第一章:チャイムが鳴るたび、私は女を思い出す
あの子が初めて我が家のチャイムを鳴らしたのは、六月の終わり。
曇りがちの空に、蝉の声がまだ遠慮がちに響いていたころだった。
「〇〇便です。お荷物お届けに参りました」
透き通るような声とともに、インターホンのモニター越しに現れた少年は、たぶん20歳そこそこ。少し長めの前髪に、制服のポロシャツ。
けれど何より印象的だったのは、彼のまなざしだった。
真っ直ぐで、濁りがなくて、それなのに――どこか、見透かされるような不安を感じさせた。
私は38歳。郊外の住宅地に建てた分譲の一軒家で、会社員の夫とふたり暮らし。子どもは望まなかった。
夫は毎朝8時に出勤し、夜は22時を過ぎるまで帰らない。
静かな日々。
刺激のない日常に、私は次第に“自分の中の女”を忘れていった。
…あの少年が現れるまでは。
2回目の配達のとき、私は意識して、少し襟のゆるいワンピースを選んでいた。
胸元が緩やかに開き、風が吹けばふと肌が覗く程度のさりげなさ。
何かが始まるわけでもない。
でも、彼の目が一瞬だけそこに留まったのを、私は見逃さなかった。
3回目は、しゃがんでサインを書く瞬間――わざと、少し前かがみになった。
胸元から見えた谷間に、彼の視線が一度だけ落ちた。
そして、ほんの僅かに、唇を噛んだように見えた。
それだけで、私は――
その日の午後、何度もひとりで想像してしまった。
その目が、私の肌を見ていたこと。
あの唇が、私に触れたいと思っていたかもしれないということ。
その罪悪感と興奮が交じる感情は、まるで中毒のように、私を縛りつけていった。
第二章:濡れたTシャツと、はだけた胸元と
そして、4回目の配達。
あの日は真夏の陽射しが玄関を焼くように照らしていた。
私は夫に頼まれた“業務用浄水器のパーツ一式”という、ずっしりと重たい荷物を受け取ることになっていた。
チャイムが鳴る前から、私は鏡の前で胸元のボタンを一つ外し、髪を巻き、唇に艶を足していた。
彼はいつもと同じ制服姿だったけれど、Tシャツは汗に貼りつき、肌が透けて見えるほど濡れていた。
首筋には汗が一滴流れていて、タオルを持ってきてあげたくなるような、そんな生々しい若さがあった。
「すみません、ちょっと重くて。中まで運んでもいいですか?」
その一言を聞いたとき、私はゆっくりと微笑み、玄関を広く開けた。
「ええ。奥のリビングまでお願いしてもいい?」
声が自分でも驚くほど柔らかく、熱を含んでいた。
彼が荷物を抱えて家の中に入り、リビングに置いたとき――
私は後ろから、彼の背中にそっと近づいた。
汗の匂い。
青年の体温。
私はそのまま、指先で彼の腕に触れた。
「…こんなに汗かいて、大変だったでしょ」
その瞬間、彼の身体がピクリと反応するのがわかった。
私が胸元のボタンを、そっともう一つ外したのは、無意識のようでいて、意図的だった。
「…奥さん、こんなの…」
彼の声が震える。
けれど私は首を振り、彼の手を、私の胸元へと導いた。
「あなたが…欲しかったのよ。最初から、わかってたでしょ?」
第三章:音もなく、私は堕ちていった 〈完全版〉
リビングのソファに、彼をそっと座らせる。
私はその膝の上に、迷いなく跨った。
足の付け根が密着するたび、薄布越しに彼の熱が伝わってくる。
それだけで、身体の奥が、じんわりと濡れていくのがわかる。
彼の瞳は驚きと戸惑いを滲ませていた。
けれど、私の手が彼の頬を包み、唇にそっと触れた瞬間、
その視線はたちまち熱を帯び、男の目に変わった。
「…奥さん、こんなの……」
その先の言葉を、私は唇で塞いだ。
彼の口づけは、拙くて、けれどまっすぐだった。
上手く舌を絡めることができなくても、
その不器用な熱意が、私の芯を震わせた。
私は彼のシャツの裾を引き上げ、汗に濡れた胸元に唇を這わせた。
夏の湿気と若い肌の匂いに、喉が乾くほど欲情する。
やがて彼が、私のワンピースの肩紐を下ろした。
