午前10時。
洗い立てのシーツが乾く匂いが、窓からの光と一緒に部屋を満たしていた。
娘は昨夜から夫の実家に泊まっている。
夫も仕事でそのまま向こうに残っていて、今朝は「昼過ぎにLINEするね」とだけ短くメッセージが届いた。
久しぶりに得た完全な“ひとりの時間”。
けれど私は、静けさに包まれるリビングで、心がざわついて仕方なかった。
本棚の端に目をやると、そこには、ひとつの影のような存在が記憶を引き寄せてくる。
翔太――。
大学時代、私のすべてを知り尽くした男。
初めて“乱れることの悦び”を教えてくれた人。
別れてもう何年も経つはずなのに、どこかで彼の記憶だけが、私の中でずっと色を失っていなかった。
夫との生活は平穏だ。愛情もある。
でも、彼との行為にはなかった、獣のような衝動、理性を溶かすほどの興奮──それを思い出すと、どうしようもなく、身体が疼いてくる。
私はスマホを手に取り、保存されたままだった彼の名前を指先でなぞった。
「今……会える?」
震える指で送ったLINEのメッセージに、「あと30分で行く」と返ってきたのは、ほんの数秒後だった。
心臓が高鳴る。
理性はもう、とっくに置いてきていた。
玄関チャイムが鳴ったのは11時を過ぎた頃だった。
ドアを開けた瞬間、目が合った。
翔太は少し髭を伸ばしていて、黒のTシャツに濃紺のデニムというラフな格好が、逆に彼の肉体の輪郭を際立たせていた。
「変わってないな、おまえ。…いや、むしろ色っぽくなってる」
低く落とした声が、喉を撫でるように響いた。
言葉を返す間もなく、私は彼の胸に押し寄せられ、そのまま玄関先で唇を奪われた。
舌と舌が絡み合い、湿った音が喉の奥で弾ける。
彼の熱に触れた瞬間、私は理性を手放した。
翔太は私を抱き上げ、そのままリビングのソファへと運んだ。
目の前の彼は、どこか獰猛な男の顔をしていた。
そして、その太腿を横切るように浮き上がっている異様な膨らみに、私は息を飲んだ。
「…覚えてるか? こいつ、ずっとおまえのこと、欲しがってたよ」
翔太がジーンズのファスナーを下ろすと、そこから現れたそれは、記憶よりも太く、長く、重たそうに脈を打っていた。
ただ大きいだけじゃない。
その“雄”の存在感は、見下ろす私をぞくりとさせるほど、生々しく、艶めいていた。
思わず喉が鳴る。
脚の付け根が、じんわりと疼き始めていた。
私は彼のズボンに手をかけ、滑らせるようにそれを脱がせた。
目の前に現れたそれは、まるで自分の鼓動とリンクするかのように脈動していて、私の唇に、舌に、思い出すように吸い寄せられていった。
「由美……っ、うまくなったな……」
熱い吐息とともに、彼の手が私の髪をそっと撫でる。
でも私はもう、何も聞こえていなかった。
ただ、女としての悦びの奥にある“渇き”を、この喉で埋めたかった。
そして──
次の瞬間、私はソファに押し倒された。
「脱がせていい?」
聞かれるまでもなかった。
私は黙って頷いた。
下着のホックが外れる。
肌に当たる冷たい空気より、翔太の手の平の方がずっと熱かった。
胸元に触れられた瞬間、身体がびくりと跳ねる。
乳房を包み込むように持ち上げ、指先で優しく転がされる感覚。
その動きに合わせて、下腹部の奥がじんわりと滾ってくるのがわかる。
「なあ……中、見せて。どれだけ濡れてるか……確認したい」
ショーツをずらされると、すでに蜜で湿った部分が光を帯びていた。
指先で割られ、花びらのような秘所が彼の舌先に迎えられると、私は声をあげた。
「や、だ……そんな……あっ……」
吸われる。吸いつかれる。
敏感な突起を軽く噛まれた瞬間、腰が浮き、ソファの背もたれに爪を立てた。
「おまえ、昔より感じやすくなってない?」
私は何も答えられなかった。
ただ震える身体で、翔太の舌を、指を、太くなっていくそれを、心の底から求めていた。
そして──
彼はゆっくりと、私の中に自分のすべてを滑り込ませてきた。
「う……っ、すご……由美、奥まで入ってく……」
「……あっ、あぁあ……そんな、太い……のに……」
圧倒的だった。
入口が押し広げられ、奥が突き上げられ、まるで胎の奥に届くかのような錯覚。
私はそれを受け入れながら、唇を噛み、快感に耐えるように彼の肩に爪を立てていた。
「すごい……奥で暴れてる……」
「俺も……もう我慢できねぇ」
腰が打ちつけられ、湿った音が部屋に響く。
快感が波のように襲い、私の全身を痺れさせていく。
そのとき──
ピロン、とスマホのLINE通知音が鳴った。
夫からだった。
「今、少しだけ顔見たい。LINEビデオいい?」
視界が揺れた。
けれど、翔太は腰の動きを止めない。
「……つないでみろよ、そのままで」
「……えっ」
