月夜の森で交わった見知らぬ彼――人妻が一線を越えた秋祭りの夜

提灯の明かりが遠くに揺れている。
人々の笑い声、神楽の笛の音、香ばしい焼きとうもろこしの匂い――
神社の秋祭りは、今年も賑わっていた。

夫と七歳の息子と三人、毎年恒例の家族行事。
私は撫子の模様が入った紺の浴衣をまとい、髪を結い上げ、いつもより少しだけ丁寧に紅を引いた。

けれど、誰も私の変化には気づかない。
夫は缶ビールを片手に、息子は綿あめと金魚すくいに夢中だった。

「ちょっと、歩いてくるね」
そう言って私は、手にしていたチューハイの缶を軽く振りながら、境内を離れた。

あの喧騒の中にいると、自分がただの「母」や「妻」にしか思えなくなる。
酔いも手伝ってか、少しだけ風に当たりたくなった。
気づけば、私は神社の裏手、誰もいない森へと足を踏み入れていた。

夜の森はしっとりと湿り気を帯び、草の匂いが鼻をくすぐる。
上を見上げれば、枝葉の隙間から月が顔をのぞかせていた。
その光が私の浴衣に落ち、撫子の模様をほの白く浮かび上がらせる。

――そのときだった。

「…あれ? 人、いたんだ」

突然背後から声がして、振り向いた。
そこには、酔った様子の若い男――二十歳前後の大学生が立っていた。
白いTシャツに黒いパーカー。首には法被をラフに巻いたまま。
顔は少し赤らみ、手にはまだビール缶を持っている。

「すみません、驚かせて…俺も、ちょっと酔い覚ましに歩いてただけで」

「あなたも…祭りの帰り?」

「はい、友達と来てたんですけど、途中でちょっと……抜け出して」

彼は照れたように笑った。

そしてふいに、私の姿をまっすぐ見つめた。

「……ていうか…めちゃくちゃ、綺麗ですね。月明かりに照らされてる浴衣姿。なんか、もう…見惚れるっていうか」

唐突な言葉に、息が詰まりそうになる。

「…酔ってるでしょ、あなた」

「酔ってるけど、だから言えることもあるんです。…嘘じゃないです」

彼の視線は、真っ直ぐだった。
夜の森、湿った土の匂い、木々に囲まれたこの空間に、二人きり。
足音も、車の音も、誰の気配もない。

「俺、隼人っていいます。大学三年で、札幌から友達と来てて…名前、聞いてもいいですか?」

「……理恵」

そう名乗った瞬間、彼の口元が少しゆるんだ。

「理恵さん。…その名前も、似合う」

「口がうまいのね」

そう言いながらも、私は彼の視線から目を逸らせなかった。
何年ぶりだろう、誰かにこんなふうに見つめられたのは。
それだけで、身体の奥が熱を帯びてくるようだった。

「俺と少しだけ…話しませんか? このまま帰るの、もったいない夜だから」

気づけば、私は頷いていた。


彼と並んで歩き出した森の奥――
木々の隙間から差し込む月光が、浴衣の柄を浮かび上がらせるたび、
彼はまるで吸い寄せられるように私に触れたそうに見つめていた。

「…やっぱ、めちゃくちゃ綺麗だ。月明かりが反射して、透けて見えるの…ちょっと反則です」

「……バカね」

そう言いながら、私の声は少しだけ甘く濁った。
軽く酔っていたのは、私も同じだった。
心のどこかが緩み、理性という名前の糸がゆるくほどけ始めていた。

「触れても…いいですか?」

隼人の声が、耳元で震える。

私は一瞬、答えを迷った。
けれど、その指先がそっと私の袖口に触れたとき、
拒む理由が、どこにも見つからなかった。

隼人の吐息が耳元で揺れる。
彼の手は浴衣の裾をするするとめくり、太腿をなぞるように滑り上がっていく。

「……理恵さん…ほんとに綺麗…全部」

その言葉に反応してしまう自分が、もう抑えられなかった。

唇が胸元に落ち、布越しに先端を探られる。
それが硬くなっていくのが自分でもわかるたび、羞恥と興奮が溶け合い、呼吸が浅くなる。

「口で…愛させてください」

彼の声は熱を帯び、戸惑う間もなく私の太腿にキスを落とした。

草の匂いに混ざって、夜の湿気と吐息が肌に絡みつく。
そして、彼の舌が私の奥をなぞり始めた――
最初はやさしく、探るように。
やがて徐々に、舌先の圧とリズムが変わり、奥へ奥へと深く滑り込んでくる。

「…やっ、あっ…!」

理性の壁が崩れる音が、身体の奥で鳴った。
彼の指が唇の奥を割るように入り、舌がそこを同時に責める。

草の上で声を噛み殺しながら、私は指を彼の髪に絡めていた。

「もっと…そこ…だめ…気持ちよすぎて……っ」

限界に達したその瞬間、私は彼の顔に太腿をしがみつけるようにして、果てた。
全身が波のように跳ね、彼の舌を深く受け入れながら、甘く壊れていく。


「…こんなに綺麗に乱れてくれるなんて…理恵さん、反則ですよ」

息を上げながら顔を上げた隼人の瞳は、もう我慢の限界を超えていた。
そして彼が、自身を解放したそのとき――

私は一瞬、息を止めた。

ズシリと重く、熱を帯びた存在感。
浴衣の裾の間から現れたそれは、想像を超えていた。
視線が釘付けになり、喉の奥がひとりでに鳴った。

「……こんなに…」

私が呟くと、隼人がそっと私の頬に手を添えた。

「理恵さんの口で…触れてくれたら、…俺、きっと壊れる」

何も言わずに膝をつき、顔を寄せる。
唇が触れるその瞬間、彼が小さく震えた。

熱く、硬く、脈打つその中心を舌先でなぞると、彼が喉を詰まらせるように息を漏らした。
根元まで包もうとして頬を膨らませると、彼の指が私の髪をそっと掴んだ。

「…やばい…理恵さん、うますぎる…」

その反応が嬉しくて、私はさらに深く唇を開く。
舌で巻き、唇で絞り、吸い上げるように奉仕するたび、彼の震えが増していった。

「もう…無理…入れたい…今すぐ…」

その言葉に私は唇を離し、浴衣の裾を持ち上げ、草の上に静かに横たわった。


次の瞬間、彼の身体が覆い被さる。
そして――
熱く、硬いものが私の奥へ、ゆっくりと入ってきた。

「ん…っああっ……!」

圧倒されるような膨らみに、身体が裂けそうになる。
でも、それが深く満ちていく感覚に変わったとき、私は快楽の波に呑まれ始めていた。

「…こんなに…気持ちいいの初めて…」

彼の動きが次第に激しくなり、草が揺れ、幹が背中を打ちつける。
何度も奥まで貫かれ、内側を擦られるたびに、私の声は夜空にこぼれていった。

「やっ…ああっ、だめっ、そんな…あああ…っ」

彼の唇が私の首筋を甘噛みし、腰がさらに深く打ち込まれた瞬間――
私はまた、全身を震わせて、絶頂に達した。


静けさだけが、二人の間に降りてきた。

草の上、彼に抱かれながら月を見上げる。
心も身体も、何もかもがほどけていた。

「……ありがとう」

「俺のほうこそ。…本当に、夢みたいだった」

私は浴衣を直し、立ち上がる。
遠く、まだ祭りの灯りが瞬いている。

「来年も…ここに来てくれますか?」

「…どうかしら。今夜みたいな夜は、そう何度も起きないから」

そう答えた私の浴衣は、まだ、わずかに月の光を帯びていた。

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