【第1幕】昼下がり、カーテンの揺れが合図だった
音のない午後だった。
風も、人の気配も、なにもない──はずだった。
蝉の声が、遠くで擦れるように響いていた。
換気扇の低い唸りと、洗濯機のすすぎ音。
台所に立つ私は、白いTシャツにエプロンをかけ、まるで“何も知らない主婦”の顔をして、木べらで鍋をかき混ぜている。
火にかけたミネストローネの赤が、ぐつぐつと、密やかに色づいていく。
でも、身体は別だった。
背中──肩甲骨の下のどこかに、熱が貼りついている。
足の裏が湿って、呼吸が細くなる。
私のどこかが、彼の気配を、もう待っている。
コンロ脇の窓、そのカーテンが、わずかに揺れた。
それが、すべての始まりだった。
私はスプーンを持つ手を止めない。
ただ、背後にある勝手口から、彼の足音が一歩、また一歩と近づいてくる。
重く、静かに。
まるで“音にならない欲望”が、家の中に忍び込むように。
私は振り向かない。
指先でエプロンの結び目を直すふりをして、スカートの裾を──わずかにずらす。
そのとき、背中に触れた気配。
彼だった。
彼の右手が、私の腰骨に添えられ、左手が、背中越しに乳房の位置を“測るように”ふれてくる。
──着衣のまま。
布一枚を隔てているはずなのに、そこには“生”があった。
彼の指先は、あまりに知っていた。
私の身体が、どこに濡れて、どこで震えるのかを。
「……夫、すぐ戻るわ」
そう言ったのに、声がかすれていた。
喉が、渇いていたのではない。
私の中が、すでに熱で満たされていたから。
彼は、言葉など交わさない。
代わりに、下半身を私のヒップに強く押しつけてくる。
着たままのTシャツ越しに伝わる、男の硬さと温度。
その感触が、私の奥をじんわりと滲ませていく。
身体の奥に棲む“もう一人の私”が、彼を欲しがっている。
私は鍋に視線を落としたまま、ゆっくりと腰を後ろに反らせる。
鍋の中では、野菜が煮えていく──外の音、洗濯機のブザー、誰かが戻ってくる気配。
あらゆる“生活の音”が、この瞬間だけ、快楽の背景になる。
服の上から──なのに、彼の先端が、私の下着越しの粘膜にあたる。
こすれる。押しつけられる。
“突かれてはいない”はずなのに、子宮が、ずん、と疼いた。
私は火を少し弱め、スプーンを置いた。
それが、“許可”だった。
彼の手が私のエプロンを掴み、腰を引き寄せ、片脚を割り込ませる。
キッチンという日常のど真ん中で、私は後ろから、ゆっくりと、侵されていく──
服を脱がないまま、背中を丸め、声を殺しながら。
息が熱い。吐息が喉の奥で引っかかる。
でも、私は目を閉じない。
ミネストローネの湯気の向こうに、“生活”がある限り、私は“妻”でいられる気がして。
その裏側で、“雌”になっていた。
逢瀬は、いつも10分。
でも、時間の短さが、欲望を濃くさせる。
この家の奥で“夫の妻”でいながら、隣家の男に、静かに、湿りながら奪われていく。
鍋の中では野菜がとろけていた。
私もまた、同じように──。
【第2幕】着衣のまま、奥を突かれる午後
彼が私の中に入ったとき、音はしなかった。
けれど、身体の奥では確かに「何か」が壊れた。
それは理性でもなく、羞恥でもなく、**女としての“境界”**だったのかもしれない。
布一枚を押しのけ、ぬめる湿度の先へ、彼の先端が深く深く突き入ってくる。
スカートの奥で──私は濡れていた。
「挿入される準備」などしないまま、なのに身体が先に濡れてしまっている。
おかしい。こんなに濡れる理由なんて、どこにもないのに。
「……んっ……」
キッチンの棚に手をついて、私は前のめりになる。
火にかけたままの鍋がぐつぐつと鳴っている。
でも、私の耳に響いているのは、それよりももっと粘度のある音だった。
──私の奥を、彼が穿つ音。
服の下で、濡れた粘膜と、硬さがぶつかる生々しい音。
それが、私の膣壁に、喉に、脳にまで響く。
彼は一言も発さない。
ただ、腰の奥の熱を、無言で、何度も何度も私に注ぎ込んでくる。
その律動が、次第に狂ってくる。
早く、深く、そして突き上げるたび、私は足を開いてしまう。
「……そこ、ちが……奥、だめ……っ」
そう言葉にしても、彼は止めてくれない。
むしろその言葉を待っていたように、さらに深く、ひと突き。
その瞬間、子宮の裏側で“火花”のような快感がはじけた。