「顔だけ映せばバレない。だろ?」
背徳が、私の中で濃く甘くなっていく。
私はスマホを手に取り、呼吸を整えて、ビデオ通話を押した。
夫の顔が画面に現れる。
「大丈夫? 娘、お昼寝したからさ、少しだけ……」
「うん……大丈夫……だよ……っ」
翔太の指が私の腰に回り、ズンズンと突き上げてくる。
画面越しに笑顔を見せながら、私は夫に気づかれぬよう、オーガズムの高まりに耐え続けた。
「すぐ戻るから……じゃあね」
「……うん……気をつけて……」
通話が終わった瞬間、私は全身を跳ねさせ、翔太の中で絶頂を迎えた。
「ああっ……だめ……イク……イクぅっ……!」
翔太も私の中に熱を放ち、私たちは汗まみれのまま、ソファで崩れるように重なった。
通話を終えたスマホを、ソファの下に落とす。
もう、私にはそれを拾う余裕なんてなかった。
翔太の奥深くに注がれた熱が、私の内部を灼けるように満たしている。
中を押し広げられ、震える膣壁の奥で、まだ彼のものがピクリと脈打っていた。
「おまえ、マジでヤバかったな……。電話の最中、俺の上でイってただろ?」
「……し、翔太……ひどい……っ」
息も絶え絶えのまま、私は彼の肩に顔をうずめた。
自分がどれほど感じていたのかなんて、もう分からない。
ただ確かなのは、“女”として完全に壊されたということだった。
清楚で、賢くて、夫に尽くす妻。
その仮面が、音を立てて崩れていった快楽の渦のなかで、私は──
悦びの中で、自分自身を取り戻していた。
「もう一度、シャワーだけ浴びさせて」
私はようやく体を起こし、脚の間からとろりと流れる温もりを見下ろす。
白い肌に、まだ彼の手の跡が残っていた。
太腿の裏、腰のくびれ、首筋……どれもが、さっきまで彼に“使われていた”痕跡。
バスルームに立つと、鏡の中の自分と目が合った。
頬が赤く、唇は少し腫れていて、まるで熱病に浮かされたような顔。
けれどその瞳は、どこか妖しく潤んでいた。
私はシャワーを出し、身体を流しながら、彼が奥で弾ませていた感触を反芻する。
あの太さ、あの固さ、あの奥まで届いた重さ。
快楽の余韻が、まだ神経の端にとどまり、甘く疼いていた。
シャワーから戻ると、翔太はベッドルームで私を待っていた。
「もう終わり……にする気?」
その声に、私は無言でベッドへ近づき、タオルをゆっくり脱ぎ捨てた。
一糸まとわぬ私の姿を、翔太の瞳が舐めるように追いかける。
「……また、入れて」
自分の声とは思えないほど甘く、濡れた声だった。
彼が私をベッドに押し倒す。
脚を大きく開かされ、ふたたび彼のそれが、私の奥をゆっくり貫いてくる。
「んっ……あぁ……さっきより、深い……っ」
汗ばんだ肌が重なり、胸が潰れ、吐息が絡む。
私のなかはもう翔太の形を覚えてしまっていて、挿れられた瞬間、すでに絶頂の予感が走った。
「中が吸いついてくる……やばいよ、由美……」
「……もっと……突いて……翔太のが欲しいの……奥まで……」
彼の手が私の脚を抱え上げ、体位が深くなるたび、子宮口を抉るような快感が波となって押し寄せる。
「はぁ、はぁ……こんな女だったっけ、おまえ……」
「知らなかったでしょ……私、こんなに……エッチなんだよ……」
私は自分でも驚くような言葉を口にしていた。
脳が快楽に支配され、羞恥も良識も溶けていく。
「翔太……出して……私の奥に……また、欲しいの……っ!」
「うっ……出すぞ……ッ!」
どくん、とした衝撃と共に、翔太の熱が私の奥で炸裂した。
身体が跳ね、背中が反り、私は完全に絶頂に飲み込まれた。
「あああっっっ──!」
身体の奥で震えるように快楽が連鎖し、私は彼の胸に顔を埋めながら、しばらく動けなかった。
夕方。
私はベッドの上で、うつ伏せになって動けずにいた。
翔太はもう帰り支度をしていた。
まるで何事もなかったかのように、シャツの袖を整えている姿に、私は一瞬だけ嫉妬にも似た感情を覚える。
「……また連絡、していい?」
私の問いに、翔太は少し黙ってから、優しく笑った。
「俺じゃなくても、もう気づいてるだろ?
おまえの中の“女”は、目を覚ましたままだって」
そして、ドアの向こうに消えていった。
リビングに戻ると、スマホがピコンと鳴った。
夫からだった。
【あと30分で帰るね。娘、ぐっすり寝てるよ。】
私は小さく息を吐いて、返信を打った。
【ありがとう。気をつけて帰ってきてね】
その間、私の脚の間からは、まだ彼の痕跡がとろりと零れていた。
私はもう、戻れないのかもしれない。
けれど──
“本当の自分”が目覚めてしまったことに、後悔はなかった。



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