第1幕 制服の袖越しに、熱が伝わったあの午後
制服の袖が、ほんの数センチ、触れただけだった。
でも、私は確かに感じていた。
布越しに伝わった、彼の細い肩の、わずかな熱と──その一瞬で張り詰めた、緊張の匂い。
それは真夏の午後。
涼しさの残るバックヤードで、私は棚に並べる発注リストを片手に、いつものように彼を見つめていた。
色白で、背は低め。
髪は少し長めで、襟足がくるんと丸まっている。まだ少年の輪郭を残した頬。伏し目がちにレジの締め作業をするその横顔が、もう、たまらなかった。
汗をかきやすい季節なのに、彼はどこか“冷たい”空気を纏っていて、他の誰よりも孤立していた。
そして、誰よりも私の“どストライク”だった。
初めて、業務上のことで話しかけたあの日。
「◯◯くん、これ確認お願いできる?」と声をかけると、彼はびくりと肩を跳ねさせ、小動物のように目を見開いた。
「……ぁ、はい……」
かすれた声。
低くて、小さくて、喉の奥で震えているようなその声を聞いた瞬間──私は、内腿の奥がひときわ濡れたのを、はっきりと自覚した。
“この子、女の人に慣れてない”
たったそれだけの気づきが、私の中の「飢え」に火をつけた。
以来、私は無意識に距離を詰めていた。
伝票を渡すときに、手が触れるギリギリの角度で差し出し、
通路ですれ違うときには、胸が彼の腕にかすかに当たるよう角度を計算し、
休憩の合間には、ジュースを開ける指先を目で追い、あの細くて白い喉仏がコクンと鳴るのを見届けるだけで、身体の奥がじわじわ疼いた。
ある日、試しに、少しだけ身体を近づけてみた。
在庫室で二人きりの瞬間。誰にも見られていない、その数秒。
彼の耳が、すぐに赤くなった。
その染まり方があまりにも綺麗で──私はもう、戻れなくなった。
**
「ねえ◯◯くん、これ取ってもらえる?」
高い位置に置いた紙袋。
手を伸ばす彼の真後ろから、私は息をそっと吹きかけた。わざと。
彼の身体が硬直し、何も言えずにフリーズする。
たったそれだけで、私はもう──ビショ濡れだった。
**
そして運命の飲み会。
同じグループの7人のLINEに回ってきた通知を見た瞬間、私は迷わず彼を誘った。
“お酒弱いんだよね? でも◯◯くんが来てくれたら、私すっごく嬉しいな”
そのメッセージに「……行きます」と返ってきたのは、ほんの2分後。
私はその夜、自分がどんなふうに彼を壊すのか、想像するだけで呼吸が浅くなっていた。
まだなにもしていないのに、もう、私は何度も達していたのかもしれない。
彼の制服、指、声、香り、恥じらい──
それらすべてが、私の性感帯だった。
第1幕(後半) 飲み会の席で、指先より先に濡れていたのは
その日、私は下着を選ぶのに、いつもの倍以上の時間をかけていた。
レースの黒か、シルクの白か──
迷った末に選んだのは、自分が一番「性欲を意識する」ほうだった。
なぜなら、鏡に映ったその下着姿を見るだけで、自分の身体が疼いてしまうから。
誰に見せるためでもなく、“私が私を煽る”ための装備だった。
駅前の居酒屋。
テーブルには7人、彼は私の斜め向かいの席に座っていた。
最初は、だった。
乾杯を済ませ、少しずつ場が緩んでいく中、私はトイレのタイミングを見計らい、席替えの自然な流れをつくり出した。
「ねえ、詰めていい?」「あ、ごめんごめん、そこ座ってもいい?」
──気づけば、私は彼のすぐ隣にいた。
**
距離が、近い。
呼吸が混ざるほど近い。
横顔が、美しいほど緊張していた。
私は彼のグラスを手に取り、「ジュースだっけ?」と聞いた。
彼は小さく頷いた。
その頷き方すら、いやらしいと思ってしまう自分がいた。
グラスの底に溶けかけた氷が、コトリ、と鳴る。
私はストローを抜いて、彼の指にそっと触れるように返した。
「緊張してる?」
「……すこしだけ」
その言葉の後の、数秒の沈黙。
たぶん周囲はもう、酔い始めていた。
誰も、私と彼に注意を向けてはいない。
私はその隙をついて、自分の太ももを、ゆっくりと彼の脚に沿わせた。
肌と肌ではない、布と布。
でも、その摩擦だけで、お互いの呼吸が少しだけ変わった。
「……◯◯くん、可愛いよね」
「……え……?」
