親友と一線を越えた夜。彼のすぐ隣で、私は声を殺して溶けた

はじめに告白しておくけれど、私はとても弱い人間だと思う。強がって生きてきたし、自分の気持ちに嘘をつくのは得意なつもりだった。でも、その夜の私は、嘘をつくことも、強がることもできなかった。

彼、悠真(ゆうま)とは高校のときから付き合っていた。私より背が少し低くて、目元が女の子みたいに優しくて、でもすごく不器用で、愛おしくなるような人だった。

大学生になり、私たちは別々のキャンパスに通うようになって、会う頻度は少し減ったけれど、それでも変わらず愛し合っていると思っていた。

――その夜までは。

悠真の親友、亮介(りょうすけ)は、まるで彼と正反対の存在だった。高身長で目が合うと少し睨まれているような錯覚を起こすほど鋭い視線。口数は少ないのに、その場の空気を掌握してしまうような男。

私は、彼の視線をずっと無視してきた。けれど、無視できていたわけじゃない。ただ、見ないふりをしていただけだった。

その夜、悠真と亮介が私の部屋に泊まりに来ることになった。久々に3人で飲もうという話になり、私は冷蔵庫に並べたワインを見て、どこか胸の奥がざわつくのを感じていた。

3人でソファに座り、グラスを重ねた。悠真はすぐに赤くなり、眠気に負けてベッドへと倒れ込んでいった。

私はリビングにひとり残された。

いや、ひとりじゃなかった。

「……もう寝た?」

亮介の声が低く響く。私は頷いた。

「可愛いな、あいつ。……おまえが笑うと、あいつも嬉しそうにするもんな」

何気ない言葉。でも、私はその言葉に息が止まりそうになった。

「ねえ」

彼の声が、すぐそばで落ちる。目を上げると、いつの間にか亮介は隣に座っていて、その距離の近さに、心臓が跳ねた。

「おまえ、気づいてた?」

「……なにを?」

「俺が、おまえをずっと見てたこと」

私の喉が音を立てて鳴った。

触れられていないのに、全身が火照っていた。彼の視線が、言葉が、私の内側をなぞるように這ってくる。

逃げなきゃと思った。でも、そのまま肩を引き寄せられ、唇が触れ合ったとき、私は、もう何も考えられなくなっていた。

キスは、深くて、熱かった。唇の奥で舌が絡まり、甘く湿った音が部屋に響く。背筋がぞくりと震える。悠真の優しいキスとは違った。強く、支配するようなそれに、私はなぜか安堵を感じていた。

ブラウスのボタンがひとつずつ外され、露わになった胸に、亮介の指が触れる。指先が肌を滑り、乳首に触れたとき、私は声を飲み込んだ。

「感じてるんだろ」

囁かれるたびに、罪悪感と欲望がないまぜになって、私は形のない波に呑まれていった。

――この先にあるものを、私は知っている。

でも、止められなかった。

スカートの裾がめくられ、太ももを這う指先が、呼吸と心音を絡め取ってゆく。ショーツの上から撫でられた瞬間、ビクンと腰が跳ねた。もう濡れている。そんな自分に嫌悪と興奮が混ざり合う。

「……中まで濡れてるな」

呟く彼の声が低くて、ゾクリとする。

私は何度も、自分の名前を呼ぶようにして「だめだよ」と呟いた。けれど、その声はもう彼には届いていなかった。

ショーツをずらされ、指がそっと入り込む。ぬるりと入ってきた異物感に、私は体を震わせながら、思わず脚を開いていた。

愛しているのは悠真だった。心の中で何度も叫んでいた。

でも、身体は違う答えを出していた。

亮介はそのまま私の前に膝をつき、そっと私の足を開いた。

「声、抑えろよ。隣で寝てるんだから」

その言葉で、私は現実に戻りかけた。

……そうだった。悠真は、この扉の向こう、すぐそこにいる。

なのに。

私はソファに背を預けたまま、亮介の頭を両手で抱えて、自ら彼を迎え入れていた。

舌が、唇が、私の奥を貪るように動く。そこにある熱と湿り気が私の中に電流のように走って、何度も震えが走った。

「だ、だめ……そこ……っ」

自分でも抑えられない声を、唇を噛んで必死に飲み込む。けれど、堪えきれず、震えと共にかすれた喘ぎがこぼれてしまう。

扉一枚向こうに、大好きな人がいるのに――私は今、彼の親友の舌に溺れている。

クライマックスの瞬間、私は何も見えなくなっていた。

何に泣いていたのか、自分でもわからない。ただ、熱くて、切なくて、どうしようもなかった。

行為のあと、静かな部屋に彼の寝息が聞こえていた。

私はベッドに眠る悠真の横顔を見つめながら、タオルケットを肩まで引き寄せた。

亮介は何も言わなかった。ただ、そっと私の頬にキスをして、服を整え、部屋を出ていった。

朝、目を覚ますと、悠真は起きていて、いつもと変わらぬ笑顔を私に向けた。

「昨日は楽しかったね」

私は笑顔を返すことができなかった。

その瞳に何が映っていたのか。 私には、もう、確かめる勇気がなかった。

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