― 誘われたのは、孤独よりも温もりだった ―
『あの夜、私の奥の奥まで、彼で満たされた』(前編)
金曜の夜。終わりの見えない帳簿の数字と、天井から照りつける蛍光灯の白い光。
私の心はその単調なリズムにすり減っていた。
──人恋しい。
けれど、それは誰かにすがりたいという弱さではなく、
ただ、静かに「誰かと在りたい」と願う、小さな渇きだった。
Eさんは、その日たまたま同じ会議資料を抱えて残っていた。
東京本社から単身赴任で来た40歳の営業課長。
スーツは地味で、髪もやや乱れていて、一見して冴えない“真面目なオジサマ”だったけれど、
口数少なく、人を咎めることもなく、ただ淡々と仕事をこなすその姿には、どこか無防備なやさしさが漂っていた。
「一人じゃ心が折れそうだったからさ……ありがとうね、残ってくれて」
彼のそんな言葉に、私は思わず微笑んでいた。
──そう、たったそれだけだったのに、心の奥に小さな火が灯った気がした。
残業を終えたあと、彼に誘われて入ったのは、小ぢんまりとした炉端焼きの店。
炭火の香ばしさと、立ち上る湯気。
焼き魚の皮が弾ける音、日本酒のグラスがカチンと触れ合う音。
「一人の夜って、妙に寒いよね」
「……わかります。部屋が広すぎるんです、ひとりだと」
私の言葉に、彼は少しだけ表情を曇らせ、そして静かに笑った。
「東京の家じゃ、子どもたちがうるさいくらいだったんだけどね」
「……あ、すみません、変なこと言って」
「いや、いいんだよ。たまに……誰かと飲めるのは、救いなんだ」
グラスの向こうの彼の笑顔が、ほんの少し色っぽく見えたのは、酔いのせいか──それとも。
二軒目のバーで飲んだギムレットの苦味と、氷の音。
彼が話す家族の話には、どこか“遠い人”の香りがして、
それが逆に、私の孤独に寄り添ってくれる気がしていた。
バーを出て、夜風が火照った頬を冷やしてくれる頃。
私は、気づけば彼の腕に、自分の腕をそっと絡めていた。
抵抗はなかった。むしろ、そのささやかな接触に、心が安堵していた。
沈黙のまま歩いた石畳。
気づけば、ホテル街の灯りが足元を照らしていた。
誰も、何も言わなかった。
けれど、私たちは自然とそのひとつの建物に吸い込まれていった。
部屋のドアが閉まると、静けさが舞い戻る。
彼は、少し照れくさそうに私を見つめて、「先にシャワー、どうぞ」と言った。
湯気に包まれたバスルームで、私は鏡越しに自分の肌を見た。
白い湯気の中で、ほてった頬、上気した胸元。
身体の奥の、久しく感じていなかった疼きに、自分で驚いていた。
──私、こんなにも、触れられたいと思ってたんだ。
タオルで髪を拭きながらベッドに戻ると、彼が冷たい水を差し出してくれた。
「ありがと」と微笑みながら受け取ったコップの縁に、私の唇が触れる。
そしてそのとき、彼が私の手をそっと取った。
「……エリコちゃん、ずっと綺麗だと思ってたよ」
その声のぬくもりに、心の底がじんわりと熱くなる。
彼の唇が私の唇を塞ぐと、全身に火がついたようだった。
やさしく、でも深く舌が差し込まれ、私は自然と目を閉じて、彼の呼吸に身を委ねた。
バスローブの前をゆっくり解かれ、ふたつの乳房が露わになる。
乳首に唇が触れたとき、身体が自然にのけぞった。
「ん……っ」
自分でも驚くほど甘い声が漏れてしまう。
彼の指が、下着の中に伸びてくる。
指先が、まだ触れていない柔らかな丘をなぞるだけで、そこからじわじわと熱が広がっていく。
「……お願い、もう少し……中に」
言葉にした瞬間、羞恥が頬を染める。
でも、止まらなかった。
私のなかの女の部分が、彼を求めていた。
彼の指が、ゆっくりと、花の奥へと沈んでいく──
その瞬間、膣の奥がぎゅっと締まり、全身がふるえた。
「はぁっ……あぁ……っ、ダメ……感じちゃう」
私は、もう抗えなかった。
ただ、抱かれたい。貫かれたい。
渇きを癒すのは、優しさではなく、彼の熱だと知っていた。
― 快楽の波に沈み、女になる ―
『あの夜、私の奥の奥まで、彼で満たされた』(後編)