「こうやって、女の人にいじられるの、慣れてないでしょ?」
「……わかんない……です」
その震える返事のあと、私は“酔ったフリ”をして、彼の膝の上に、手を置いた。
ズボン越し。
ほんの、触れるだけ。
だけどそこは、まっすぐに彼の中心だった。
一瞬で硬くなるのがわかった。
そして、彼の喉が震えるのが、耳のすぐそばで聞こえた。
私の指は動かさなかった。
ただ、置いていただけ。
でもその“置いてる”という状態が、どれだけ異常で、どれだけ彼を縛りつけるか──私には、よくわかっていた。
「ねえ……ここ、苦しくない?」
そう囁いたとき、彼は声を失っていた。
ただ唇を噛み、じっと、前を見つめていた。
**
帰り道、私はスマホを取り出して、LINEを打った。
全員で歩く道の途中。
誰も私たちのスマホの中までは覗けない。
《◯◯くん、今夜、遊ぼうよ。まだ私、酔ってるから……送ってく。》
送信。既読。数秒の沈黙。
そして、彼の目線が、横にいる私にそっと向いた。
その視線の中にあったのは、**“戸惑い”ではなく、“覚悟”**だった。
**
改札を抜けた瞬間、彼は私と同じ駅で降りていた。
もう1人の社員が別方向に消え、2人だけになったとき、
私は彼の手をそっと取った。
細くて、白くて、まだ少し震えていた。
でもその手は、私の指をほどこうとはしなかった。
**
このあとの全てを、彼はもう拒まない。
拒めない。
私の声、指、匂い、呼吸──すでに“刷り込まれている”。
だから私は、手をつなぎながら耳元でこう囁いた。
「大丈夫。最初から、ちゃんと、気持ちよくしてあげるから──」
そのときすでに、彼は濡れていた。触れてないのに、私の指の感触を“記憶”して。
第2幕 あの子の童貞が壊れる音を、私の中で聴いた夜
「…座って」
自宅のリビング。
彼はおずおずとソファに腰を下ろし、縮こまるように背を丸めていた。
コップに注いだ水を渡すと、震える指先が私の爪に触れた。
それだけで、私は奥の粘膜がふるっと熱を持つ。
「緊張してる?」
「……はい……」
その小さな声。
飲み会で交わした視線と、ズボン越しに感じた熱の続きが──ここにある。
私は、彼の正面に立つ。
ゆっくりとボタンをひとつ外す。
もうひとつ。
そして、ブラウスの裾を、彼の視界の中で丁寧にほどいていく。
彼の目が、胸の谷間を見ている。
見ているのに、見ないふりをしている。
──その視線が、何よりもいやらしい。
「ねぇ。初めてなんでしょ?」
彼はコクリと頷いた。
「だったら、ちゃんと覚えてて。初めては、こうやって、女の人に教わるんだよって──身体で、ね」
私は彼の膝に跨るように座った。
小さく息を呑む音。
その音だけで、彼の下腹部が反応しているのが伝わる。
唇を、軽く重ねた。
押しつけるのではなく、そっと、濡れた呼吸を流し込むように。
彼の唇は少し乾いていて、でもすぐに、とろけるように柔らかくなった。
私はそっと耳元に口を寄せた。
「脱がせてみて。…私の、下着」
彼の手が、おそるおそる、私のスカートの裾に触れた。
人差し指と親指で、生地を少しずつめくり、下着のレースに指先が触れる。
その指が、ふるふると震えていた。
それが、たまらなく愛おしかった。
**
ベッドに彼を横たえ、私は自らの太ももで彼の胸をまたいだ。
レースの下着越しに、彼の顔へと腰を落とす。
「…ここ、キスして」
彼は戸惑いながらも、私の秘部に唇を寄せた。
「舌、入れて──恥ずかしいことでも、汚いことでもないの。
ねぇ、あなたが“これから生きていく性”っていうのは、こうやって愛されることなの」
私はゆっくり腰を押しつけ、彼の鼻先と舌先で、濡れた部分をこすりつけた。
彼の顔全体が染まってゆくのを、私は真上から見つめる。
羞恥が熱を生み、その熱が喉奥へ届く。
「……うん、上手。可愛い」
そして──
私は彼の脚の間に膝を滑り込ませ、ズボンと下着を一緒に、ゆっくりと脱がせた。
見慣れていない形。硬く、まっすぐ、まるで息をしているようだった。
私はそれを手のひらで包み込む。
ふるふると震えていた。
「ここね、私が好きなところに、入れてもらうの」
そう言いながら、私は自分の奥に指を差し入れ、とろみを掬い取ったそれを、彼の先端にそっと塗った。
