第1幕:「触れていないのに濡れていた。午後三時の空気」
昼の休憩時間が終わり、静まりかえった事務所に戻ると、私の心だけが、ひとつ濡れたように騒がしかった。
社員が現場に出て行ったあと、事務所に残るのは、私と社長だけ。
ふたりきりの時間は、決して長くはない。
でも、それは十分に、私の身体を変えてしまうには、長すぎるほどの沈黙だった。
彼の歩く音、紙をめくる音、ホッチキスを押すときの指の形。
すべてが、私のどこかを見透かしてくる。
——ふと、背後から視線を感じて振り返ると、彼が静かに目を伏せた。
その一瞬で、私はまた濡れていた。
午後三時、空気がぬるんでくる時間。
「トイレ、貸してもらいますね」そう言って立ち上がった私に、彼は微笑みながら、
「いいですよ、奥のは鍵が壊れてますから、こっち使ってください」
そう言って、社長室の隣の個室を指差した。
初めて見る、そのドア。
ドアノブを握った私の指が、小さく震えたのは、鍵が冷たかったせいだけじゃない。
ドアを閉めた瞬間。
背後で「カチャリ」と、鍵がかかる音がした。
私が閉めたのではなかった。
振り返ると、そこには彼がいた。
一歩、また一歩、静かに近づいてくる音。
その間、何ひとつ、言葉はなかった。
なのに私は、逃げようとしなかった。
むしろ、膝が少しだけ、力を失いかけていた。
ふいに、背中に彼の手が添えられる。
厚く、熱く、包むように。
そのまま、私はトイレの壁に背中を預け、目を閉じた。
触れられていない。
なのに、乳首が硬くなっていた。
彼の唇が、私の耳のうしろに触れたとき、
「あの夜、タクシーに乗ったときから、あなたのことがずっと忘れられない」
そう囁かれた。
私は、あの夜のことを思い出していた。
ラブホテルの空気。大きくて、熱くて、私の奥を焼いたもの。
忘れようとしても、身体が先に思い出してしまう。
「……社長」
名前を呼ぼうとしたのに、そう言ってしまった。
その瞬間、彼の手が私の腰を抱き寄せ、下腹部に堅いものが押し当てられた。
触れていないのに、私は濡れていた。
もう、奥まで。
第2幕:「社長室の鍵が閉まる音——知らなかった快感が開いていく」
午後の事務所。
人の気配が消えた瞬間にだけ、音を立てる空調の微かなうなり。
それが、私の鼓動と重なって、なにか別の生き物のように身体を這っていた。
「こっち、来れますか?」
社長の声は低く、でも甘い沈黙を破った。
私の目の前に置かれたカップに、まだ紅茶の温もりが残っていたけれど、
それよりも、下腹部の奥がぬくもっていた。
社長室の扉が閉まる。
鍵が、ゆっくりと回された音がした。
彼は私の頬を片手で触れ、もう片方の手で腰を引き寄せた。
何も言わない。
私も、何も言わなかった。
唇が重なる。
彼の舌は、まるで水を探すように私の奥へと潜り込み、
それに応えるように私の喉が震えた。
私は椅子のひじ掛けに手をついて、わずかに腰を浮かせる。
「……少し、脱がせますね」
その一言に、羞恥より先に、身体のどこかが安堵した。
胸元のボタンを外されるたびに、空気が肌をなぞる。
彼の手が、下着の上から膣口を押さえ、指先で湿り気を感じ取ったとき——
「もう、こんなに……」
そう囁かれて、恥ずかしくて目を閉じた。
でも、嘘じゃない。
もう、下着の奥まで溢れていた。
そのまま、彼の指が滑り込んできた。
ゆっくりと、丁寧に。
だけど迷いのない動き。
指先が、私の中の粘膜を撫でるたびに、全身が震えた。
「今日は……少し、違うことをしましょうか」
そう言って、社長はデスクの引き出しから、透明の小瓶を取り出した。
私はわかっていた。
それが何か。
それを、どこに使うか。
だけど、頷いてしまった。
怖さよりも、期待が勝っていた。
この人なら、すべてを預けられる。
そう信じてしまったから。
私の下着が降ろされ、四つん這いにされる。
恥ずかしくて、顔を伏せた。
だけど、身体の奥は熱かった。
彼の指が、潤滑したジェルを肛門の周りに塗りこむ。
その冷たさと滑りが、くちゅくちゅと音を立てて、私の羞恥を濡らしていく。