ゆっくり、指の腹でなぞるように。
そして、露わになった胸元に、ためらいがちに唇を寄せた。
「…舐めても、いいですか?」
その囁きに、私は何も言わず、身体を差し出した。
彼の舌が、乳首に触れた瞬間、
声にならない息が漏れる。
ちろちろと舌先が弾かれ、やがて吸い上げられると、
乳房の奥から、何かが引きずり出されるような感覚に包まれた。
私はそのまま、彼の頭を抱き寄せ、
左右を交互に与えながら、喉の奥で甘い声をこぼした。
そして、私は彼を見上げたまま、ゆっくりと膝を折り、
彼のズボンのファスナーに指をかけた。
静かに、丁寧に、解放する。
熱く張りつめたものが顔を出し、私はそれに、ゆっくりと口づけた。
唇でふちをなぞり、舌先で先端をゆるく円を描く。
「ん…っ」
彼の腰がわずかに跳ねる。
私は唾液をまとわせながら、じっくりと含み込み、
喉の奥まで、静かに、ゆっくりと満たしていった。
彼の指が私の髪を握る。
私はそれに応えるように、唇で根元を包み、頬をへこませながら喉奥で密着させた。
出し入れを繰り返すたびに、彼の声が低く漏れ、
私はそのたびに、もっと深く欲しくなる。
けれど私は、ふいに唇を離し、
スカートの奥、すでに湿りきった自分の下着を、彼の前でゆっくりと下ろした。
「…次は、あなたの番」
私はそう言って、ソファに背を預け、膝を軽く開いた。
彼は一瞬、息を飲んだ。
そして、震えるように近づいてきて、
私の太腿にそっと口づけた。
ふくらはぎから、膝へ、内腿へ。
指先が、じわじわと私の濡れた箇所に向かって這い、
その中心に触れる前に、彼は顔を埋めた。
「…んっ……やっ…だめ……」
舌が、そこに触れた瞬間、
全身が跳ねた。
彼は、舌の先を細く尖らせ、敏感な花びらの縁をなぞり、
そのあと、ゆっくりと奥へ潜り込ませてきた。
吸い上げられ、吸い尽くされるような感覚。
私は指をソファの縁に立てて、歯を食いしばった。
何度も、何度も、吸い上げられて、
私はやがて、自分でも信じられないほど濡れていった。
「…もう、入れて」
そう呟いた私に、彼は頷き、
ふたりの身体はひとつになった。
最初は正常位だった。
彼の動きはまだ若く、勢い任せなところもあったけれど、
だからこそ――奥まで届くたびに、熱くなった。
私は腰を浮かせて、もっと深くを欲しがるように彼を迎え入れた。
「後ろから、して」
自分でそう囁いたとき、少しだけ恥ずかしかった。
でも、彼は私を後ろ向きにさせ、ソファの背にもたれさせるようにして、
そこから、奥まで突き上げてきた。
彼の腹が私のお尻に打ちつけられ、
ぐちゅ、と濡れた音が部屋に響く。
背中に汗が伝い、髪が肩に貼りついていく。
彼の手は私の腰を掴み、逃げられないように引き寄せながら、
何度も何度も、奥を抉るように動いた。
「中で、イキたい…」
そう言われて、私は何も言わず頷いた。
彼が絶頂に達したとき、私は彼の腕の中で震えながら、
もう一度、自分自身を深く、確かに見つめていた。
終わったあと、私は膝を抱えてソファに丸まり、
彼の息遣いだけを静かに感じていた。
「奥さん…」
彼がそう呼んだとき、私ははじめて、
名前でもないその響きを、欲しかったのだと気づいた。
「また…来てくれる?」
私は静かに尋ねた。
彼は微笑み、唇だけで「うん」と答えた。
玄関のドアが閉まる音が、世界との境界線を閉じるように響く。
私は、裸のまま毛布をひとつ被り、
ソファの上で、満ち足りた静けさに身を沈めた。
あの子に見られたのは、
胸元だけではなかった。
私は今日、すべてを晒した。
そしてそれが、
この先の私の人生を、きっと変えてしまうのだろうと――
わかっていた。
それでもいいと思えた。
私は、女に戻った。
音もなく、でも確かに堕ちていった午後だった。



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