ふいに、彼の手が私の肩を掴み、ゆっくりと後ろから私を立ち上がらせる。
挿れたままの状態で、私の背中に彼の胸板が密着してくる。
彼の吐息が、耳の裏を濡らす。
「……ダメだってば……声……」
でも、その“声を出せない”状況が、私をもっと濡らしていた。
鍋の湯気、窓のカーテン、いつ帰ってくるかわからない夫。
日常と、非日常が、いま、背中で重なっている。
私は挿入されたまま、密着した姿勢で抱き締められる。
そのまま前へ、キッチンの小椅子に腰を下ろされる。
私の太腿の上に、彼の身体がずしりとのしかかる。
──座位。
スカートは上までめくれ、下着はずらされたまま。
着たままのTシャツが、乳首に貼りついている。
彼の腕が私の下腹部を撫でると、それだけで粘膜が痙攣した。
「おく、だめって……言ってるのに……っ」
でも、もう止まれない。
彼が膣の奥をじっくりと押し広げてくる。
スローに、粘っこく。
押しあてて、引いて、また沈める。
ゆっくりとした律動が、私のなかの“まだ知らなかった部分”を開いていく。
目が霞む。
ふとももが震える。
その時、彼が囁いた。
「いま、いちばん、奥で感じてる」
その言葉に──私は、自分の子宮が、彼を“咥えてしまった”感覚に襲われた。
膣ではなく、奥の奥で締めてしまう。
「女」として、“快楽の本質”が、そこにあることを身体が知ってしまった。
私はもう、前には戻れない。
【第3幕】音も言葉も消えたとき、絶頂は訪れた
奥まで挿れたまま、私たちは重なっていた。
椅子に座った私の太腿の上、彼の熱がずしりと重なり、
そのまま、ゆっくりと、深く、膣の奥をこねるように突いてくる。
もう、逃げられない。
着ている服すら、もはや“羞恥の隠れ蓑”にはならなかった。
濡れた下着は膣口に喰い込み、Tシャツは乳首を立たせ、汗と一緒に背中に貼りついている。
キッチンの中で、たった10分の密会。
それなのに──時間が止まったようだった。
「やばい、やばい……奥、突きすぎ……っ、やめ……やめて」
声にならない言葉が喉で崩れる。
呼吸の隙間から洩れるのは、声ではなく、性感の残響だった。
彼は、私の子宮の入り口を知っている。
そこに届く角度で、わずかに腰を斜めにずらし、突き上げてくる。
──ずんっ
その一撃で、私の中が、ばちん、と痙攣した。
まるで、奥に火が点いたようだった。
「っ……! い、いまの、やだ、そこ、いく、いっ……ちゃう……っ」
抵抗の言葉が、すべて快感にすり替わる。
膣が奥で締まり、さらに彼を深く吸い込んでいく。
もうダメだ──と心が叫ぶたび、
「もっと奥まで」と身体が求めてしまう。
私は自分で自分の手を口にあて、
声が漏れないように必死で抑えた。
でも、身体が揺れる。
震えが止まらない。
太腿の内側に、粘液が伝い落ちていくのを感じる。
座ったままなのに、重力を感じるほど濡れていた。
彼は、私の耳元で小さく囁く。
「……中、ぬるぬるすぎて、気持ちよすぎる……もう少し、突かせて」
その言葉だけで、私は膣の奥を痙攣させてしまう。
子宮口が震え、すべてを受け入れてしまいそうになる。
その瞬間──
腰を、ぐっと奥まで押し込まれた。
布一枚を隔てているはずなのに、
彼の一番深い熱が、私の“核”を突いた。
思考が飛んだ。
声が消えた。
景色が白くなる。
突き刺さった快感に、理性ごと崩れた私は、
まるで“内側から濡れ溢れるような絶頂”に沈み込んでいった。
「っ──ぁあ……あっ……ぁ……ッ……っ……」
声にならない絶頂。
けれど身体は、彼の中で果てていた。
奥からとめどなくあふれ出す蜜。
全身の粘膜が開き、指先まで性感に包まれていた。
彼は、動かない。
突いたまま、私の肩に額を預け、息を吐く。
静かだった。
洗濯機は止まり、ミネストローネの火は落ち、
世界には、汗と吐息の温度だけが残っていた。
スカートを整え、私は黙って勝手口を開けた。
彼は何も言わずに去っていく。
あの日常へ戻るように。
私は鍋の前に立ち直り、スプーンを手に取る。
でも、その指先が、まだ震えていた。
──私の中には、まだ彼がいた。
そしてその夜、ベッドで夫に抱かれながら、
私の奥は、彼の形を思い出して、ふたたび濡れた。




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