エンジンの音が静かに消えると、車内に落ちた静寂は、まるで二人の罪をそっと包み込むようだった。
細い指でヘッドライトのスイッチを切る彼の横顔が、闇にとろけるように浮かび上がる。
私はその影を、息を殺して見つめた。心臓の音が、耳の奥で脈を打っている。
「今日は、…ここでいい?」
助手席に座る私に、彼が低く囁いた。
夜の駐車場。外は雨。ぽつぽつと屋根を叩く水音が、まるで私の胸の中の疼きを代弁しているようだった。
彼と出会ったのは偶然だった。
子どもの送り迎えのタイミング、通っていたカフェ、何度か重なった視線。
最初は気のせいだと思っていた。けれど、彼の視線はいつも、私のどこか「見られてはいけない部分」を撫でるようだった。
夫の目が、もう何年も忘れている場所。
女としての私を、もう誰も見ていなかったはずなのに。
気づけば私は、その視線を求めていた。
家庭では決して発せられない吐息を、誰かに預けたかった。
その夜。
助手席のシートが軋む音とともに、彼の手が私の髪をそっと撫で上げた。
「もう、我慢できない」
その一言で、すべてが壊れていった。
唇が重なった瞬間、私は抗うことをやめた。
深く、貪るようなキス。歯と舌が交わり、私は身体の中心が溶けていくのを感じていた。
スカートの裾がめくられ、太ももに触れた指が、ゆっくりと内ももを這い上がる。
「濡れてるね」
耳元で囁かれ、私は声にならない吐息を漏らした。
ショーツの上から、彼の指が何度もなぞるたびに、熱が一滴ずつ体内にしみ込んでくる。
「ここで、感じるのが好きなんだろ?」
彼の手が、ショーツの中に滑り込む。
指先が蜜で濡れた蕾を探り当て、そっと、円を描きながら愛撫し始める。
腰が勝手に揺れる。助手席のレザーがきしむ音。息が荒くなって、ガラスが曇る。
「声、出してもいいよ」
彼の囁きに、私は堰を切ったように甘い声を漏らした。
「ん…っ、そこ…だめ…」
けれど、彼は指先でクリトリスを軽く弾き、時に強く押し潰すように刺激してくる。
私の指が、思わずシートを掴む。
足の内側が震え、体中が敏感になっていく。
「こっち、来て」
彼が言うと、私は後部座席に誘導された。
そのまま膝に跨ると、スカートが腰まで捲れ、彼のズボンが静かに下ろされる。
熱を持った彼のそれが、私の内腿に触れた瞬間、喉の奥で甘い吐息が漏れた。
「もう…挿れて…」
彼は無言で頷き、私の腰をゆっくりと押し下げた。
濡れた肉が裂けるようにゆっくりと割れ、彼の先端が私の奥へと沈んでいく。
密着する深さ。
まるで自分の体の底に火が灯ったような、熱くて甘くて、少しだけ痛い感覚。
「くっ…きついな…」
彼の呻き声と、私の高く震える喘ぎが交錯する。
腰を前後に動かすたびに、濡れた音が狭い車内に響き、私は目を閉じて官能の波に溺れていった。
彼の唇が、私の乳首を捕らえる。
布越しに、唇が乳首の尖りを感じ取り、柔らかく舌で愛撫してくる。
「透けて見えるよ…いやらしい」
私はその言葉に、ますます体の芯が濡れていくのを感じた。
「まだ、足りない…もっと、奥まで…」
自分で言いながら、顔が赤くなっていく。
でも、身体は止まらなかった。
彼の腰が突き上げるたび、私の全身が跳ね、蜜が彼を包み込む。
指が、舌が、視線が、すべてが私を裸にしていく。
「中で…いって…」
「いいの? 本当に…」
私は頷いた。
そして、そのまま彼は私の奥に熱いものを放った。
身体の奥が脈打ち、私の全身が痙攣するように震えた。
「…すごい…こんなの…はじめて」
彼の腕の中で、私はすっかり力を抜き、しがみつくように肩に顔を埋めた。
車内に落ちた静けさ。
窓の外には、雨が静かに降り続いていた。
「今夜だけは、夢を見せて」
そう言った私に、彼は優しくキスを落とし、シートを倒して私を抱きしめた。
家庭では手に入らなかった、熱と密度。
許されない恋のなかで、私は確かに、女に戻っていた。



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