妻の過去が暴いた快楽の記憶|PCに残された濡れた秘密

【冒頭 ── ファイル名:PRIVATE】

開いてしまった。
本当は、触れない方がよかった。けれど、それはあまりにも、無防備な“誘い”だった。

妻・日奈子の古いノートPC。
日曜の午後、部屋には誰もいない。テレビも消し、カーテンの隙間から射し込む光だけが、無音の空間に揺れていた。

クローゼットの奥から出てきたそれは、パスワードもかかっていない。
立ち上げると、ふっと画面が明るくなり、かつての彼女が使っていたままのデスクトップが姿を現した。

そこにあったのは、ひとつのフォルダ。

名前:PRIVATE
更新日:7年前
容量:3.1GB

画面の中央、デスクトップのど真ん中に、それは置かれていた。

──ありえない。
あの几帳面な日奈子が、こんなに無防備な場所に“秘密”を残していたなんて。

それとも、これは「見つけていいよ」と言っているのか?

否。
これは、意図のない誘惑だ。
その無防備さこそが、もっとも男を狂わせる。

俺はマウスに手を置いた。
そして、クリックした。


フォルダの中には、無数の動画ファイル。
一つひとつにタイトルはない。
ただ、日付と数字が羅列されたシンプルなファイル名。

2009_03_21-1.mp4
2009_03_21-2.mp4
hina_self_20.mov
hndk_bath.mov

ファイルサイズは、どれも200MB前後。
一つを開いた。

──画面が切り替わる。

カメラが揺れていた。
最初はピントが合っていない。誰かの手で、布団の端がめくられる。
そして、画面の中央に現れたのは、裸の背中。

肌は白く、しっとりと光っている。
肩甲骨から腰にかけて、汗ばむような曲線が滑っていた。

──それは、間違いなく、日奈子だった。

寝室の灯りが、彼女の体を柔らかく照らしている。
誰かが、ゆっくりと彼女の胸を撫でる。
唇が肌に触れる音が、小さく、しかしはっきりと聞こえた。

「ん……」

甘い吐息が漏れる。
耳の奥で、その声が響く。

俺が知らない“彼女の声”だった。
もっと湿っていて、もっと深く震えていた。


動悸が止まらなかった。
すぐに動画を閉じるべきだった。
でも、閉じられなかった。

いや、もう一つだけ——
そう思いながら開いたファイルの名前は、「hina_self_20」

それは、ベッドの上に座る、学生服姿の彼女だった。
膝を抱えて座るその姿は、まだあどけなくて、
けれどカメラの向こうに向かって、ボタンをひとつずつ外していく手つきが、あまりにも淫らだった。

「……今日は、声、出しちゃうかも」

呟く声が、画面の向こうから溶けてくる。

シャツを脱ぎ、スカートをたくし上げ、ショーツを下ろし、
そして、彼女は自分で自分を開いた。


指先が、自分の中へゆっくりと沈んでいく。
カメラの奥には、誰かがいた。
その誰かに向けて、彼女は舌を舐めるように動かし、
時折、喘ぎながら、目を伏せ、声を漏らす。

「ねぇ……送ってくれる? 今日も見たい……キミの、してるとこ……」

その言葉が出た瞬間、俺の思考が止まった。
動画は、“誰か”との交換で成り立っていた。

第二章:交換の相手は、彼だった

メールソフトの「送信済み」フォルダを開いたとき、
自分の中に冷たい汗が流れるのを感じた。

動画のタイトル「hina_self_20」で検索をかける。
結果は一件。

送信先:aoi_s〇ta@〇mail.com
日付:2011年11月5日
件名:(なし)
添付ファイル:hina_self_20.mov

本文には、何の言葉もなかった。
ただその動画だけが、音もなく、まるで誰かへの無言の欲望のように添付されていた。

aoi_shota──
記憶をたどる。
青井翔太。聞き覚えはない。

検索した。SNS、Twitter、Instagram、Facebook。
全て鍵付き。けれど、名前でヒットしたとある高校のバスケ部の卒業アルバムに、
制服姿の少年がいた。

