【第1幕】会社の会議室で交わる視線と沈黙の熱
昼休み明けの会議室。
エアコンの効いた無機質な空気のなかで、誰の言葉も、私の耳には届いていなかった。
目の前には、資料を捲る27歳の営業主任・朝倉くん。
涼しげな白シャツの胸元には薄く汗がにじみ、ボールペンを指先で弄ぶしぐさがやけに艶かしく映った。
それだけで、私の太ももが少し内側へと寄る。
そんな自分に戸惑いながらも、目が離せなかった。
──彼は、私より10歳も若い。
だけど、夫には感じたことのない“熱”を、言葉の端々や視線の向こうに、私は確かに感じていた。
「この部分、先週と数字違ってませんか?」
何気ないその指摘に、私は息を呑んだ。
声のトーンが少し低く、会議室の静寂に溶け込むように響いたから。
誰も気づかないと思う。でも私だけは、彼の声が胸の内側に触れたのを感じてしまっていた。
──なんで、こんなところで。
なんで、こんな“会議室”で、濡れてるの…?
スカートの内側、下着に触れてはいないはずなのに、布地が肌に貼りつく感覚。
呼吸が浅くなって、ペンを持つ手に力が入らない。
私は資料から目を離し、思わず彼の横顔を見てしまった。
整った輪郭、唇の湿り気、喉の陰影。
「若い」というだけでは表現できない、獣のような男の匂いがする──。
会議が終わる頃には、もう誰の発言も聞き取れなくなっていた。
ただ、私の中で何かが“目を覚ました”のを、明確に感じていた。
会議室を出た瞬間、私は後ろから名を呼ばれた。
「佐伯さん、今日…このあと時間ありますか?」
「え?」
ふいに、胸がきゅっと音を立てた気がした。
「送りますよ。外、暑いですし」
「……うん。じゃあ、ちょっとだけ」
言葉を選ぶ余裕はなかった。
体のどこかが、もう“決めて”しまっていたのだと思う。
ビルを出た瞬間の熱風の中、私の脚は震えていた。
なのに、彼と並んで歩く私の脳裏には、タクシーではなく──ホテルのドアが浮かんでいた。
汗のにじんだ背中、ブラに貼りつく肌。
それが“誰かに脱がされるかもしれない”という予感だけで、股間が疼いていた。
【第2幕】触れられるたび、知らない女にされていく
タクシーの中、私たちは一言も交わさなかった。
彼の隣に座るだけで、シートの振動が太ももから奥へと伝わり、下着の中の温度を上げていくのが分かった。
「佐伯さん…」
名前を呼ばれるだけで、背筋を撫でられたように身体が震える。
夫に名前を呼ばれても、こんな反応をしたことはなかった。
ホテルの部屋に入ると、冷たい空気が火照った頬を撫でる。
ドアが閉まった瞬間、静寂の中に鼓動だけが響き始めた。
「嫌なら…止めます」
彼がそう言ったとき、私は首を横に振っていた。
自分の意思ではなかった。もう、身体が決めてしまっていた。
キスは、柔らかいのに深かった。
唇を重ねるたび、息が絡み合い、喉の奥が熱を持つ。
舌先が触れただけで、腰が勝手に動いてしまう。
「こんなに…震えてる」
彼の手が、私の二の腕から腰骨、太ももまでゆっくりと這い、スカートの裾をめくり上げる。
素肌に触れた指先が、私の呼吸を奪っていく。
夫と違うのは、焦らないことだった。
ただ指を当て、撫でる。触れないギリギリの距離で、何度も何度も、焦らし続ける。
それが、たまらなく心地いい。
気づいたときには、私の下着は彼の指先で濡れて透けていた。
「…すごい、濡れてますね」
耳元に低く囁かれただけで、腰が震えた。
ベッドに仰向けにされると、彼は腰のあたりに頬を寄せ、まるで匂いを確かめるように、ゆっくり息を吹きかけた。
「や…っ」
その吐息だけで、心臓が跳ね、奥がきゅっと締まる。
舌が触れた瞬間、私は声を殺せなかった。
「…あ、ああ…だめ…そんなの…」
舌先が花びらの縁をなぞり、指が太ももを優しく広げる。
すくうように、舐めて、吸って、かき回す。
私はベッドのシーツを握りしめ、身体を弓なりにしていた。
「もっと、感じたいですか?」
息のかかった囁きが、胸の奥まで侵入してくる。
「…うん、もっと…」
自分で言ってしまったことに、頬が熱くなる。
彼の指がひと差し、奥へと沈んだ。
「──っ!」
小さな叫びが漏れた。夫では届かなかった場所に、彼の指が迷いなく触れてくる。
奥を撫でられるたび、世界が白く滲んでいく。
自分が女であることを、今さらながら思い知らされる。
【第3幕】名前を忘れるほど、女にされていった夜
「挿れてもいいですか──」
そう問われたとき、私はもう頷くことすらできず、シーツの上で足を震わせながら、ただ腰を浮かせていた。
「お願い…お願いだから……」
自分の声が誰のものかも分からなかった。
喉から漏れ出る吐息は、理性を持たないただの“雌”の声だった。
そして──
ゆっくりと彼が入ってきた瞬間、私は心のどこかで何かが“壊れる”音を聞いた気がした。
「っ…はぁ、う…あ、あ……」
夫のものでは感じなかった“深さ”に、脳が焼けるような衝撃。
奥を満たされるたびに、感情の断片が押し流されていく。
「やば…すごい…締まる…」
彼の声が熱を帯びる。
でも、それすらも自分とは関係のない遠い世界のことのようだった。
私はただ、波に飲まれ、腰を這わせ、喉を震わせることしかできなかった。
正常位のまま、脚を抱えられ、奥を突き上げられる。
濡れた音が部屋に響き、ベッドがきしむたび、私の内側が悦びの水音であふれ出す。
「もっと、ください…壊して……」
もう誰が聞いているわけでもないのに、そう叫んでいた。
彼が私を持ち上げ、後ろから抱きしめるようにして、体位はバックに変わる。
頬を枕に押しつけられ、背中を撫でながら、
彼は私の中を愛撫するように突き上げてきた。
「あっ…だめ、ああ…そこ…そこ…」
何度目か分からない絶頂が、また来る。
ビクビクと震える腰が、自分でも止められない。
“感じる”という言葉では到底追いつかない。
これはもう、“奪われる”という感覚に近い。
騎乗位になった私は、上から彼を見下ろしていた。
汗で濡れた胸元、見開いた目、興奮で開いた唇。
下から突き上げられるたび、自分の中が伸び、広がっていくのを感じる。
「……私、まだ…もっと欲しいの……」
それが最後の理性だった。
自分から腰を使い、回し、打ちつけ、濡れた音を鳴らしながら、
“女”という役割に没頭する快楽の中で、私は完全に壊れた。
果てたあと──
私は汗と快楽に濡れたまま、彼の胸に頬を預けていた。
「すごかった……」
その呟きが、彼からなのか私からなのか、もう判別できなかった。
静かな夜の部屋に、まだ残る私の甘い声の残響。
脚の間を這う余韻の震え。
喉の奥に残る、彼の熱い吐息。
すべてが、記憶ではなく**“身体”に刻まれていた。**
「……また、会ってくれますか?」
彼の声に、私はそっと微笑んだ。
夫のことを思い出したのは、それからずっと後のことだった。
でももう、あの人の指では、私は濡れないと思った。



コメント