【第1幕】駅前1分、密室で裸になる理由
台風が近づく午後、私は兵庫県A市の駅前にそびえる高層マンションの一室にいた。
「T」と書かれた小さなプレートの横にインターホン。
日常の疲れが指先から染み出すような感覚で、私はオートロックのドアをくぐった。
エントランスはまるでホテルのように静かで、誰の気配もない。
受付の女性に通されたのは、マンションの一室を改装した個室。四畳半ほどの狭さ。
「シャワーをお使いください」
少し戸惑ったけれど、オイルマッサージという言葉に、自分を納得させた。
薄い紙ショーツと紙ブラを手渡される。
裸になることの意味が、じわじわと心に染みていく。
うつ伏せになると、女性の手が足先から滑り込み、丁寧に足裏を押してくる。
「特に疲れている場所、ありますか?」
そう問われて、「足」と答える。すると、手は足首から膝、そしてソケイブ──股関節まで深く押し込まれ、
まるで身体の奥から抜けていくような、不思議な脱力感が訪れた。
そのとき、彼女が静かにこう告げた。
「では、次は男性の施術者にかわりますね」
私は反射的に、背中を強く張った。
【第2幕】タオルを剥がされて、私のなかの“知らない女”が目覚めた
扉の開閉音。
現れたのは、低く優しい声の男性だった。
「足、少しは楽になりましたか?」
その声に安堵しかけた瞬間──
ふわりと掛けられていたタオルが、突然取り払われた。
紙ショーツ一枚の自分が露わになる。私は……誰よりも羞恥に震えた。
見られる、という事実に、深い場所で何かがじんわり濡れてゆく。
男の手は温かく、湿ったオイルとともに足裏を滑りはじめる。
女性のそれとは違う──厚く、たくましく、やさしい手。
足から膝、そして太ももの内側へ。
タオルはどこにもない。
紙ショーツの際を、手のひらがすべるたびに、
私は自分が“触れられていない部分”のほうを意識してしまう。
「大丈夫ですよ」
その声が耳元でささやかれるだけで、何かを許してしまいそうになる。
アナルのあたりを指がなぞり、紙越しに震える。
次第に、私は声にならない吐息を漏らしはじめていた。
うつ伏せのままでは足りない。
仰向けになってからが、本当のマッサージの始まりだった。
オイルを垂らし、両胸の輪郭をなぞられる。
乳首のすぐ脇をすり抜けるように──まるで“舐めている”ような錯覚。
「触れてほしい」
そう心が叫んでいるのに、彼は決して急がない。
私は、焦らされることで逆に高ぶっていく自分に気づいてしまう。
【第3幕】触れられていないのに、逝くということ
足をそっと開かれた。
空調の音だけが響く密室。私の内股に、オイルが垂らされる音がした。
その手は、“そこ”には決して触れない。
けれど、その周辺をなぞられるたびに、私は濡れが止まらなくなっていった。
鼠径部の奥、骨盤の内側、内腿の付け根。
すべてが“その入口”を意識させるための演出だった。
私は、私の中の知らなかった女の部分が目を覚ますのを感じた。
仰向けのまま、呼吸が荒くなる。足先が小刻みに震え始め、
まるで誰にも見せたことのない顔で、私は……濡れていた。
「触れられていないのに、どうして……」
その疑問を飲み込んだ瞬間、
身体の奥で静かな波が爆ぜた。
快楽の頂点は、音もなく、しずかに、しずかにやってきた。
触れられていないのに。
私は、逝っていた。



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