【第1部】静岡の温泉宿に連れられて──32歳の妻・一花と私が踏み込んだ非日常
転職してまだ三か月。
営業職として再スタートを切った私は、社内の空気に馴染むことに必死だった。そんな矢先、「恒例の慰安旅行に君も奥さんを連れて来なさい」と社長に言われた。正直、断る選択肢などあるはずもない。
妻の名は一花、32歳。結婚して五年、神奈川の郊外で二人暮らしをしている。白い肌に艶やかな黒髪、細身ながら胸の張りを隠しきれない体つきは、私には少しも色褪せて見えなかった。
しかし、子どもに恵まれないまま五年が経ち、日常は穏やかである一方、どこか満たされない渇きもあった。
バスで向かった先は静岡の海沿いにある老舗の温泉旅館。ロビーに降り立った瞬間、私の胸にざわつきが走った。参加者は、私と一花、そして社長と上司二人──それだけ。
「えっ、全員でこれですか?」思わず口にすると、社長は笑いながら「少数精鋭だ、気楽でいいだろう」と肩を叩いてきた。
畳の香りが心地よい和室。広縁からは、冬の陽射しに揺れる海が一望できる。料理は見事で、伊勢海老の艶、静岡牛の滴る肉汁、そして盃に次々と注がれる地酒。その夜、私は底が見えぬほど飲み干し、笑い声に呑まれていった。
「奥さん、綺麗だなぁ」
「羨ましいねぇ」
一花が頬を赤らめ、かすかに視線を逸らす。そんな些細な仕草でさえ、私の胸をざわつかせた。
やがて意識は酒に沈み、夜は終わりを告げた。
翌朝。
二日酔いの鈍い頭を抱えて食堂へ向かうと、一花は既に社長たちと並んでいた。浴衣の袖から覗く手首に、上司が自然に触れている。笑い声は昨夜以上に親密で、肩と肩が触れ合うほど近い。
──私の中に、不穏な予兆が生まれ始めていた。
【第2部】酔いの残り香と濡れの予兆──妻の吐息に絡みつく上司の影
朝食を終える頃には、私はまだ頭の奥に鈍い痛みを抱えていたが、一花の笑顔は妙に鮮やかに見えた。
「昨日は飲みすぎちゃったね」
そう私に囁きながらも、彼女の膝は自然に社長の方へ向いていた。ごく僅かな角度の違いが、なぜか胸を締め付ける。
食後、浴衣姿で温泉へ向かう廊下を歩く。木造の床が軋むたびに、一花の帯がふわりと揺れ、白い脚の輪郭が淡く露わになる。私はその背を見つめていただけだったが、ふと横から伸びた上司の手が、軽やかに彼女の肩を抱いた。
「大丈夫? 足元、滑りやすいから」
「…ありがとうございます」
一花の声は控えめで、それでいて微かに甘さを含んでいた。その響きは私の耳に焼き付いた。
夜の宴は、前日よりも親密な空気に包まれていた。座卓に並ぶ盃、そして妻の横に座る社長。
「奥さん、こんなに艶やかだったなんて…」
囁きに似た声が一花の耳元を掠める。彼女は笑ってかわすものの、頬が紅潮し、目が潤んでいる。
グラスを持つ指先がわずかに震え、卓下に落ちる影が揺れたのを、私は見逃さなかった。
社長の手が彼女の髪をすくい、耳に掛け直す。何気ない仕草に見えて、その一瞬の沈黙が生々しい。
「ん…」
短く漏れた声は、驚きか、それとも別の感情か。
私は盃を握りしめ、心臓の鼓動を必死に抑え込んだ。
──その時にはもう、宴の熱気とともに、一花の身体の奥で目覚めかけているものを、私は直感していた。
吐息、視線、わずかな触れ合い。
それらはすべて、濡れの予兆として形を成していたのだ。
【第3部】禁断の夜と妻の絶頂──浴衣の裾から溢れる吐息
深夜。障子越しの灯りに気づいて私は目を覚ました。
廊下を進むと、わずかに開いた座敷の隙間から、甘やかな声が漏れていた。
「んっ…や…だめ、聞こえちゃいます…」
その声は、紛れもなく一花のものだった。
障子の隙間から見えたのは、浴衣を緩くはだけ、畳の上に身を委ねる妻の姿。社長がその細い手首を掴み、もう一人の上司が腰を支えている。三つの影が絡み合い、灯りに揺らめいていた。
「奥さん…可愛い声を我慢しなくていい」
「ちが…っ、あぁ…!」
押し殺そうとするほど、吐息は熱を帯び、震える声が夜気に溶けていく。
浴衣の裾がはだけるたびに、白い肌が露わになり、汗の雫が流れ落ちる。
彼女の髪は乱れ、背を反らすたびに布が滑り落ち、胸の形が灯りに浮かんだ。
「だめ…そんなふうにされたら…あぁっ…」
「ほら、もっと奥まで…感じてるだろう?」
押し寄せる熱に抗うように、一花の脚が震え、それでも男たちの腕に絡め取られていく。
艶やかな声は次第に高まり、やがて部屋全体を震わせるような絶頂へと駆け上がった。
「あっ…あぁぁ…っ……!」
その瞬間、私の胸を抉ったのは怒りでも嫉妬でもなく、背筋を駆け上がる戦慄と、抗えない昂ぶりだった。
妻の吐息と震え、そのすべてが、焼き付けられるように私の奥へ刻まれていった。
まとめ──妻の吐息に縛られた慰安旅行の記憶
あの静岡の夜、私は見てはいけないものを見た。
けれど同時に、妻の濡れた吐息と絶頂の響きは、禁断の美として私の心に突き刺さった。
「忘れよう」と思うほどに、あの夜の声は耳の奥で生き続ける。
──慰安旅行。
それはただの行事ではなく、私の妻が社長たちの影に絡め取られ、そして私がその光景に縛られ続ける、決定的な夜となったのだ。



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