欲求不満をママさんバレーで解消する人妻と練習後にひたすら汗だく不倫セックス 角奈保
かつての輝きを取り戻そうとする彼女の汗と呼吸には、
“生きる実感”を取り戻そうとする切実な熱が宿っている。
コーチとの距離が近づくほど、抑えてきた感情が溢れ出し、
ボールを打つたびに胸の奥がざわめく。
本作は、単なる再会ではなく、
「女としての再生」を描く濃密な心理ドラマだ。
汗、光、沈黙――そのすべてが官能に変わる瞬間、
あなたも奈保の息づかいの中に引き込まれるだろう。
見る者の記憶に焼きつく、大人の情感がここにある。
【第1部】汗の匂いが私を蘇らせる──止まっていた身体が再び動き出す
三十八歳になった私は、気づけば「妻」と「母」という名前だけで呼ばれる存在になっていた。
夫は東京で単身赴任、息子は大学の寮。
広くなった家の中で、私だけが音を立てて老いていくようだった。
朝は洗濯機の回る音、夜は冷蔵庫の微かな唸り。
人の声のない生活に、心まで乾いていくのがわかった。
そんなある日、町内の回覧板に挟まっていた紙が目にとまった。
〈ママさんバレーボールチーム 新メンバー募集〉
その文字を見た瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
指先が震えていた。
もう十年以上もボールに触れていないのに、あの感触が確かに蘇ってきた。
汗と土と、歓声の匂い。
若かった頃の私を包んでいた熱気が、皮膚の内側でざわめき始めたのだ。
初めて体育館に足を踏み入れた日、空気が違っていた。
床のワックスの匂い、ボールが跳ねる乾いた音、誰かの笑い声。
全てが懐かしく、同時に、胸の奥を締めつけた。
ラリーを続けるうちに、身体が汗を流す感覚を思い出していく。
息が上がるたび、肺が焼けるように熱くなり、
ユニフォームの内側で汗が肌を伝うたび、何かが溶けていくようだった。
「藤川さん、久しぶりとは思えませんね」
そう声をかけてくれたのは、コーチの村上だった。
四十代前半くらい、穏やかで、どこか寂しげな笑顔。
その声が耳の奥に残って、練習が終わっても消えなかった。
「動き、まだ全然いけますよ。…昔、やってたんですか?」
「ええ、少しだけ。…もう、ずいぶん前のことですけど」
言葉を交わすたび、心の奥で微かなざらつきが走った。
彼の目が、私の動きを見ている。
ボールを追う瞬間の汗の光、呼吸の乱れ。
それを意識してしまう自分がいた。
夜、シャワーの湯を浴びながら、私はふと鏡を見た。
汗で濡れた肌が、いつもより艶を帯びているように見えた。
頬の赤みも、胸の高鳴りも、まるで若返ったみたいだった。
それが運動のせいなのか、あの視線のせいなのか、
自分でもわからなかった。
──止まっていた身体が、また動き始めている。
そのことだけが、やけに嬉しく、そして怖かった。
【第2部】指先の距離が狂わせた──汗と呼吸の狭間で
村上さんの声は、体育館の壁に柔らかく跳ね返っていた。
「ここ、もう少し腕を下げてみて」
そう言いながら、彼は私の肩に手を添えた。
一瞬のことだった。
けれど、その手の温度が背中に残り、呼吸が乱れた。
午後の光が差し込む体育館は、湿った熱を孕んでいた。
誰もいなくなった後の空気は、さっきまでの喧騒を吸い込んだまま静止している。
私は汗で濡れた前髪をかき上げ、水筒の冷たい水を口に含んだ。
喉を通る瞬間、まだ心拍が速いのがわかる。
その高鳴りが運動のせいなのか、彼の声のせいなのか、
もう区別がつかなくなっていた。
「無理しすぎないでくださいね」
いつの間にか、村上さんは近くにいた。
タオルを手渡しながら、少し笑う。
その笑顔に、胸の奥がきゅっと疼いた。
タオルの端を受け取る瞬間、指先がかすかに触れた。
それだけで、空気が変わった。
沈黙が、肌の間を滑り込むように熱くなる。
「……久しぶりに、楽しいんです」
言葉が喉から漏れた。
自分でも、なぜ口にしたのかわからない。
村上さんは短く頷き、視線を落とした。
「俺も、そうですよ」
その声が、低く、少し掠れていた。
汗の匂いと、ワックスの匂い。
遠くで扇風機が唸っている音だけが、二人の間を揺らしていた。
外に出ると、夕陽が体育館の壁を赤く染めていた。
光が私の腕を照らし、うっすらと浮かぶ汗の粒を煌めかせる。
村上さんがその光を見つめた気がして、思わず手を引いた。
「そろそろ、帰らないと」
言いながらも、足が動かなかった。
家に戻ってシャワーを浴びても、
背中に残る彼の手の熱は消えなかった。
湯気の中で、何度も思い出す。
指先が触れた瞬間の、あの微かな震え。
──それが、私の中の何かを確かに狂わせ始めていた。
【第3部】夜の奥でほどけていく──欲望が名を持たないまま満ちていく
夜、窓の外で風が鳴っていた。
カーテンの隙間から流れ込む月の光が、床の上に銀の帯を落としている。
その光の中で、私は一人、バレーボールを指先で転がしていた。
昼間の汗がまだ身体の奥に残っている気がした。
──背中に触れた手の熱。
──あの視線。
──指先の震え。
思い出すたびに、身体の奥が疼いた。
眠ろうとしても、まぶたの裏にあの体育館の匂いが蘇る。
ボールを打つ音、呼吸の音、床に響く足音。
全てが脈打つように胸の中で膨らんでいく。
「もうやめよう」
小さく呟いても、声はすぐに闇に溶けた。
夫からの連絡は今夜もない。
スマートフォンの画面に映る時間だけが、
静かに私を見つめ返していた。
喉が渇いて、台所に立つ。
冷蔵庫の灯りが肌を照らし、汗の粒が薄く光った。
グラスに口をつけた瞬間、冷たい水が喉を流れ、
代わりに胸の奥が熱くなった。
窓ガラスに映る自分の顔が、どこか知らない女のように見えた。
目が潤んでいる。
唇が微かに震えている。
「私、どうして…」
呟いた声が、まるで他人のもののようだった。
欲望とは、誰かに触れられることではなく、
触れたいと願ってしまう心そのものなのだと、
その夜、私は知った。
外では、潮の匂いを含んだ風が吹いていた。
カーテンが揺れ、肌に触れるたび、
その冷たさが、なぜか心地よかった。
まるで、誰かに抱かれているように。
──その夜、私は眠れなかった。
夢と現のあいだで、何度も名前を呼びそうになった。
けれど、その名を唇に乗せることはできなかった。
ただ胸の奥で、静かに疼きが広がっていった。
【まとめ】静かに燃えるもの──罪と快楽の境界で
人は、ふれあいを禁じられた瞬間に、
もっとも強く誰かを求めてしまう。
藤川奈緒にとって、それは罪ではなく「再生」だった。
乾いていた身体に、再び熱が戻った。
理性が焼ける音を聞きながら、
彼女は初めて、自分の心がまだ生きていることを知ったのだ。




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