「見られたい。それが、私の始まりだった。」
文・美咲 さつき(仮名・38歳)
「女」としての私は、いつから眠ってしまっていたのだろう──
気づけば、夫としか交わらない毎日は、淡泊で、義務のようで、肌と肌が触れても何も感じない夜ばかりだった。
夫は穏やかで真面目。家族としては申し分ない。でも、“女”として私を見てくれる視線は、もう何年も前に失われていた。
けれど、私の奥底にあった欲望は、眠ったまま死んでなどいなかった。
ある夜、鏡の前でブラウスを脱ぎかけたとき、自分の胸の輪郭にハッとした。
「ああ、まだ私、女なんだ……」
その瞬間、**「誰かに、今の私を見てほしい」**という衝動が走った。
最初は小さな遊びだった。
ノーブラでカフェに行く。エレベーターで少し脚を開く。公園のベンチでスカートをずらす。
見られるかもしれない──その緊張と期待が、身体の奥をざわつかせる。
ある日、図書館で、20代くらいの男性がふと目をやった瞬間、私の太ももが微かに震えた。
スカートの奥、黒いTバックがうっすらと見えるように膝をずらしてみた。
視線が戻ってくる。喉が乾く。心臓が跳ねる。
その夜、私は鏡の前でひとり、声を押し殺しながら果てた。
「見られたい──もっと、もっと深くまで」
彼に出会ったのは、偶然入ったバーだった。
黒のタイトスカートに、透ける白のブラウス。下着はつけていなかった。
ハイチェアに座ると、太ももがぐっと浮き上がる。横から覗こうと思えば、すべてが見える。
「……ひとりですか?」
低く、落ち着いた声が隣から聞こえた。
見上げると、40代後半くらいの男性。落ち着いたスーツ姿。瞳が獣のように静かに光っている。
私はうなずくだけで、グラスに口をつけた。
「その格好……誰かに、見せたいの?」
彼の一言で、身体中の血が一気に沸き立った。
その夜、私は彼にすべてを見せた。
ホテルの部屋に入ると同時に、私はコートを脱ぎ捨てた。
下は何もつけていなかった。
スカートの裾をつまみ、ゆっくりと上げていくと、濡れ始めた秘部が露になる。
彼の視線が、舐めるように這う。
私はそのままベッドに腰を下ろし、脚を開いた。
「ねえ、見て……こんなになってるの……誰にも触れられてないのに」
彼がゆっくりと近づいてくる。目を離さずに、私の膝の間に顔を埋める。
舌が、花びらの内側をなぞり、粒を吸う。
「……んっ……だめ……そこ……あぁっ……!」
私は彼の頭を押さえ、腰を揺らした。
全身の神経が集中する。吐息が熱い。喉が震える。
「イかせて……見てるだけで、もう……イきそうなの……」
彼は顔を上げ、自分のものを取り出す。
怒張し、脈打つそれが、私の目の前で硬さを誇示していた。
私は無意識に脚を開き、指で自分の中をなぞった。ぬるりと音がして、ベッドに染みが広がる。
彼がゆっくりと腰を沈め、熱がじわりと入り込んでくる。
「……っ、入ってる……深く……」
私は彼の背中に爪を立てた。
「見て、私……あなたのを締めつけてる」
恥ずかしい言葉が口を突く。
彼は私の腰を掴み、奥を叩くように突き上げる。
ぱんっ、ぱんっ、と濡れた音が部屋に響く。
「声、我慢しないで」
そう言われた瞬間、声がこぼれる。
「あっ、あぁ……もっと、見てて……私、全部さらけ出してるの……」
ベッドの上で、私の身体が上下に揺れるたび、胸が跳ね、太ももが震える。
汗が滴り、髪が顔に貼りつく。
でも、彼は一瞬たりとも目を逸らさない。
その視線だけで、私はまた達してしまいそうになる。
「イクとこ……見て……お願い……っ、見ながら、イかせて……!」
最後の突き上げで、私は全身を痙攣させた。
奥の奥で震える快感が、波のように何度も押し寄せて、涙がにじむ。
彼の熱も、中に溶け込んでくる感覚。
ぬるりと、どこか優しい余韻が、私の奥を満たした。
翌朝、カーテンの隙間から朝日が差し込む中、彼が私の腰に手を添えて言った。
「お前、もう戻れないね」
私は笑ってうなずいた。
「うん……“見られること”でしか、生きてる実感がないの」
その日から、私は何度も彼と交わった。
時には他人の視線の中で。
時にはカメラの前で。
「女に戻る」というより、「女に堕ちていく」感覚。
だけど、それが私の本当だった。
家庭は、壊れていない。
私は「良い妻」として、母として、日常をこなしている。
でも夜になると、赤いリップを二度引く。
鏡の中の私は、誰よりも淫らで、美しい。
「見てて──私のすべてを」
そう心でつぶやきながら、今日も私はコートの下に、何も身に着けないまま、街へと歩き出す。



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