甘い囁きに流されるまま、僕は大学を留年するまで、人妻との巣篭もりSEXに溺れて…。 夏目玲香
毎朝アパート中に鳴り響く住人の騒音、こっちの都合関係なくシフトを入れるバイト先、夢も希望も無くボロアパートに住む大学生の僕。虚しさを感じながらも日々を過ごすある日、隣の部屋に玲香さんが引っ越してきた…。ミステリアスな雰囲気が漂う美人な女性。そんな彼女は何かにつけて僕を誘ってくる…。僕はその甘い囁きに逆らうことも出来ず、巣籠りしながら堕落するような濃厚セックスにハマっていって…。
【第1部】面接の一瞬で心を盗まれた私──地方の設備会社で始まった静かな不倫の予感
四十代の主婦になってから、「初めて」という言葉は自分にはもう縁がないものだと思っていました。
名前は美咲(みさき)。関東郊外の小さな町で、設備会社の事務パートとして働き始めて半年ほどになります。
夫は同い年。子どもは高校生と中学生。
家の中は穏やかで、特別な不満があるわけではないけれど、いつからか私は「妻」という役割にすっかり馴染んでしまって、自分の輪郭がぼやけていくような感覚を覚えていました。
面接の日、最初にドアを開けて出迎えてくれたのが、あの人でした。
三十代前半、長身でスーツの似合う社長、一真(かずま)。
設備会社の社長という言葉から勝手に想像していた「年配で無骨な男性」とはまるで違う、すっと通った横顔と、落ち着いた低い声。
「お時間いただいてありがとうございます。どうぞ、こちらへ」
そう言って椅子を引いてくれた瞬間、私は「面接を受ける主婦」ではなく、
一人の女として、彼の視線の温度を測ろうとしていました。
仕事内容の説明、勤務時間、時給の話。
どれも当たり障りのない内容なのに、彼が「助かりますよ、こういう落ち着いた方に来ていただけると」と微笑んだ瞬間、胸の奥が不器用に跳ねました。
(落ち着いた方、なんて言われたのは初めてかもしれない)
その日、家に帰ってからも、私はふとした瞬間に、
面接室の蛍光灯の白い光と、一真さんの手の血管の浮き方を思い出していました。
パートとして働き始めると、彼は「社長」という立場のわりに、従業員に気さくに話しかける人でした。
工事部の男性たちが現場に出払って事務所が静かになると、
「お茶、淹れましょうか?」
「いえ、僕がやりますよ。美咲さん、伝票の整理、大変でしょう」
と、社長自らポットを持って立ち上がる。
そういうささやかな仕草の一つひとつが、私の中の「女」の部分を少しずつ、目覚めさせていきました。
同時に、私は自分に言い聞かせてもいました。
(ここは職場。私は四十代の主婦。あの人は社長。
この気持ちはただの一時的な高揚で、恋なんかじゃない)
そうやって、自分をなだめながら。
飲み会が開かれたのは、私が勤め始めて一ヶ月ほど経った頃。
新しいパートの歓迎会という名目で、駅前の居酒屋に集まることになりました。
ビールの泡、焼き鳥の香り、ざわついた笑い声。
工事部の若い子たちがくだけた冗談を飛ばし、私は「奥さん」という立ち位置を求められることもなく、ただ一人の女性としてその輪に混ざっていました。
「美咲さん、ワインいけるんですね」
グラスを重ねるたび、一真さんとの距離は、言葉にならない何かを少しずつ削り取っていくようでした。
終電が近づき、次々と席を立つ同僚たち。
最後に残ったのは、私と一真さん、そして会計を任された経理の男性だけ。
「タクシー、拾いますから。方向どちらでしたっけ?」
彼に訊かれ、家の最寄り駅を告げると、
「じゃあ、僕と同じ方向ですね。一緒に乗っていきましょう」と自然に言われました。
その瞬間、胸のどこかで、かすかな予感がしゅるりと目を覚ましたのを、私ははっきりと感じました。
タクシーの後部座席。
窓の外で、街のネオンが滲んで流れていきます。
