上品…、清楚…、《淫ら》に豹変。 京香栞 38歳 AV DEBUT
【第1部】渇いた夜と、やくざっぽい常連に甘える私のはじまりの一杯
大阪から少し離れた住宅街のはずれに、小さなショットバーがある。
仕事のストレスと、家にまっすぐ帰りたくない気分が重なった夜、私はそこで「常連」になった。
私は三十代後半、名前は美奈子。
昼間は事務職の、どこにでもいる普通の女だと思っていた。少なくとも、あの店に通い始めるまでは。
カウンターの中には、無口だけどよく見ているマスターがいて、
カウンターの端には、いつも少しだけ“やくざっぽい”雰囲気をまとった男が座っていた。
派手な刺青が見えるわけでもない。
けれど、仕草の端々に「怒らせちゃいけない人」みたいな気配を感じてしまう。
それでいて、笑うと少年みたいに目尻がきゅっと下がる、そのギャップがずるかった。
ある日、仕事で大きくやらかしてしまった帰り道、
私はいつも以上にグラスを重ねてしまった。
焼酎のロックが、氷の音といっしょに喉の奥へ消えていく。
「大丈夫?顔、真っ赤だよ」
その人──“彼”が、いつもより近い声でそう言ったときには、
私はもう、自分で真っ直ぐ歩ける自信がなかった。
ふっと身体が傾いた瞬間、
彼の腕が自然に私の肩を支えて、その胸に頬が触れた。
「…ごめんなさい、ちょっと酔いすぎました」
そう言いながらも、私は彼のシャツ越しの体温に、
なぜかホッとしてしまっていた。
抱きかかえられるように支えられながら、
自分でも気付かないうちに、その腕に身を預けていた。
その夜を境に、
カウンターに座ると、彼は 当たり前のように私の隣 に腰を下ろすようになった。
マスターが用意するグラスは三つ。
私、マスター、そして彼。
それがいつの間にか「その店の形」になっていた。
私は意識していないふりをしながら、
だんだんと選ぶ服が変わっていった。
胸元が少しだけ開いた薄いニット。
座るとふわりと広がるフレアのミニスカート。
ストッキングは、敢えて履かない。
鏡の前で自分の姿を確認するたびに、
「何やってるんだろう、私」と苦笑しながらも、
心のどこかで、彼の視線を期待している自分がいた。
【第2部】触れられる予感と、ノーパンで飲む夜──マスターの視線に気付いたとき
彼は、あくまで“さりげなく”距離を詰めてきた。
グラスを取るときに指先が触れる。
笑いながら肩に軽く腕を回される。
囁く声が耳のすぐ近くを掠めて、
アルコールの熱とは違う火照りが、首筋から胸の奥へと降りてくる。
「そんな薄着で来るから、悪いんだよ」
彼は冗談めかしてそう言いながら、
カウンターの下で、テーブルクロスの陰に隠れる位置で、
私の膝に手を置くようになった。
最初はびくっと身体が跳ねた。
でも拒む言葉は、喉の奥でふっと溶けてしまう。
──ここは暗いし、カウンター越しからは見えない。
そう自分に言い訳しながら、私はグラスを口に運び続けた。
「トイレ、行く?」
ある夜、彼は耳元で小さくそう囁いた。
その言い方が、なぜか「ひとりで行ってきなよ」とは聞こえなかった。
トイレの前の細い廊下で、
私は壁に軽く押し付けられるようにして、
彼の顔を間近に感じていた。
「…今日、パンツ、脱いできなよ」
さらりと言われた言葉に、
身体の奥で、何かがぞわっと震えた。
常識的に考えれば、そんなのあり得ない。
だけどその夜の私は、鏡の前でスカートの裾を持ち上げながら、
ゆっくりと下着を腰から降ろしていた。
布が足首を抜ける音が、やけに大きく響いた気がした。
脱いだ下着をバッグに押し込みながら、
自分が何をしているのかわかっていながら、止めなかった。
席に戻ると、彼の視線がすぐに私の脚のあたりへ落ちる。
何も知らないふりをしながらグラスを持ち上げたとき、
カウンターの陰で、彼の手がゆっくりと太ももをなぞった。
布一枚、という言い訳さえもう無い。
空気の冷たさと、手のひらの温度のコントラストに、
呼吸が少しだけ乱れていくのが自分でもわかる。
そのとき、ふと視線を上げると、
マスターと目が合った。
彼は何も言わない。
ただ、氷を手に取ったまま、
一瞬、意味ありげな笑みを浮かべて、
新しいグラスをカウンターに置いた。
──もしかして、全部バレてる?