目元が、どこか冷たく切れ長で、
笑っているのに、どこか挑発的だった。

そして、日奈子が当時つけていたブログのコメント欄に、
その名前は何度も現れていた。

「今日の下着、めっちゃ似合ってたよ」
「オナニー撮るの緊張した?俺はちょっとドキドキしたけど、興奮した」
「また交換しようね。今度は顔、ちゃんと映してくれる?」

──息をのんだ。

これは、単なる遊びじゃない。
日奈子は、恋をしていた。
それも、自分より年下の、まだ未成熟な“少年”と。


動画をもう一度、再生した。
今度は、表情だけを見るつもりだった。
何を想いながら彼女がカメラに向かって腰を動かしているのか。
誰に見せたいのか。

「ねえ、ちゃんと見てる……? 今日ね、夢に出てきたの。翔太くんが、私のこと……」

そこまで聞いたとき、俺は再生を止めた。

翔太。
あおいしょうた。
彼女の唇から、誰かの名前が、甘えた声で漏れ出た

俺の名前じゃない。
その声を、俺は知らなかった。

でも今、俺の舌に残っていたのは、あの翔太と共有した唾液の記憶だった。


再び画面を閉じ、目を閉じる。
だが、まぶたの裏に浮かぶのは、ベッドの上で体を震わせながら、
唇を少しだけ噛んで、瞳を潤ませながらカメラに向かって笑う彼女。

「だめだよね……こんなの。怒られちゃうかな」

その声は、未来の夫ではなく、今の少年に向けられていた。


✴︎そして今、俺はその身体にキスをしている

夜、キッチンの明かりが落とされ、ベッドルームに移動する。
着替える彼女の背中を見て、あの動画と重ねる。
手の動き、下着の扱い方、そして、身体の“見せ方”

それは、今の俺だけのためにあるのか?
それとも、過去に染み込んだ技術の“残り香”なのか?

どこまでが俺のもので、どこからが翔太の残したものなのか。
わからない。
でも、わからないまま抱く。

舌を這わせ、耳に触れ、彼女の太腿の内側に唇を押し当てる。

そのとき、
彼女の指が、俺の後頭部に絡んできた。

「……大丈夫だよ。浩介くんだけだよ。
いま触れてるのは、あなただけだから」

それは、
まるで――
“見たこと”を知っているかのような口調だった。

第三章「知らなかった君の身体が、世界中にいた」

── それは、視姦の夜だった。


「久しぶり。元気にしてる?
こっちはなんか最近……いろいろ思い出してて。
……もし、あの頃の動画、まだ残ってたら。
ねぇ、全部、もう一回見たいな」

それは、自分の妻を装った、一通のメールだった。
何が欲しかったのか、自分でもよくわからなかった。
ただ確かに、“見たい”と思っていた。
あの時代の彼女。
俺が知ることのなかった、誰かだけが知っていた彼女の姿。

返信は、すぐに届いた。

「やっぱ、ひなから来たと思った。
あの頃のひな、マジでエロかったもんな……
いまだに、見返して抜いてるし(笑)
全部送り返すわ。おかわり、あるかな?」

添付ファイル:46本
合計容量:12.3GB

フォルダを開いた瞬間、
胸の奥に、冷たい液体を流し込まれるような感覚があった。


1本目の再生ボタンを押す。

画面の中には、知らないベッド、知らないカーテン、知らない光の中で、
俺の妻が、身体を広げていた。

ショーツの上から、指先で擦るようにゆっくりと撫でている。
カメラの奥に、誰かがいる。
誰かの視線が、彼女を溶かしていく。

「ねぇ……ちゃんと見てね。今日は……いっぱい濡れてるから」

日奈子は、そう囁いて、
カメラにキスをした。

その唇の動き。
あまりに柔らかく、湿っていて、
俺がキスしてきたどの瞬間よりも“愛撫”だった。


次の動画。

複数人の男たちの声が入っている。
笑い声。下卑た囁き。

そして、彼女がひとり、画面の中央で、
オナニーをしている。
おそらく、それは録画されたものを、
男たちがテレビで“鑑賞”している現場だった。

「よし、タイマン抜き対決な!」
「あ、ひなちゃんの喘ぎ声きたら、マジやばい……」
「うわ、俺これで3回目だわ」

映像の中で、男たちが、彼女の喘ぎに合わせて勃起を握りしめていた。
射精のタイミングを競っていた。
誰が一番早く、彼女の声で果てるかを。

その中心にいる“被写体”は、
あまりにも無邪気で、
あまりにも淫らだった。

彼女は、自分がそんなふうに消費されていることを知っていたのか?
それとも――
望んでいたのか?


指先が、PCのタッチパッドをなぞる。
スクロールするたびに、
彼女の裸が、次々と“新しい他人の記憶”として再生されていく。

もう、俺だけのものじゃない。
いや、最初からそうだったのかもしれない。

彼女の身体は、
世界中の、誰かの掌の中にあった。


最後のファイルを再生する。

画面が開いた瞬間、空気の質が変わった。
ベッドの上。
カメラを固定して、
彼女が一人、布団にくるまれている。

そこに、男たちが入ってくる。
全部で、五人。

最初は笑いながら、服を脱ぎ、
彼女の身体に指を這わせる。

ひとりが胸を吸い、
もうひとりが脚を開き、
もうひとりがキスをして、
もうひとりが自慰をしながら彼女を眺めている。

そして、
彼女は“いやだ”と言わなかった。

「……5人、なんて……」
「いけないこと、してる……」
「でも……見られてると、もっと濡れるの……」

その言葉は、
映像の中の彼女の口から確かにこぼれた。

俺は震えた。
怒りでもない。
悲しみでもない。

全身が、欲情していた。

見ているだけで、
彼女の喘ぎ声に合わせて、
自分の中の奥深くが濡れていく。

視ることが、抱くことになる夜。
触れていないのに、
もう何度も、彼女を貫いている。

すでに感じてしまったなら…次は“本物”を。

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