「いつもは、どんな一日なんですか?」
「朝、お弁当作って、家族送り出して…それからここに来て。
帰ったら夕飯の支度をして、洗濯を畳んで…そんな感じです」
「忙しいですね。休む時間なんて、ほとんどないじゃないですか」
「慣れました。そういうものなんだって、いつの間にか」
そう答えながら、私はふと、
(いつの間にか、女である時間は、どこにいってしまったんだろう)
そんな思いを飲み込んでいました。
やがてタクシーは、私の知っているはずの道から、静かに外れていきました。
見慣れた住宅街ではなく、ぼんやりとした灯りが点在する、少し外れた通りへ。
フロントガラスの先に、赤と白のネオンが浮かび上がります。
「休憩」「ご休憩」「ご宿泊」と、やわらかすぎる言葉たち。
心臓が、耳のすぐそばで鳴っているみたいでした。
「……え?」
思わず漏れた小さな声に、一真さんが、落ち着いた声で運転手に告げました。
「ここで大丈夫です」
その瞬間、私の日常は、静かに別の線路へと切り替わっていたのだと思います。
【第2部】ラブホテルで年下社長に壊された「妻」の輪郭──痛みから快感へと変わっていった禁断の夜
タクシーを降りた途端、夜の空気がひんやりと肌にまとわりつきました。
目の前には、安っぽい装飾のラブホテル。
いつかテレビの中で見たことのあるような、どこか現実感のない光景。
「帰りのタクシー代、僕が出しますから。少しだけ、時間もらっていいですか」
その言葉は、不思議なほど穏やかで、
「断る」という選択肢を、私の手からそっと抜き取ってしまうような優しさを帯びていました。
(だめ。だめに決まってる。私は妻で、母で、ただのパートで…)
頭ではいくつも言葉を並べるのに、足は彼の後をついて階段を上っていく。
ヒールの踵が、コツ、コツ、と乾いた音を立てるたびに、
背中を撫でるような高揚と、底冷えするような罪悪感が交互に押し寄せてきました。
部屋に入ると、ふわりと甘い香りがしたような気がしました。
丸いベッド、派手な照明、鏡張りの壁。
どこか滑稽で、どこか舞台のセットのようで、でも、その真ん中にいるのは紛れもなく私でした。
「嫌だったら、言ってくださいね」
ジャケットを脱ぎながら一真さんが言います。
その一言が、かえって逃げ道を塞ぐようで、私は微笑んで首を振りました。
「……嫌じゃ、ないです」
声に出した瞬間、自分で自分に許可を出してしまったことに気づきました。
もう、戻れない。
唇が重なったとき、驚くほど自然に、身体は彼を受け入れていました。
久しく味わっていなかった、誰かの体温。
夫とは違う、少し香水の混じった匂い。
喉の奥から漏れる息と、布団が擦れる音。
「綺麗ですね、美咲さん」
いつの間にか解かれていたブラウスのボタン。
年齢を重ねた胸元を、彼はまるで宝物を扱うように、指先で確かめていきます。
「やめてください、そんな…綺麗なんて、もう…」
「本当に、そう思ってますよ」
嘘か本当かなんて、もうどうでもよくなっていました。
その言葉が、この夜の私を正当化してくれる唯一の鍵のように思えたのです。
身体の奥まで満たされていく感覚は、恐ろしいほど鮮烈でした。
長く主婦でいるうちに少しずつ忘れていた「女」としての私が、
ベッドの上で乱暴に息を吹き返していく。
「…あ、っ…や…」
吐息が途切れ途切れにこぼれ、シーツを握る指先が震えました。
時間の感覚はあいまいになり、何度か波を越えていくうちに、
快楽と後悔が絡まり合って、どちらがどちらなのか分からなくなっていきました。
一度目の嵐が過ぎたあと、彼は私をそっと抱き寄せ、耳元で囁きました。
「もう少し、いいですか」
その声には、誘いと命令が混ざり合っていました。
私は小さく頷きながら、心のどこかで、
(ここで断れない私が、一番卑怯だ)と、冷静に自分を責めてもいました。
