第一章:営業先は、男たちの熱で満ちていた
結婚して、主婦になるはずだった。
それだけで十分だと思っていた。
だけど──現実は、思っていたよりも冷たく、そして空虚だった。
夫は穏やかで、悪い人ではない。
でも、どこか「女としての私」を見ていない。
夜、私が髪をほどいて近づいても、彼は目を閉じたまま応えるだけ。
私は徐々に、誰かに触れられる感覚を、忘れかけていた。
そんなときだった。
ひょんなことから、保険のセールスレディとして働くことになったのは。
「エロゲーム制作会社? まあ、入るだけ入ってみなさいよ」
先輩が冗談めかして言ったその言葉に、私は背筋にひやりとした違和感を覚えながらも、笑って頷いた。
──午後三時。
東京・中野。雑居ビルの6階。
インターホンを押すと、しばらくして無造作に開かれたドアの向こうには、ほこりっぽくて生ぬるい空気が漂っていた。
中には、数人の男性。
皆20代半ばほどで、無精髭やラフなシャツ姿。髪も乱れ、睡眠不足の気配がにじんでいた。
「こんにちは、保険会社の──」
「あ、どうも……制作中なんで、バタバタしてて……」
名乗る間もなく、私を見上げた一人の男性の瞳が、私の足元から太ももへと、一瞬だけ吸い寄せられた。
その視線は、いつぶりだっただろう。
私の心が、ふ、と軽く震えた。
「こちらに……どうぞ」
彼が空けてくれた椅子に腰を下ろす。
膝上10センチのスカートが、椅子の革にふわりと当たるたび、肌の温度が自分でも分かるほどに上がっていた。
彼の名前は──藤堂 拓真(とうどう・たくま)くん。
26歳、プログラマー兼シナリオライター。
「実は今、“官能ゲーム”を作っているんですが……モデルの資料が足りなくて」
「モデル?」
「そうなんです。こういう……女の人の、リアルな動きとか表情とか……知っておかないと、書けないんですよ、シーンが」
シーン。
彼がぼんやりと口にしたその言葉の響きに、私の胸がどくりと鳴った。
──性描写。
そう、彼らが作っているのは、官能ゲーム。
その“リアルな描写”の参考に、私を、使いたいというのだ。
常識で考えれば、断るべきだった。
でも──
「少しだけ……ね」
口元でそう笑った私は、すでに“営業”の枠から、一歩はみ出していたのだと思う。
第二章:その目で見られるたびに、私の奥が疼いた
「じゃあ……手を、握ってもいいですか?」
その提案はあまりにも慎ましくて、だからこそ私の理性を曖昧にした。
「いいわよ」
私はそっと手を差し出す。
彼の手が、私の指先に触れる。
冷たく乾いた掌。でも、じきに熱を帯びていく。
この体温の交換だけで、私は息が詰まりそうになる。
「……女性の手って、思ったより柔らかいんですね」
「あなた、あまり……触ったこと、ないの?」
「……正直に言うと、ないです」
その無垢さに、私は思わず口元が緩んだ。
だけど同時に、その目の奥にある欲望の輪郭が、静かに脈打っていた。
私は立ち上がって、彼のすぐ目の前に立つ。
そして、ゆっくりとスカートの裾を指でなぞりながら、少しだけ脚を開いた。
「リアルが知りたいのよね?……見て。女の身体、どう動いてるか」
彼の視線が、私の内腿へと吸い込まれる。
濃いまつげがわずかに震え、喉仏がゆっくりと上下した。
椅子に座る彼の膝に、私はそっと跨るようにして乗った。
指先が太ももに滑り込み、ストッキング越しの私の肌を這い始める。
──ああ、こんなに誰かに「触れてほしかった」なんて。
彼の指がスカートの奥へと進んでいくたび、私は腰をわずかに揺らしていた。
もう、“営業”なんて言葉は、遠い遠いどこかに置き去りにして。
第三章:忘れていた女の顔が、私の中で目を覚ます
(再構築・完全版)
彼が静かに立ち上がったとき、空気がわずかに震えた。
まるで部屋全体が呼吸を止めたような静寂の中で、彼の両腕がそっと私の腰に添えられる。
その手のひらから、火のような熱が伝わってくる。
薄いスーツ越しでも、それは確かに、欲望の温度だった。
