彼が私を見つめたとき、時間が止まった気がした。
マリの旦那――何度も顔を合わせたはずのその人が、今、私の目の前で一人の「男」として立っている。
「…本当に、大丈夫?」
彼の声は低く、でも優しかった。
私は頷くしかなかった。
この罪を、自分の意志で選んだのだから。
夫との関係に、埋まらない空洞が広がるたび、私は少しずつ壊れていった。
そして、マリのあの言葉がすべてを変えた。
「浮気されるくらいなら、サチに抱かれてくれた方が安心なの」
笑いながら言ったその一言に、どこか安堵してしまった私がいた。
マリの家の寝室。
彼女の匂いが微かに残るベッドで、私はシーツの上に横たわった。
彼がシャツのボタンを一つずつ外すたびに、理性が遠のいていく。
私の唇が彼の胸に触れると、鼓動が早まった。
そのままゆっくりと彼の下腹部へと唇を滑らせ、
初めて、目の前に現れた彼のそれを見て、息を飲んだ。
太く、長く、脈打つそれは、圧倒的だった。
おそるおそる唇を寄せ、先端にそっと舌を這わせる。
温かく、重く、口の奥まで含みきれないその存在感に、顎が軋んだ。
「無理しなくていいよ」
彼が囁くその声すら、私には甘く響いた。
けれど私は、その巨きなものをゆっくりと喉奥に迎え入れた。
涙が滲むほど苦しかったのに、
その苦しささえ快感に変わっていく――まるで罪の味。
今度は、彼が私の脚を開いた。
濡れていることを悟られた瞬間、恥ずかしさに顔が熱くなる。
けれど彼は何も言わず、舌で私の蕾をゆっくりと撫でた。
「ん…あぁ…」
声が漏れ、全身が震える。
彼の舌は、焦らすように、時に激しく、私の奥を舐め尽くす。
舌先が敏感な部分をなぞるたび、震えが腹の奥から湧き上がった。
あまりの快楽に、何度も腰を跳ね上げてしまう。
私は自分がこんなふうに喘ぐ女だったのかと、驚きながら溺れていた。
やがて、彼がその身体を重ねてきた。
濡れきった私に、あの大きなものがゆっくりと入ってくる。
「…あっ、すご…」
裂けるような感覚とともに、奥を突かれた瞬間、
私は、もう後戻りできない場所まで連れて行かれていた。
正常位から、後ろから、そして騎乗位へ――
体位が変わるたび、彼のものが私の中を違う角度で貫いてくる。
深く、深く、奥まで。
「気持ちいい…サチ…全部、受け止めてる」
そんな言葉を聞いた瞬間、私は全身が痙攣し、意識が飛びそうになるほど達した。
その後も何度も求め合い、絡み合い、
シーツは汗と快楽で濡れていた。
すべてが終わったあとの静寂の中、私は彼の肩に顔を埋め、
小さく囁いた。
「…ごめんね。でも、ありがとう」
罪と悦びが交錯するその夜、
私は確かに、「女」として目覚めた。
そしてそれは、もう戻れない道の始まりだった。
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