その思いが頭をよぎった瞬間、
胸の奥に走ったのは「恥ずかしさ」だけじゃなかった。
見られているかもしれないという感覚が、
なぜか、身体の奥のほうでじんわりと熱に変わっていく。
その夜から私は、
ノーブラで来ることも覚えてしまった。
シャツの薄い布越しに、
ひんやりとした店内の空気が触れるたび、
自分でもわかるほど、敏感になっていく。
マスターがグラスを拭きながら、
ちら、と視線を私の胸元に滑らせるとき、
布の下で硬くなってしまっている自分に気づいて、
喉の奥でかすかに息を呑む。
「最近、色っぽいね」
ある夜、いつものように彼を待っていたけれど、
彼は現れなかった。
代わりに、カウンターの中からマスターの声が飛んできた。
「美奈子ちゃん。最近、ちょっと雰囲気変わったよね」
常連客が一人、また一人と帰っていき、
気付けば店内には、私とマスターだけが残っていた。
【第3部】「誘ってるの?」と囁かれた夜──揺らいだ境界線と、残った余韻
ラストオーダーの時間を過ぎ、
BGMのジャズだけが、静かに流れている。
「カウンター、こっち来る?」
そう言われて、私はいつもの席から一つだけずれて、
マスターの目の前に座った。
普段は無口な彼が、
じっと私の顔を見つめながら、
ふっと笑う。
「最近さ、ずっとそういう感じだよね」
「そういう…って?」
とぼけて見せる声が、
自分でもわかるくらい震えていた。
マスターは、グラスを布巾で拭きながら、
さりげない仕草でカウンターを回り込み、
私の隣に腰を下ろした。
「こんなにして…美奈子ちゃん、誘ってるの?」
耳元でそう囁かれた瞬間、
肩にそっと置かれた手が、
シャツの上から胸元へと滑っていく。
布越しに軽く摘まれた瞬間、
「いや」と言うべき言葉が、
なぜか喉で「んっ…」という小さな声に変わってしまった。
自分でも信じられないくらい、
その声には甘さが滲んでいた。
「ほら、やっぱり。感度、いいんだね」
マスターの声が少し低くなる。
胸元をなぞる指先に合わせて、
呼吸が浅くなっていく。
逃げようと思えば逃げられた。
なのに私は、なぜか、
彼の胸に自分から顔を寄せていた。
シャツ越しに伝わる鼓動と体温。
間近に感じる、洗剤とタバコとアルコールが混ざった匂い。
その全部が、
「ここにいてもいい」と不自然に言ってくれているような気がした。
「いつも、立ってるよ。ここからでも見えてる」
耳元でそう囁かれて、
私は一瞬、全身が熱くなるのを感じた。
ノーブラのまま、
冷房の効いた店内で硬くなってしまっていた自分。
パンツも穿かずに座っていた夜の数々。
「最近ずっと、いやらしいよね。
いつも胸の先を立てて。
パンツも穿かないでさ。
男の客、みんな気づいてるよ」
マスターの言葉が、
責めているようで、
どこか嬉しそうでもあった。
「今、誰か来たらどうする?
その顔、見られちゃうよ」
そう言われた瞬間、
私は自分の表情を意識した。
きっと、
どうしようもなく、
“感じている女の顔”をしている。
それに気づいて、余計に熱くなる。
逃げたいのに、逃げない。
声を押し殺そうとして、
余計に小さな吐息が漏れてしまう。
そのとき、
カラン、とドアのベルが鳴った。
「こんばんわー」
常連の声が、現実を連れ戻してくる。
マスターの手が、すっと私から離れた。
何事もなかったようにカウンターの中へ戻りながら、
振り返りざま、小さく笑う。
「続きは…どうしようかね」
私は、整えきれない呼吸を、
グラスの縁に唇を押し当てることで隠した。
さっきまでの熱は、
確かにそこにあったのに、
もう触れられない。
ドアベルの音ひとつで、
切り離されてしまうような関係。
それが余計に、
胸の奥を疼かせた。
その夜、店を出るとき、
マスターと目が合った。
「また、待ってる」
その一言が、
いつもの「ありがとうございました」とは全然違う重さで、
心に残った。
私は夜道を歩きながら、
考えたくない問いを抱えていた。
──私は、一体、誰に触れられたいんだろう。
やくざっぽい彼?
それともマスター?
それとも、「見られているかもしれない私」そのものに、
一番興奮しているのかもしれない。
答えはまだ出ない。
けれど、明日もきっと、
あのバーのドアを開けてしまう自分がいる。
まとめ──「見られているかもしれない自分」に酔いしれる、大人の背徳
この夜の出来事は、
ただの“不倫”とか“浮気”とか、
そういう単純な言葉では収まりきらない。
やくざっぽい彼に預けてしまった身体の記憶
マスターに「誘ってるの?」と見抜かれた瞬間の羞恥と高鳴り
ノーブラ、ノーパンで店に座る、自覚的な「いやらしさ」
見られているかもしれない、という背徳のスリル
それら全部が絡まり合って、
美奈子の中に「新しい自分」を目覚めさせている。
人は、ときどき、
誰かに触れられたい以上に、
“自分の変わってしまった姿”を誰かに見られたい と願ってしまう。
「常連バーでほどけていく夜」は、
その欲望が、一番わかりやすい形で浮かび上がる場所なのかもしれない。
この物語は、あくまでフィクションだ。
けれど、
心のどこかで「こういう自分が出てきてしまうかもしれない」と
ゾクッとしたなら、
それはもう、あなたの中にも同じ種が眠っているということ。
理性と本能のあいだで揺れながら、
ぎりぎりのラインを歩く大人の夜。
その一歩手前までを、
ここでは丁寧に描いておく。
その先をどうするかは、
いつだって、自分で選ぶしかない。




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