「怖くない。大丈夫。私の中で、最初をちゃんと、記憶して」
ゆっくりと沈む。
私の中心が、彼の初めてをゆっくりと受け入れていく。
彼の眉がピクリと跳ねた。喉が詰まったように震え、手が私の腰にしがみつく。
「…気持ちいい?」
「……わかんない…でも……やばいです……っ」
その言葉が、愛しくてたまらなかった。
**
私は腰を前後にゆっくり揺らし、彼の中の何かが壊れるのを感じていた。
やがて、彼は目を潤ませながら、
「……もう……出そう……」と小さく漏らした。
私は首を傾け、彼の耳元で囁いた。
「いいよ。全部、私に出して。…童貞の最後の一滴まで、ちゃんと私の中に記憶させて」
その瞬間、彼の身体がビクリと震え、熱いものが奥へと注がれた。
私はそのまま、動きを止めずに揺れ続けた。
出した直後の彼の敏感なそこを、何度も、何度も擦るように動かしながら。
「ねぇ…まだ終わりじゃないよ。
私の“性欲”は、これくらいじゃ満たされないの──わかるでしょ?」
**
その夜、彼は3回も果てた。
でも、私が最も感じたのは、彼の“絶頂”ではなく──“壊れていく理性”だった。
第3幕 私の奥で壊れていった彼と、ふたりの声だけが響いた深夜
その夜、3回目の絶頂を終えた彼は、もうまともに言葉を話せなかった。
シーツに仰向けのまま、口を少し開け、うわ言のように「すみません…」と何度も繰り返していた。
身体の奥から搾り取られ、目は潤み、首筋には赤い爪痕が残っていた。
私はそんな彼の上にまたがりながら、まだ熱を帯びたそこに、手を添えた。
「ねえ、◯◯くん──まだ終わりじゃないんだよ?」
優しく囁くと、彼は泣きそうな顔で私を見た。
その表情に、私はまた、濡れた。
**
「四つん這いになって。ワンって言って?」
「……え?」
「言って」
しばらく躊躇ったあと、彼は膝をつき、ゆっくりと手を前に出した。
そして──
「……わん……」
その声のか細さに、私は喉の奥で喘ぎそうになった。
服従の音は、こんなにも湿って、甘くて、やわらかい。
私は後ろから、そっと指を這わせ、
彼の奥に指先をあてた。
「ここ、初めて触るね。…でも、大丈夫。私の指はね、“気持ちよくなる場所”しか知らないから」
クリームを少し垂らして、ゆっくりと中に滑り込ませる。
抵抗するような筋肉が、だんだんと、溶けていく。
「……あっ……っ……やば……っ」
喉の奥から、こわれた声が漏れる。
「まだ挿れてないのに、そんな声出して……ほんとに、いやらしい子」
私は背後から、そっと挿れた。
ぬるんと沈み込んでいく感触。
狭くて、柔らかくて、そして──すでに“受け入れようとする”意思がそこにはあった。
腰をゆっくり揺らしながら、私は乳首を軽く摘み上げた。
彼は喘ぎながら、肩を震わせ、シーツを噛んだ。
**
「ごめん……もう……ムリ……っ」
彼がそう漏らした瞬間、私は彼の中の一点を、指先で掠めた。
「ここでしょ? 私に全部、教えて。……気持ちよくなっていいの。私の中で、全部、壊れて」
彼は声をあげて絶頂した。
涙を流しながら、背中を反らし、口を開いて声をこぼしたまま──何度も、何度も震えた。
**
絶頂のあと、彼は私の胸に顔を埋めて、泣いた。
私はその髪を撫で、唇で額をなぞりながら、小さく言った。
「…もう、大丈夫。全部、私が責任持つから」
**
朝方、彼はまだ私の腕の中にいた。
赤くなった太もも、首筋に残る噛み跡、
喉から漏れる微かな寝息──
そして、奥の奥にまだ残っている、私の体温。
私はその痕跡を、どこかで誇らしく感じていた。
**
数週間後。
転勤の辞令が下った。
別れの言葉は、短くしか打てなかった。
《◯◯くん、ありがとう。……きっとまた、誰かに可愛がってもらえるよ。》
でも、スマホを置いたあと──私はひとり、泣いた。
シーツの匂いを抱きしめながら。
もう、二度と戻らない熱。
けれど確かに、私の中にはまだ残っている。
あの夜の、彼の声、震え、涙、絶頂、すべてが──
私の奥で、今も生きている。



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