夫と息子が二泊三日の父子キャンプへ出かけた週末。
私は久しぶりに一人になった。
その日、洗面台の引き出しの奥から、ふと手に取ったのは――競泳用の水着。
10年以上前、ママ友と市民プールに通っていた頃に買った、ハイレグの黒。
当時の自分の名残のようなその布地が、指先に冷たくて、少しだけ震えた。
「……まだ、着れるかしら」
鏡の前で試してみる。
身体は変わっているはずなのに、水着はぴたりと私に馴染んだ。
薄く、張りつくような生地が胸を包み、脚の付け根をえぐるように食い込んでいた。
まるで、皮膚の内側まで見透かされるようなこの締めつけ。
私の中の、何かが目を覚ましかけていた。
辿り着いたのは、車で一時間半。人のいない入り江。
その海は、どこまでも透明で、どこまでも静かだった。
私は濡れるために来た。
水と、太陽と、それ以外の何かで――心まで濡れるために。
脚を一歩、また一歩と海へ入れる。
冷たさが脛を、膝を、太腿を撫であげていく。
競泳水着の布の下、久しく閉じていた場所がぴくりと疼いたのは、波のせいじゃなかった。
息を止めて泳ぎ出す。何十メートルか先の、岩場を目指して。
あの無人の岩棚が、どこか“異世界”のように見えた。
「……すみません、驚かせた?」
岩に手をかけて息を整えていた私に、ふいにかけられた声。
振り向くと、細身で日焼けした若い男が立っていた。
濡れた黒髪が額に貼りつき、視線が、私の身体に触れるように泳いだ。
「いや、すごい……ガチの競泳水着、初めて見ました。似合いすぎてて……ちょっと、ヤバいです」
その言葉に、私は思わず笑ってしまった。
でも、その視線は真剣だった。欲望を隠さない、でもどこか誠実な光を帯びている。
「大学で、トライアスロンやってて。ここ、練習に来るんです。人、来ないから」
「……私も似たような理由で来たのよ。泳ぐの、好きだから」
「本当に、泳いでたんですか? あの水着で……エロすぎて、ちょっと信じられない……」
彼の目が、私の腿の付け根を凝視していた。
ハイレグの布地が濡れて、肌に張りついている。
恥ずかしさより先に、どこかで“見せたい”という衝動があった。
岩陰へ誘われるように、ふたりで移動した。
彼の視線がずっと、私のヒップラインと腿の隙間に絡みついてくる。
「俺……もう我慢できそうにないです」
囁くような声と同時に、唇が私の肩に触れた。
濡れた身体が、ひんやりした風にさらされて、火照るどころか、どこか快楽に溺れそうになっていた。
「……触ってもいい?」
答える前に、彼の手が私のヒップを包み込んでいた。
掌が大きい。
水着の布越しに、下から持ち上げられたお尻が、震えた。
「……めちゃくちゃ綺麗です、脚の付け根……この食い込み、たまんない……」
そしてその指が、ゆっくりと水着の隙間をなぞり始めた。
唇が首筋に吸いつき、舌が乳房の輪郭を押し上げてくる。
水着の胸元をずらすと、濡れたままの先端が硬く尖っていた。
「すご……もう、勃ってる……」
囁きと共に、彼の舌がそこを吸い上げる。
私は声を堪えきれず、短く喘いでいた。
やがて、彼が自分の短パンを下ろした。
そこに現れたのは、明らかに私が今まで見たどれよりも……。
「……え?」
大きい、というより、“太い”。
根元からそそり立ち、脈打つそれは、生き物のようだった。
「怖い……」
思わず漏れた本音に、彼は優しく笑った。
「大丈夫、ゆっくり……慣らしますから」
その言葉とともに、私の膝をそっと割るように、指が脚の間へ滑り込んでくる。
水着のクロッチがずらされ、そこへ彼の舌が伸びた。
「あ……だめ、そんな……」
けれど舌は、いやらしく、熱く、的確に、私の芯を揺らしてくる。
舌先が、溢れ出た蜜をすくい取り、吸い込むたびに、背中がのけ反った。
「……いきますよ」
水着を太腿までずり下ろしたまま、私は仰向けに岩に寝かされ、彼がゆっくりと身体を重ねてきた。
最初の挿入は、まるで裂けるような衝撃だった。
太くて、硬くて、身体の奥に詰めこまれていく。
「ふ、ぁっ……ん、く……くるしい……でも……気持ちいい……っ」
彼は何度も私の名前を呼びながら、激しく、深く突いてきた。
波音と重なるように、水音が鳴り響いた。
太いそれが、奥の奥をぐいと押し広げるたび、私は自分が崩れていくのを感じていた。
「俺……止まれないっ……由紀さん……もっと、感じて……」
「うん……もっと……突いて……奥まで……全部、ちょうだい……っ」
最後は、涙が滲むほどの快楽の奔流。
意識が真っ白に燃え尽き、岩場に倒れこんだまま、私はしばらく動けなかった。
彼のものが抜ける感触すら、甘く残っていた。
潮の香り、彼の汗、私の蜜――それらすべてが、夏の匂いになって漂っていた。
それから、私は変わった。
もう“女”をしまいこむことはできなかった。
たった一度の、あの岩場での経験が、私の身体を、心を、永遠に塗り替えてしまったのだ。
――そして、あの水着だけは、今もクローゼットの奥にしまってある。
見るたびに疼く、あの太さと熱を、思い出せるように。



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