【第1幕】濡れていない心が、ゆっくりと解かれていく場所
「少しだけ、ほぐれたくて——」
そう思ったのは、たぶん本気じゃなかった。
ただ、誰にも言えない疲れが、肌の奥に沈んでいて。
私は、ビルの階段を下りる。静かな地下。隠されたような扉。
名前を告げると、男性スタッフがすぐに立ち上がった。
三つある扉のうち、一つだけが静かに開いていて。
細長い廊下の奥、パーテーションで仕切られたその部屋には、
シングルベッドと二人掛けのソファ。控えめな照明。静かに震える空気。
「こちらへどうぞ」
彼は、私の視線を逸らさぬまま言った。
下着でも構わないと、優しく。
私は、シャツを脱ぎ、キャミソールの肩紐をそっとずらす。
スカートのホックを外し、ウエストを緩める。
うつ伏せになると、隣室から女性の声が聴こえてきた。
「あ、ああ……気持ち、いい……ああ」
私は驚いた。でも、同時にその声が空気を柔らかくする。
隣で誰かが感じている——
そう思うと、不思議と、身体の力が抜けていった。
彼の手が、私の背中に触れた。
その指が、肩甲骨の間に、震えるようなバイブを滑らせる。
ぴたりと貼りついた下着の上から、キャミソールの隙間を縫って、胸の横に指が入ってきた。
揉み上げるわけじゃない、でも、触れている。
「あ、……」声が漏れそうになる。
背中の振動が、胸の奥でじんわりと響く。
——まだ、性感ではない。けれど、
なぜか、濡れていないはずの心が、
静かに、とろけ始めていた。
【第2幕】奥に潜んでいた私が、ゆっくりと目を覚ます
「気持ちよいところ、あれば、教えてくださいね」
彼の声は低く、くぐもっていた。
私はうなずいた。もう、羞恥よりも、奥にある何かが疼いていた。
スカートの中へ、彼の手がゆっくりと滑り込む。
下から、恥骨とベッドの隙間に手を差し込まれ、
指が、パンスト越しに、私の股間を優しく持ち上げた。
——その瞬間。
ブルブルと、震える感触が、割れ目の上を這う。
パンスト越し。スカート越し。それなのに。
「あ……あ、ああ……」
私の中の何かが、きしむように反応する。
さらに、彼の手が太腿の内側へ。
パンストの中に指を潜らせ、股間を撫でられると、
身体は、明確に「女」になっていくのを感じた。
隣の部屋からは、また違う女性の声——
「イイ……イッちゃう、あああっ」
知らない誰かの絶頂が、私の鼓膜に焼きついていく。
その熱が、なぜか、私の膣奥まで届く。
「少し、パンスト、下げてもいいですか」
「……はい」
気づけば私は、彼に“許可”を与えていた。
彼の手が、私のパンストと下着を太腿まで引き下ろす。
湿った粘膜に、直接ブルブルが触れる。
指が、ビキニの上から、クリトリスをかすめる。
「ひっ……んっ、あ、ああ……」
こんな風に、誰かに触れられたのはいつ以来だろう。
いや、こんなふうに、“感じてしまった”のは。
私の下半身は、知らぬ間に、完全に開いていた。
音もなく、濡れながら——
【第3幕】指の奥、許されたように果てていく
そのあとの時間は、もう、うまく思い出せない。
ただ覚えているのは、彼の指に付けられた、冷たい潤滑クリーム。
私の下着の奥へ、指が沈んでいくときの、ぐちゅりとした音。
「ううん……っ、あっ、ああっぁ……」
キャミソールの胸を弄られながら、
股間には、グローブを嵌めた彼の指が二本、
私の中で、ゆっくりと回っていた。
私は、もう声を抑えられなかった。
唇を噛み、腰を浮かせ、
濡れた太ももがベッドに貼りつく感覚さえ、快楽に変わっていた。
「……もう、やだ……イキそう……」
でもその言葉さえ、甘く震えながら零れていく。
最後の1分。
ゴムに覆われた“それ”が、ぬるりと私の中に挿し込まれる。
スッと、入った。
何の抵抗もなく、まるで私の身体が、待っていたみたいに。
そして——
「ひゃあ、っ、あ、ああああ……っ」
吐息の裏返った瞬間。
私は静かに果てた。
声は掠れ、意識の輪郭がぼやける。
下腹部に波のような余韻が残る。
誰かの手に委ねるように、
自分の“渇き”を、受け入れてしまった。
——私は、満たされていた。
欲ではなく、赦しによって。



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