陸上部の大好きなノーブラ乳首ポチ彼女が最低なゲス先輩に乳首をシゴキ開発されて肉オナホにされていた一部始終。 吉沢梨亜
そこへ滑り込むのは、権力と欲望にまみれた大人の世界。
この作品は「愛」と「支配」、「純情」と「裏切り」が交錯する、
息が詰まるほど生々しいドラマだ。
映像を超えて感じるのは、肉体ではなく心が壊れていく音。
美しさと残酷さが同居する、現代的な“純愛の悲劇”である。
【第1部】夏のトラックに沈む秘密──汗と風の匂いのなかで
夏の午後のトラックは、焼けた鉄板のように眩しかった。
スタートブロックの金属が、靴底を通してじかに熱を伝えてくる。
笛の音が鳴る前から、心臓の鼓動が耳の奥を叩いていた。
走り終えた瞬間、肺の奥が火照りでひっくり返りそうになる。
水筒を握りしめ、汗を拭いながら振り返ると、マネージャーの紗耶が立っていた。
キャップの影から見える横顔。風で乱れた髪が頬に貼りついて、指先でそっと払う仕草。
その一瞬だけで、身体のどこかが目覚めてしまうのが分かった。
恋愛は禁止。
それでも、視線がぶつかるたび、空気が少しだけ濃くなる。
隣を通り過ぎるとき、日焼け止めの甘い匂いと、汗の塩気が混ざる。
誰にも気づかれないように息を吸うと、彼女の体温まで肺に入ってくる気がした。
「藤原、またタイム伸びたね」
笑いながらペットボトルを差し出す紗耶の指が、ほんの少し触れた。
それだけのことなのに、心臓の鼓動が耳の奥で跳ねる。
自分の中に流れていた「走るためのリズム」が、
その瞬間から、彼女の仕草一つに支配されていくのを感じた。
放課後、部室に陽が差し込む時間。
器具を片づけていた彼女が、汗で張りついたTシャツの背を振り返った。
「今日、風が気持ちよかったね」
たったそれだけの言葉が、世界の中心みたいに響いた。
──あの夏、風も汗も、すべてが彼女の匂いを運んでいた。
秘密の始まりなんて、いつも静かで、何気ない瞬間に忍び込むものだ。
【第2部】触れられない距離──指先の熱が世界を変えた
あの夏の空気には、何かが混ざっていた。
汗と、焦げたゴムの匂いと、紗耶の髪から漂う微かな甘さ。
練習後の夕暮れ、誰もいないグラウンドを歩くたび、
その匂いが胸の奥にこびりついて離れなくなる。
「ねえ、湊。秘密って、どこまでが秘密なんだろうね」
そんな言葉を紗耶が口にしたのは、七月の終わりだった。
夕立のあとの部室。窓から差し込む光が床の水滴を照らしていた。
僕は笑ってごまかしたけれど、彼女の瞳がまっすぐ僕を射抜いていた。
その視線に、呼吸の仕方を忘れた。
僕たちは、誰にも見られないように時間をずらして帰った。
正門を過ぎたあたりで、彼女が足を止める。
風が吹いて、シャツの裾がふわりと浮いた。
肩が触れるほどの距離。言葉よりも先に、沈黙が僕らを包んだ。
その瞬間、世界が小さくなった。
部活の掟も、大学推薦も、未来も、すべて遠く霞んでいく。
残ったのは、触れたいという衝動だけ。
指先が、彼女の手に触れた。
ほんの一瞬だったのに、稲妻のように熱が走る。
紗耶が少しだけ目を伏せて、唇を噛んだ。
その仕草に、言葉にならない何かが溢れ出しそうになる。
「……ダメだよ、ここじゃ」
そう言いながら、彼女は笑った。
でもその笑みは、拒絶ではなく、同じ渇きを隠すための仮面だった。
あのとき僕は知った。
触れられない距離の方が、ずっと残酷で、ずっと熱いということを。
【第3部】夜の境界線──呼吸が触れ合うところで
その夜の空は、静かに滲んでいた。
夕立の名残を含んだ風が、アスファルトを湿らせている。
練習のあと、僕は理由もなく校門を離れられずにいた。
どこかで、紗耶も同じように帰りそびれている気がした。
彼女は本当に、そこにいた。
街灯の下、白いワンピースに肩掛けのバッグ。
光に照らされたその輪郭は、夏の終わりを告げる幻みたいだった。
「湊、まだ帰ってなかったんだ」
そう言いながら、紗耶は笑った。
その笑みの奥に、僕の知らない寂しさがかすかに滲んでいた。
沈黙がふたりの間に落ちて、時間が溶ける。
指先が、彼女の髪に触れる。
それだけで、世界が震えた。
彼女は目を閉じ、少しだけ肩を寄せる。
呼吸が触れ合う。互いの鼓動が、静かな夜に混ざりあう。
何も言葉を交わさないまま、僕らはそのまま立ち尽くしていた。
唇が触れそうで触れない距離を、いくつもの呼吸でなぞる。
風が通り抜けるたび、シャツが揺れて、皮膚の温度が近づいていく。
その瞬間、すべての掟が遠くに霞んだ。
陸上部の誓いも、未来の推薦も、何もかもどうでもよかった。
彼女の頬に手を添えたとき、僕は初めて「走る」以外の理由で息を切らした。
「……湊」
その声は、夏の終わりの虫の音よりも小さく、
けれどどんな歓声よりも強く、僕の中に響いた。
夜の境界線は、思っていたよりも静かだった。
身体ではなく、心が先に越えていった。
まとめ──あの夏に置いてきた呼吸
あれから何年も経つのに、夏の匂いを嗅ぐたびに心臓が疼く。
あのトラックの熱、紗耶の声、夕立のあとに立ち込めた湿気。
全部、今もどこかに生きている。
僕は陸上を続けた。
記録を追い、大学へ進み、走るたびに「速さ」と「孤独」が背中合わせであることを知った。
どれだけ走っても、あの夜の呼吸の温度には追いつけなかった。
恋愛禁止という掟は、ただの紙切れだと思っていた。
けれど今では分かる。
あれは「若さの爆発力」を守るための、ぎりぎりの防波堤だった。
僕らはその向こうへ行ってしまった。
その代わりに、世界が一瞬だけ、恐ろしく鮮明に見えた。
触れた指先の熱は、すぐに消えた。
けれど、あのときに見た彼女の瞳は、今も僕の中で瞬いている。
まるで、永遠に消えないスタートランプのように。
──あの夏、僕は確かに走っていた。
誰かに追われるためでも、記録を残すためでもなく、
ただひとつの名前に向かって。
紗耶という季節は、僕の中で今も続いている。




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