「はぁ……んっ……すごい……全部入ってる……っ」
彼女は涙を滲ませながらも、誇らしげに笑った。
その笑みは、女将ではなく、一人の女の顔だった。
そして僕は悟った。
これはただの口淫ではない。
長い渇きを抱えた女が、若さと欲望を喉奥で貪る、
──まぎれもない“筆おろし”なのだと。
【第3部】潮騒と重なる律動──女将と大学生が果てた夜
遥香さんの口から解き放たれた瞬間、僕の昂ぶりは濡れた唇の艶をまとい、月明かりの中で脈打っていた。
「……入れてあげる」
その囁きは、海鳴りよりも低く、甘く、震えていた。
彼女は自ら浴衣をはだけ、白く柔らかな胸と、熱を帯びた秘め処をあらわにした。
汗ばむ太腿の間から、しっとりと濡れた香りが漂い、僕の理性を一瞬で奪う。
「来て……わたしの中で、大人になって」
腰を導かれるままに、僕は硬く反り立った昂ぶりを彼女へ押し当てた。
指先で確かめるように濡れたその入口は、じゅくりと脈を打ちながら僕を受け入れる。
ゆっくりと沈み込むたび、彼女の喉から押し殺した声が洩れた。
「あぁ……っ、すごい……奥まで、来てる……」
ぬめる熱が絡みつき、奥へ奥へと吸い寄せられる。
締め付けは強烈で、まるで海に溺れるように僕の全身を包み込んだ。
童貞の僕には、その圧倒的な快楽があまりに鮮烈で、息をするのも苦しい。
「んっ……はぁ……動いて……お願い……」
彼女が腰を揺らすと、波のように全身へ快感が押し寄せる。
膝に爪を立て、背を反らしながら彼女は声を震わせる。
「だめっ……こんなの、久しぶりで……あぁ……っ」
狭い部屋に、潮騒と喘ぎが重なり、布団はきしみ続ける。
僕はただ必死に、彼女の渇きを埋めるように、若さのすべてを打ちつけた。
「もっと……深く……そこ、いい……っ」
彼女の叫びに突き動かされ、律動は激しさを増す。
汗と涙と唾液が混じり、肌と肌がぶつかり合う音が夜を満たす。
限界はすぐに訪れた。
彼女の奥が痙攣し、熱くきつく僕を締め付ける。
「いく……一緒に……っ」
波のように絶頂が重なり合い、視界が白く爆ぜた。
潮騒と同じリズムで、二人の身体は震え、果てた。
布団に崩れ落ち、まだ互いの奥で繋がったまま、汗に濡れた体を重ねる。
「……ありがとう。あなたのおかげで、女に戻れた気がする」
遥香さんがそう囁いたとき、僕はただ彼女の温もりに頷くしかなかった。
──港町の夜は、童貞の僕をひとりの男に変えた。
そして彼女にとっても、それは渇きを潤す“新しい航海”の始まりだった。
まとめ──港町で溺れた一夜が教えてくれたこと
あの夏、北陸の小さな港町で出会った女将・遥香さんとの体験は、
単なる「筆おろし」という言葉で片づけられるものではなかった。
潮騒に揺れる宿で、童貞の僕は彼女に抱かれ、初めて「女の体温」を知った。
唇で導かれ、喉奥で貪られ、最後には全身で受け入れられたあの夜。
快楽の渦に呑まれるたび、ただ身体を重ねるだけでなく、
長年の渇きを抱えた女の孤独と、若さに燃える僕の衝動が、ひとつに融け合っていった。
「ありがとう。あなたのおかげで、女に戻れた気がする」
あの言葉は今も耳に残っている。
──潮風の匂いと、彼女の喘ぎ声。
あの夜に刻まれた記憶は、僕を一人の男に変え、
そして彼女にとっても、渇きを癒す“再生”の航海だったのだ。
旅先で偶然に交わった一夜。
それは決して忘れられない、港町に秘められた最も官能的な思い出となった。
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