ほんの少しのきっかけだった。
会議室のドアが閉まる音、その静けさのなかで、私はふと自分の心がまるで“乾いている”ことに気づいた。
結婚三年。26歳、都内の老舗商社で営業事務として働く私は、表向きは何の不満もない生活を送っていた。真面目で誠実な夫、整った生活、そして安定した職場環境。
けれど夜になると、私はベッドの中でひとり、自分の指にさえ何も感じられなくなっていた。
そんな私の乾いた肌に、最初に火をつけたのは――上司の長谷川課長だった。
「水原さん、今日の資料、あと少しだけ確認していこう」
静かな声。けれど、どこか強く響く響き。
40代半ば、背が高く、静謐な色気を纏った人だった。部下への当たりは厳しくも的確で、仕事一筋と思われているその男が、ふとした瞬間に見せる“男”の顔を、私はいつからか気にするようになっていた。
人気のないオフィスの会議室。蛍光灯が鈍く唸り、彼がドアを静かに閉めると、その空間はまるで外界と遮断されたようだった。
「……最近、満たされてない顔をしてるな」
資料の話など、最初からなかったのだ。
私は息を詰めるように立ち尽くしていた。何かが始まるとわかっていた。言葉にしなくても、この場の空気が、彼のまなざしが、その全てが――
「……何を言って……」
震える声。けれど、背中は逃げなかった。
「嫌なら、今出ていっていい」
その言葉が、私の理性を試していた。
動けなかった。
唇が重なった瞬間、私はすべてを理解した。男の体温が私を包み込むと、冷えていた女の肌が音を立てて溶けていくのがわかった。
「……ん、ぁ……」
舌が深く絡み、身体の奥でじんじんと熱が湧く。誰かにこうして“求められる”のは、いつぶりだろう。思い出せないほど、私は空洞だったのだ。
ブラウスのボタンが外され、下着の上から優しく撫でられる。ふくらみの先端が、彼の指先のわずかな圧に反応し、服越しに立ち上がっていく。
「……どうして……こんな……」
抗うように口では拒んでいたのに、身体はもう裏切っていた。
スカートが捲られ、太腿の内側に唇が落とされた瞬間、私は息を呑んだ。
「濡れてるな……触れただけで、こんなに」
それは屈辱だった。けれど同時に、どこか救いでもあった。
私はまだ“女”として生きていたのだ。
やがて彼は、自らのベルトを外した。
ファスナーの音が妙に生々しく、そして視線の先に現れたものは――
見たことのない、それだった。
幹のような逞しさ。片手では包みきれないほどの太さ。そして脈打つ鼓動。
「こんな……無理です……」
私がかすかに漏らしたその声に、彼はゆっくりと囁いた。
「壊してやるよ。奥まで届くように、全部」
脚を広げさせられ、自らの秘部を晒した瞬間、私はもう逃げられなかった。濡れたそこに、彼のものがゆっくりと押し込まれていく。肌と肌が擦れ、熱と熱が溶け合う。
「っ……は、あ、ああ……っ」
太いそれに奥を押し広げられる感覚。今まで知っていた“行為”とは別次元の貫かれ方。
痛みさえも快楽に変わる。私はすでに、女として壊れていた。
「もっと……欲しい……」
自分の口から漏れたその声が、何よりの屈辱だった。けれどその瞬間、絶頂が波のように押し寄せてきた。
何度も突き上げられ、奥を擦られながら、私は果てた。
彼に跨り、自ら求めるように腰を振った夜のことは、誰にも言えない。
でもあの夜、私は確かに女だった。誰にも満たされなかった身体が、あの人の中でひとつに溶けた。
翌朝、化粧台の鏡に映る私は、まるで別人のようだった。
それは、罪と快楽に彩られた女の顔――誰にも見せたことのない、私の本性だった。



コメント