彼の手が、いつもとは違う場所をゆっくりと探っていく。
予想していなかった感覚に、身体がびくりと跳ねました。
「怖かったら、言ってください」
「……こわい、けど…」
瞬間、鋭い痛みが走り、視界の端に火花のようなものが散りました。
声にならない声が喉に引っかかり、私は思わず枕に顔を押しつけました。
けれど、彼はすぐに乱暴になることはなく、
ゆっくりと、呼吸を合わせるように、動きを調整していきました。
痛みと違和感が、少しずつ、
言葉にできない、いやらしい熱へと形を変えていく。
「……だめ、こんなの…」
自分でも知らなかった感覚が、
静かに目を覚ましてしまったのだと悟ったとき、
私はもう、完全にあの夜の人質でした。
「すごかったですね、美咲さん」
全てが終わったあと、乱れたシーツの上で肩で息をしながら、一真さんが笑いました。
その表情は、さっきまでの支配的な影をすっかり脱ぎ捨てた、年相応の青年のようで、
私は胸の奥がきゅうっと縮まるのを感じました。
「……こんなの、ひどい人ですね、社長」
そう言いながらも、目は笑ってしまっていたと思います。
(ひどいのは、こんな夜を許してしまった私の方だ)
そう心の中でつぶやきながら。
帰り際、タクシーに乗り込む直前、彼は封筒を差し出しました。
「今日は特別。これは、内緒の手当てということで」
覗き込むと、数え慣れた主婦の目でもわかる札束の厚み。
十万円。
その重みと、さっきまで自分の身体が味わっていた重みが、
ひとつの線でつながってしまった気がしました。
「……受け取れません、こんなの」
口ではそう言いながらも、指先は封筒をしっかりと掴んでいました。
それが、この関係の最初の「契約書」になってしまったことを、
このときの私はまだ、ちゃんとは理解していませんでした。
【第3部】トイレでの密会と一万円の封筒──「やめられない私」を知ってしまった主婦の告白
翌日から、私の日常は静かに形を変えていきました。
朝、家族を送り出し、洗濯機を回し、
いつものように設備会社の事務所へ向かう。
タイムカードを押し、伝票を整理し、電話に応対し、
お昼にはコンビニのおにぎりをデスクで食べる。
表面的には、何一つ変わっていませんでした。
ただ、一つだけ、決定的に違うのは――
従業員たちが現場へ出て、事務所に二人きりになった瞬間の、
空気の密度でした。
「美咲さん、ちょっとトイレ、付き合ってもらっていいですか?」
最初にそう言われたとき、
私は意味を理解できずに瞬きをしました。
「え……?」
「換気扇がうるさいって、工事部の子が言ってたんで。
一緒についてきてもらえます?」
そう言われてしまえば、断る理由は見当たりません。
私はメモ帳を手に取り、何となく「仕事」の顔を整えながらトイレへ向かいました。
男性トイレと女性トイレの間の、狭い共用スペース。
そこで立ち止まった瞬間、背後からそっと腕を取られ、
私は静かに、個室の中へと押し込まれました。
「ここなら、誰も戻ってこないですから」
鍵が閉まる、乾いた音。
狭い空間に二人分の呼吸が満ちていきます。
「……社長」
「一真でいいですよ。ここでは」
名前を呼び捨てにすることも、
狭いトイレの中で抱き寄せられることも、
昨日までの私には想像すらできなかったことでした。
そこから先の時間を、私は今でもうまく言葉にできません。
けれど、ひとつだけはっきり覚えているのは、
「これはもう、仕事ではない」という確信と、
「でも、私はこの時間を求めてしまっている」という、
どうしようもない事実でした。
ひとしきり落ち着いたあと、
彼はポケットから、折りたたんだ小さな封筒を取り出しました。
「これ、今日の分です」
中には、一万円札が一枚。
飲み会の夜の十万円とは違う、
ずっと現実的で、ずっと生活に直結する金額。
