【第1部】都会の夜、見知らぬ視線が肌の奥を温めていく下北沢クラブで始まる予兆の疼き
11月の夜、下北沢。
街を包む冷気はまだ冬になりきらず、どこか湿り気を含んでいた。
駅前の灯りの下を歩くたび、吐いた息が透明な膜のように空気を震わせる。
その夜、私は女友達と三人でクラブへ出かけた。
クリスマス前のせいか、街も人も少しだけ焦燥を帯びているように見えた。
「ムシャクシャしたら踊るしかないよ」
友達のその言葉に背中を押され、私は薄暗いフロアの中に身を置いた。
音に身体を委ねるのは久しぶりだった。
けれど、どれだけリズムに揺れても、どこかで「何か足りない」と思っていた。
胸の奥の空白──
それを埋めるように、私はカウンターへと歩いていった。
「一緒に飲まない?」
ふいにかけられたその声は、音の洪水の中でもはっきりと聞こえた。
視線を向けると、浅黒く背の高い男が、グラスを指先でゆらゆらと揺らしながらこちらを見ていた。
ケイタ──
それが彼の名前だった。
「君、酔ってないでしょ?目が冴えてる」
「……なんでわかるの?」
「呼吸が綺麗だから。酔ってる人って、もっと乱れるよ」
会話はどこかゆっくりで、けれど心の奥にじわじわと入り込んでくる。
彼の指がグラスを持ち上げるとき、手首の筋が、なぜか艶かしかった。
彼の肩に、無意識にもたれたのは、たぶん自然な流れだった。
香水ではない、体温と汗と空気が混じった匂い──
それが私の粘膜をじんわりと湿らせていった。
「出ようか?」
「……ごめん、あの子たち泊める約束してるの」
「そっか」
少し残念そうに笑った彼に、私はそっと番号を教えた。
別れ際、私の耳元で囁くように言った。
「じゃあ次は、最初からふたりきりで」
【第2部】舌が記憶を刻み、理性をほどく都会の部屋で交わる熱と沈黙
大学の帰り道。
冷たい風に頬を撫でられながら、私は彼のバイクの背にしがみついていた。
街がスピードとともに流れていく。
けれど、私の中では逆に時がゆっくりと進んでいた。
「買い物とか、ちゃんとしたデートしたかった」
彼がそんなことを言うから、渋谷で服を見たり、カフェで話をしたり、手をつないで歩いたりした。
少しずつ、身体よりも先に心のほうがほぐれていった。
夜のバイクの上、彼がふいに振り返って言った。
「ヘルメット被る前に、キスしちゃダメ?」
「……うん」
キスは静かだった。
でも、その静けさの中に、唇だけじゃない何かが流れ込んできた。
もう一度──
私は自分から首を伸ばした。
部屋に着くと、冷えた空気が私たちの間を引き裂こうとした。
けれど、彼の体温が私の背中に寄り添う。
「寒いなら、こうしてていい?」
「うん……気持ちいい」
後ろから首筋に唇が触れ、空気よりもゆっくりと胸元に手が回ってきた。
その手が、遠慮がちに撫でてくる。
生地越しに乳首が立ち、私は無意識に唇を濡らしていた。
「キス、したい」
「ん……こっち、見て」
向き合った彼の瞳に、自分の顔が映っていた。
赤くなった頬も、少し震える睫毛も。
ベッドの上に押し倒されるとき、私はもう何も言わなかった。
「胸、綺麗」
「……見ないで」
「見るよ。触るよ。ぜんぶ、感じて」
唇が乳首を探し当て、舌先で優しく押し出してくる。
それだけで、股の奥が濡れていく。
「……ねぇ、舐めてるの、気持ちいい」
「声……可愛い」
「そんなこと……言わないで」
彼の手が下腹部に触れると、パンティの上からでも濡れた感触が伝わったようで、彼の呼吸が熱を持った。
「脱がせてもいい?」
「……うん、お願い」
下着を脱がされる瞬間、羞恥と快感が溶け合って、脚の付け根がきゅっと震えた。
【第3部】崩れた理性の奥、静かに残る声と熱
舌が這うたび、意識が少しずつ飛んでいく。
唇で押し、舌先でかき回され、私はもう声を抑えきれなかった。
「ん……だめ、そこ……ッ」
「まだ、だめじゃないよ」
彼の言葉が熱を連れて膣口を開いていく。
震える声が空気を濡らし、内腿がびくびくと波打った。
溢れた蜜を指でなぞられ、私はふるふると小さく首を横に振る。
「ケイタのも……触りたい」
「いいよ。好きにして」
ズボンを下ろすと、すでに彼は張り詰めていた。
私はゆっくりと唇で包み、舌先で輪郭をなぞる。
喉の奥に届きそうなほどの長さと硬さ──
その存在感に、私は心から欲してしまっていた。
「……出そう、でも……どうする?」
「口の中は、怖い……」
「わかった。じゃあ、ここに」
彼は私の胸に出したあとも、愛おしそうに頬を寄せてきた。
そのやさしさに、また私は彼を口に含んでしまっていた。
「もう一度……してほしい」
「……いいの?疲れてない?」
「平気。お願い。入れて……」
挿入の瞬間、身体がふたつに裂けるような感覚と、満たされる悦びが重なった。
「すごい……奥まで……」
「きついけど、全部入った……」
ゆっくり動き始めた彼の腰が、私のなかを何度もかき回すたび、子宮の奥が甘く痺れていく。
「もう、イきそう……ッ」
「俺も……でも、まだ抜かない」
後ろ向きになり、彼に突かれると、私は声にならない叫びをあげた。
意識が飛び、身体が震え、絶頂が連続して押し寄せてきた。
──気づけば、私は彼の体液に包まれていた。
「大丈夫……?」
「うん……ケイタ……すごかった……」
静かに横たわる私を見つめながら、彼は言った。
「……ねぇ、俺たち、ちゃんと付き合わない?」
「え?」
「君じゃなきゃ、もう無理かもしれない」
私は頷いた。
快楽のせいだけじゃない。
身体が覚えてしまったから。
あの夜の湿度も、声も、振動も──
全部、私の中にまだ残っていたから。



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