【第1幕】息遣いがほどいた午後の輪郭
父が再婚したのは、私が大学三年の夏だった。
「紹介するよ」
玄関で見上げたその人は、年齢を感じさせないほど透き通った肌をしていて、薄く笑った唇の奥に、言いようのない温度が灯っていた。
真白いシャツに指先だけ薄く紅をさしたようなネイル――若い、というより、柔らかい艶のある年上の女性。
私は無意識に足を閉じ、手に持っていたタオルを強く握った。
食卓で父の隣に座る彼女。私は向かいに座りながら、どうしても視線が泳いでしまう。
話す声が優しく、言葉のひとつひとつがどこか触れてくるような響きを持っていた。
「〇〇くん、疲れてる?顔、赤いよ?」
継母――いや、〈彼女〉が言ったとき、頬が本当に熱くなるのを感じた。
父が風呂に入り、ふたりきりになったリビング。
彼女は立ち上がり、冷蔵庫からペットボトルを取り出し、私に手渡してきた。
その手が、ほんの少し長く私の手に触れていたのを、身体はしっかり覚えている。
そして、視線が絡んだ。
なにかが、始まってしまった。
【第2幕】禁忌をなぞる舌と沈黙の奥で
雨の音が眠りを誘うような午後、父は出張で不在だった。
「ソファで寝てたでしょう?」
そう言ってタオルを手渡してくる彼女は、いつもより近くに立っていた。
かっぽう着の下に、透けて見えるキャミソール。露骨ではないが、目が逃げない。
「身体、熱いね……」
言葉は優しかった。でも、指先が私の前髪を撫でるとき、意図がそこにあるのがわかった。
キスは、彼女からだった。
驚きと背徳が重なって、私はその瞬間、すべての理性を失った。
唇が重なる音が湿りを帯び、舌が奥へと探り合う。
「見られたら……怒るかな?」
そんな言葉すら、ふたりの距離を燃やすだけだった。
彼女のブラウスを外すと、そこに浮かぶ鎖骨が、雨に濡れた石畳のように艶めいていた。
私の唇は自然にそこへ吸い寄せられ、舌がゆっくりとその起伏をたどる。
やがて彼女はベッドではなく、ソファへと私を導いた。
そして、脚を絡めてくる――そのとき、すでに身体は交わる寸前の熱に包まれていた。
クンニリングス。
彼女はソファの縁に腰をかけ、私は膝をつき、顔を埋める。
舌先で浅くなぞり、唇で軽く吸い、奥に微細な震えを送り込む。
そのたびに、彼女は声をこらえながら、私の髪を強く掴んだ。
「見て、ちゃんと……どこが好きか、わかって……」
目が合った瞬間、私は舌を深く沈めた。
その味も、呼吸も、忘れられない。
続けざまに、彼女は私を押し倒すようにして跨り、騎乗位で私を受け入れた。
腰をゆっくり回しながら、彼女の胸が揺れる。視線が交わると、私の奥にまた熱が溢れた。
そのあと、体位は変わる。背中から抱きしめるようにして、後ろから深く貫く。
彼女の腰が私の腹に打ちつけられ、ふたりの汗が混ざるたび、もう戻れないという確信が生まれた。
【第3幕】欲望だけが名を呼ぶ夜
夜。
雨が上がり、ぬるい湿気が部屋を包んでいた。
父が帰る前の最後の時間。
私は彼女の部屋へと忍び込み、音もなく布団に潜り込んだ。
「来ちゃったのね……」
囁きながら、彼女は私の顔を両手で包み込む。
キス。唾液が喉の奥で甘く溶ける。
そして挿入――濡れた音が静かに、でも確実に室内に響く。
今度は正常位。
彼女の脚を肩に乗せ、奥深くまで突き上げる。
彼女は目を閉じ、口元だけが笑っていた。
「あなた、こんなに……深くて……」
その声に、私は何度も果てそうになった。
角度を変え、脚を絡ませ、彼女の中を貪るように動き続ける。
絶頂。
それは、身体の奥底にある、赦しのような震えだった。
汗ばんだ肌と、濡れた太もも、乱れたシーツ。
そして、耳元で囁かれる、たったひとこと――
「あなたに壊されて、よかった……」
その言葉だけが、今も脳裏に焼きついている。
あのときの濡れたソファの感触だけが、今も身体の奥で疼いている。



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