結婚して七年。
夫婦としての役目はきちんと果たしていた。
世間的には「仲のいい夫婦」に見えると思う。
けれど、私たちのあいだには、もう長らく触れ合いも、求め合うこともなかった。
夜、背中を向けて眠る習慣がついてしまったのは、いつからだっただろう。
彼の体温では、もう私は温まれない。
ぬるま湯に溶けるようなぬるい日常のなかで、私は、何かを諦めるように生きていた。
そんなある日、職場の同僚である村田さんがぽつりと言った。
「今度、家で飲まない? 妻も君のこと気に入ってるし、夫婦ぐるみでさ」
うなずいたのは、退屈を嫌った私の心の奥の獣だった。
何かが起きる予感が、していた。
期待なんてしていないと言いながら、私は口紅を深く引いていた。
彼らの家は郊外の静かな住宅地にあった。
玄関に出迎えてくれたのは、村田さんの奥さん――理恵さん。
清楚な服の下に潜む、密やかな色気。
少し目を伏せる癖のある、柔らかく人懐こい笑顔。
女としての余裕を感じさせた。
「ようこそ。気軽にね」
理恵さんが差し出したワイングラスを受け取ったとき、私は気づいていた。
彼女の笑顔の奥には、明らかな”仕掛け”があると。
ワインは次々に開けられ、時間が経つにつれ、私たちはお互いの性生活について冗談交じりに話すようになっていた。
「最近、全然で……触られることもないの。もう女として終わってるのかも」
理恵さんが苦笑すると、村田さんがふと口を開いた。
「――じゃあ、試してみない? 夫婦交換」
沈黙が流れた。
夫も、私も、驚いて動けなかった。
けれど、その沈黙の中に潜む熱は、たしかに、あった。
「冗談でいいの。ね、やってみるだけ」
理恵さんが夫の手を取った。
彼は、私を見ることもせず、そのまま立ち上がった。
唖然としながら見送る私に、村田さんが低く言った。
「彼女の声、聞いてごらん。……君の中の“女”が目覚めるよ」
そうして、寝室の扉が閉まったほんの数分後――
確かに聞こえた。
私の夫に抱かれる、理恵さんの喘ぎ声が。
くぐもった声が、壁越しに滲むように広がり、私は息を呑んだ。
心がざわめく。けれど、身体はもっと正直だった。
潤み、疼き、なにかがこじ開けられていくのを感じた。
「ねえ、俺の奥さんの声、聞いて興奮してる?」
村田さんが耳元で囁く。
その低い声に、びくんと身体が反応する。
私は自分が、すでに妻でも母でもなく、“女”になっていることを、否応なく思い知った。
彼の手が私の腰に触れたとき、私は拒まなかった。
どころか――期待していた。
「和室、行こうか」
そう言って引かれた手の先、私は畳の上に静かに身を横たえた。
襟元がほどかれ、下着が撫でられ、熱い吐息が胸元に降りてくる。
ゆっくりと、丁寧に。
けれど、そこにはあきらかな“狙い”があった。
そして――彼がズボンを脱いだ瞬間、私は息を止めた。
闇の中で膨らむ異形の影。
彼のそれは、信じがたいほど巨大だった。
雄の証。その暴力的なまでの存在感に、私は本能が震えるのを感じた。
「怖い?」
囁かれて、私はかすかにうなずいた。
けれど、身体は、濡れていた。
彼がゆっくりと押し入ってきた瞬間、
自分の身体が裂けるような衝撃に襲われた。
「……っ、あぁ……」
こんなに奥まで触れられるなんて――
脳まで届くような快楽が、波のように打ち寄せてくる。
畳の上で腰を浮かされ、彼の動きに翻弄されながら、私は必死に声を押し殺した。
「声、出していいよ。……向こうも、聞こえてるし」
そう言われた瞬間、私はもう、何かが切れた。
喘ぎ、震え、彼の奥へ奥へと迎え入れていく。
ぬるりと擦れあう音が、生々しく部屋に響く。
村田さんの腰の動きは、どんどん深くなり、激しさを増していく。
汗が額をつたう。
首筋を舐められ、耳を甘く吸われ、
彼の巨根が奥の奥まで突き上げてくるたびに、
身体は勝手に跳ね、しがみつき、絶頂へと導かれていった。
「ダメ、だめっ、こんなの……!」
息もできないほどの快楽が、爆発した。
子宮の奥が収縮し、爪が彼の背を引っかいた。
彼は、私の名を一度も呼ばないまま、
そのまま深く果てた。
押し寄せる波に飲まれながら、私は感じていた。
“自分が変わってしまった”ことを。
こんなにも深く満たされて、私はもう、知らなかったふりはできない。
しばらくして静けさのなか、隣の寝室からも音が止んだ。
村田さんがそっと私の髪を撫でた。
その指先が、どこまでも優しくて、私はなぜか泣きたくなった。
あれから何度か、私たちは夫婦ぐるみで“会っている”。
表向きは普通の友人関係。
けれど、夜が来れば、あの夜の続きを繰り返している。
夫も、理恵さんと何をしているのか、聞かない。
私も、何も言わない。
でも、あの夜から――
私の中で、何かが確かに変わったのだ。
それは罪かもしれない。
けれど、私は、もう一度“女”として、誰かに求められる悦びを知ってしまった。
あの巨根が、私の奥で私を変えたことを――
私は、忘れない。



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