彼の唇が私の首筋をなぞると、ゾクリとした感覚が背中を駆け抜ける。
心臓が早鐘のように鳴り始める。
なのに、不思議と怖くはなかった。
むしろ、私は……ずっとこのときを待っていたような気さえした。
私はゆっくりとスーツの上着を脱ぎ、
指先で白いブラウスのボタンをひとつずつ、外していった。
――こんなに、手が震えるなんて。
鏡のない部屋で、私は自分の「女の顔」を初めてまざまざと意識していた。
レースのブラジャーの内側、形を主張するように膨らんだ胸元。
彼の視線がそこに吸い寄せられていくのがわかった。
「……触れて、いいですか?」
彼の問いはあまりにも慎ましく、
それが逆に、私の芯を濡らした。
私は、小さく頷いた。
彼の指が、私の鎖骨の上にそっと置かれ、
そこから滑るようにカーブを描きながら、胸元へと降りていく。
レース越しに撫でられる乳房。
下着の布地に、わずかな摩擦が生まれるたび、私の息が浅くなる。
指先が輪郭を描くように撫で、優しく、押し広げるように包み込む。
「ん……そこ、もう少し……」
無意識に、私は言葉を漏らしていた。
羞恥よりも、熱が勝っていた。
ブラのホックが外れ、彼の手が素肌に触れたとき――
私の中で何かが音を立てて崩れた。
やさしく乳首を転がすように撫でられる感触。
唇がそこに触れ、温かな舌が湿度を残していく。
私の全身が、彼の手の中で花開いていくのがわかった。
彼の体が、私の脚の間に忍び込む。
スラックス越しに押し当てられる堅く、熱を帯びた存在。
あまりにもはっきりとわかる、その形と圧。
私の身体が、それを内側から迎え入れる準備を始めてしまう。
スカートの中に手が入ると、私の呼吸はますます乱れた。
ショーツの上から優しく撫でられ、やがて指がその内側へと滑り込んでくる。
「あ……だめ……でも……」
ダメと言いながら、腰が逃げなかった。
むしろ、迎え入れるようにわずかに開いてしまっていた。
指が、そこに触れた瞬間――
熱い蜜がとろりとあふれていた。
私自身が、自分の身体の欲しがり方に驚く。
「すごく……濡れてる」
「だって……こんなに見られたら、感じないわけない……でしょ……?」
彼は私のショーツをそっと脱がせ、脚元に落とした。
次の瞬間、彼がそっと腰を下ろし、
その熱を、私の下腹部に押し当ててきた。
ふたりの呼吸だけが部屋に満ちる。
そして――
「入れるよ……」
私は、頷くしかなかった。
──熱が、ゆっくりと私の中を押し広げていく。
ぐぐっと奥へ進む感触は、
想像していた以上に太くて、長くて、重かった。
入りきらない、と身体が一度だけ拒む。
でも、彼の腰がゆっくりと沈んでくるたび、
私の身体は柔らかく道を譲っていった。
「……すご……こんなに……」
彼の囁きが耳元に落ちる。
私は脚を大きく開き、彼を奥まで受け入れていく。
内側で擦れるたびに、震えがくる。
膣壁が絡みつき、収縮し、
彼の動きに合わせて波打つ快感が、意識を浸していく。
「ダメ、そんなに深く……あっ……だめぇ……っ」
もう、止められない。
奥を突かれるたびに、声が溢れる。
目の奥がかすみ、涙が滲むほどの快感。
彼の腰が打ちつけられ、
ぬるりと熱い感触が私の奥を何度も擦り上げる。
「イく……っ、もう……やだ、イっちゃう……っ」
身体が弓のように反り返り、
その瞬間――
熱い閃光が、私の全身を駆け抜けた。
絶頂の余韻が、いつまでも身体に残っていた。
彼の胸に顔をうずめたまま、私は深く息を吸った。
遠くでパソコンのファンが回る音が聞こえる。
現実が、ゆっくりと戻ってくる。
でも、私はまだ戻りたくなかった。
女として見られ、抱かれたまま、
このまま溶けてしまえたら――
どんなに幸せだろうと、思った。
「……また、来てくれますか?」
彼の声は、少し震えていた。
私は微笑んで頷いた。
でもその頷きの意味を、私は自分でもまだ、うまく言葉にできなかった。
ただひとつだけ、わかっていた。
私は、たしかにあのとき──
営業先で、もう一度、女になっていた。



コメント