「……毎回、こうやって?」
「迷惑ですか?」
「迷惑……じゃ、ないです。でも」
迷惑じゃないと言った瞬間、
私の中で何かが静かに諦めを受け入れた気がしました。
パート代よりも多い、日々の「内緒の手当て」。
封筒の枚数が増えていくたびに、
私の罪もまた、目に見える形で積み上がっていきました。
それから、トイレでの密会は「日課」になりました。
工事部の車が出ていく音が遠ざかると、
どこかで鍵がかかるように、私の胸の中にもスイッチが入る。
「美咲さん、ちょっと」
その一言で、私は妻でも母でもなくなり、
ただ彼の欲望と、私自身の渇きを満たすための存在へと、
あっさりと姿を変えてしまうのです。
最初の頃は、終わるたびに、
「こんなこと、いつまで続けるんだろう」と自分に問いかけていました。
けれど、二度目、三度目と回数を重ねるうちに、
違和感だったはずの感覚が、
私にとっての「当たり前」に書き換えられていくのがわかりました。
痛みは薄れ、代わりに、
人にはとても口にできない種類の快楽が、
背筋を撫でるようにじわじわと広がってくる。
「もう、やめましょう」と言うことは、
実はいつでもできたはずなのに。
私の口は、ただひたすらに沈黙を選び続けました。
帰り道のスーパーで、封筒から抜き取ったお札をそっと財布に移しながら、
私は、主婦としての「合理性」に寄り添う言い訳も、ちゃんと用意していました。
(これがあれば、子どもの塾代の足しになる)
(少しだけ、老後のための貯金に回せる)
(夫には言えないけど、家庭のためになっている)
でも、本当は知っています。
そのどれもが、うわべだけの理屈でしかないことを。
私がこの関係を手放せない一番の理由は――
あのトイレの狭い空間の中でだけ、
私はまだ「女」として扱われている、と感じてしまうから。
【まとめ】私は今日もトイレの鍵の音を待っている──四十代主婦が選んだ「やめられない罪」の行方
こうして文字にしてみると、
私がしていることは、とても褒められたものではありません。
年下の社長と、職場での密会。
トイレで交わされる秘密。
封筒の中の一万円。
それをパート代以上の「もう一つの収入」として受け取っている私。
家に帰れば、いつものように夕飯を作り、
「おかえり」と夫に声をかけ、
「お腹すいた」と言う子どもたちを迎える日常が待っています。
キッチンに立つ私の指は、
さっきまでトイレの個室で何をしていたのかを知っているのに、
まるで何事もなかったように包丁を動かす。
「ママ、今日どうだった?」
「いつも通り。忙しかったよ」
笑いながらそう答えるたびに、
胸のどこかが、じわりと熱を帯びます。
この関係は、いつか必ず形を変えるでしょう。
バレて終わるのか、
私の方から手を離すのか、
それとも、一真さんが突然「もうやめよう」と告げるのか。
どんな終わり方をするにしても、
ひとつだけ確かなのは――
あの夜、ラブホテルの入り口でタクシーを降りた瞬間に、
私は自分の人生の舵を、少し彼に預けてしまったのだということ。
それでも、今の私は、
「後悔しかない」と言い切ることもできないのです。
なぜなら、
あの狭いトイレの中で、鍵が閉まる乾いた音を聞くたびに、
私の中の何かが、確かに生き返ってしまうから。
妻として、母として、パートとしての私ではなく、
ただ一人の女として、欲望を持った存在としての私が――
あの瞬間だけは、堂々と呼吸をしているように感じてしまう。
それが、どれほど身勝手で、
どれほど愚かなことだとしても。
私は今日も、
事務所が静かになった午後、
心のどこかで、
トイレの鍵が閉まる音を、
そっと待っている自分を、
否定しきれずにいるのです。




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