彼の指が、私の奥へゆっくりと沈んでいく。
濡れた粘膜が、初めて触れる他人の指を、拒むどころか歓びに震えていた。
「……こんなに、柔らかくて……もう、溢れてる」
彼の呟きに、私は脚を閉じたくなった。
けれど、羞恥の裏に疼きが勝り、自然と太ももがほどけていく。
彼は私の耳元に顔を寄せ、低く囁いた。
「もっと気持ちよくなってほしい。全部、忘れるくらいに」
その声だけで、また奥がきゅんと締まった。
私のバスローブをそっと肩から滑り落とすと、彼は身体を起こして服を脱ぎ始めた。
シャツの下に隠されていた筋肉と、驚くほどに勃起した彼の中心が、私の視線を奪う。
──思わず息をのんだ。
逞しく、太く、大きく……それは私がこれまでに見たどんなものよりも、圧倒的だった。
「……触れて、いい?」
小さく尋ねると、彼はうなずいた。
私はゆっくりと膝をつき、その熱を手のひらで包みこむ。
ぬくもりと硬さ、脈打つ感覚。
手を動かすたび、張り詰めた皮膚がピクリと跳ねた。
唇を添えた瞬間、彼の全身が微かに震える。
「……ん、気持ちいいよ…君の口、やばい…」
舌先で先端をなぞり、ゆっくりと喉の奥へ──
それは喉奥まで届く重みと存在感で、息苦しいのに、なぜか身体の奥がうずいた。
吸い上げるように音を立てながら、私は彼の自信を飲み込んでいた。
彼の太腿がぴくりと震え、髪を掴む指先に力がこもる。
「……入れたい」
彼の声はもう、掠れていた。
ベッドに仰向けになった私は、脚をそっと開く。
彼が私の脚の間に顔を埋めたとき、甘い恐怖と興奮が入り混じった。
「…綺麗だよ」
柔らかく開かれた花びらに、彼の舌がふわりと触れる。
唇が、花芯をやさしく包み込むと、思わず声がこぼれた。
「んっ…あっ……っ、そんな……」
彼の舌は執拗に、つぶてを探り、転がし、吸い、押し潰す。
それは快感というより、甘美な支配だった。
腰が勝手に浮き、頭の中が白くなっていく。
「……ダメ、イく……っああぁっ…!」
身体の中心から爆ぜるような波に、私は溺れた。
そして、彼は私の上に身体を重ねる。
「あったかい……入れるよ?」
頷いた瞬間、巨きなそれが、ゆっくりと、私の奥へ沈んでいった。
「ん……っ、あ……っ!」
濡れた音が響き、ベッドが軋む。
私の内側が、彼の熱で貫かれるたび、快感が背骨を駆け上がった。
「……君、すごく締まるね……気持ちいい」
彼はゆっくりと、奥まで。
深く、深く、まるで子宮の奥を探られるようだった。
「もっと……もっと欲しいの」
自分でも信じられないほど淫らな声が漏れた。
彼が私を後ろ向きに抱え直す。
四つん這いの姿勢で、再び突き上げられた瞬間──
私はまた、違う種類の快感に目を見開いた。
「んっ、奥っ……当たってるっ…! あぁ、すごい、っ!」
体の奥が押し上げられ、全身が甘く痙攣する。
私の中が、何度も何度も、彼の巨きな塊に打ちつけられ、波のように絶頂が襲ってくる。
最後は、彼の上に私が跨った。
自らの手で、ゆっくりとそれを導き、騎乗位で彼を迎え入れた。
腰をゆっくりと回す。
自分で動くたび、内側をこすり、突き上げるような感覚に酔いしれる。
「私、また…イきそう……っ!」
何度目かの絶頂を迎え、私は泣きながら彼の胸に崩れ落ちた。
──静けさ。
身体を投げ出したまま、彼の腕の中で息を整える。
彼が髪をやさしく撫でてくれるたび、私の中の罪悪感も、少しずつ溶けていった。
「……寂しかったの、ほんとに」
「俺も。ずっと、誰かを抱きしめたかった」
言葉の裏には、愛ではないけれど、確かに温もりがあった。
その夜、私たちは三度交わり、私は五度、波に呑まれた。
奥の奥まで彼に満たされ、身体も心も空っぽになって、初めて私は静けさの中に眠った。
そして今も、週に一度、誰にも知られない部屋で、私は彼の熱に身を沈めている。
罪だと分かっていても、この悦びを手放す勇気は、まだ──ない。



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