ゆっくりと、一本、指が入ってきた。
「っ……あ……っ」
痛みではない。
怖さでもない。
けれど、“知らなかった扉”をこじ開けられるような感覚。
二本、三本。
慎重に、でも止まらずに広げられていく。
私の知らなかった性感が、少しずつ、目を覚ましていく。
そして、彼のものが、そっと、あてがわれた。
「いきますね……力、抜いて」
その一言と同時に、私は喉の奥で声を詰まらせた。
異物感。膨張感。
そして、根元まで押し込まれたとき、
息が止まって、目の前が白くなった。
「う、くっ……」
腰が崩れた。
でも、彼はすぐには動かない。
私の背中に覆いかぶさり、耳元で、
「よく、頑張ってますね」
そう囁いたその声で、涙が滲んだ。
ゆっくり、出し入れされる。
広がった粘膜が、こすれるたびに異様な快感が走る。
前よりも深い、なのに敏感な性感。
舌が痺れるような悦び。
私は、もう声を抑えられなくなっていた。
「ん、っ、あ……っ、もっと、ゆっくり……っ」
自分でも知らなかった声が出るたびに、快感が増していく。
社長は果てる直前、私の髪を撫でながら、
「好きです」
と、一言だけくれた。
私の奥で、熱く果てていくその瞬間、
私の中の“理性”もまた、果てていた。
第3幕:「終わったあとに残るのは、匂いと熱と、私の中の彼」
それからの日々、私は、ひとつの「役割」を得た。
誰にも知られてはいけない。
でも、誰よりも深く求められる場所。
午後三時。
事務員が現場に出払った静かな事務所で、社長が一度だけ目を合わせる。
それが合図だった。
「……来てください」
社長室の隣の、鍵のかかる個室。
そこに誘われるとき、私はすでに濡れていた。
身体ではない。
**“意識の奥”**が、社長に向かって開きはじめているのを感じていた。
──今日も、アナルだった。
彼は丁寧に、私の身体を扱う。
下着を脱がせ、前穴に潤滑ジェルを塗り込むときの指先が、
「濡らすため」ではなく、「私の羞恥を愛でるため」にあるのがわかる。
「奥まで、塗りますね」
そう言いながら、私の膣の粘膜をくちゅくちゅと撫でる。
そこをわざと濡らしてから、後ろへと移る。
肛門の皺ひとつひとつを撫でられながら、潤滑剤がじんわりと染み込んでいく。
羞恥はある。
けれど、それ以上に**“期待”**があった。
「じゃあ、入れますよ」
その言葉を合図に、社長のものが、私の背中の奥へと、ゆっくりと沈んでくる。
押し広げられ、割れていく感覚。
それでも、私は自然と腰を引き寄せてしまっていた。
ぐちゅ、ぐちゅ、と音がするたびに、
前穴からも蜜が溢れてしまっていた。
もう、アナルは「痛みの場所」じゃない。
“私を彼にゆだねる場所”になっていた。
「深いとこ、あたってます……っ」
言ってしまってから、自分の声に驚く。
いつの間にか、私はそんな女になっていた。
彼は、果てるときに必ず、私の耳元で囁く。
「キレイですよ」
「他の誰より……いやらしい」
「もっと、欲しいんでしょ……?」
その言葉に、身体の奥がびくびくと痙攣する。
果てるのは彼の方なのに、絶頂してしまうのは私だった。
──ある日、行為のあと、制服を整えた私に、社長が封筒を手渡してきた。
「今日も、ありがとう。……これは、僕の感謝です」
そう言って、封筒の中には一万円が。
初めてじゃない。
でも、受け取るたび、胸の奥がかすかに震える。
売春ではない。
奉仕でもない。
**“存在を確かめる証”**のような、それはやりとりだった。
「また、明日も来てくれますか」
そう言われたとき、私は微笑んで、
「もちろんです」と答えた。
夜、自宅のベッドで横になりながら、
夫の寝息を聞いていると、
まだ身体の奥に、彼の熱が残っていた。
肛門の奥が、まだじんじんと疼いている。
そこにあった彼の形を、身体が忘れてくれない。
私は目を閉じた。
けれど、眠れなかった。
匂いと熱と、私の中の彼が、消えなかったから。



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