4. 再び、映画館で
それからしばらくの時が流れた。
あの夜以来、美佐子先生とは職場で顔を合わせても、何事もなかったかのように振る舞っていた。
けれど、ふとした瞬間、彼女の視線が俺を捉える。
その一瞬に交わる眼差しだけで、あの夜の熱が蘇る。
そして、ある日——
美佐子先生が「今度の休みに夫と映画を観に行くの」と、何気なく言った。
夫。
彼女がどんな表情で、その言葉を口にしたのか、今となっては思い出せない。
ただ、俺の心にざわめきが広がった。
どんな男なのか——
彼女の隣にいるその存在を、この目で確かめたい。
その衝動に突き動かされるまま、俺は映画館に向かっていた。
5. 交錯する影
館内に足を踏み入れると、すぐに彼女を見つけた。
白いワンピースではなく、落ち着いた色の服。
けれど、その清楚な雰囲気は変わらない。
隣には、男がいた。
思っていたより若く、穏やかそうな顔立ち。
二人は静かに言葉を交わしている。
俺は迷うことなく、彼らの後ろに並び、同じ列の席を選んだ。
映画が始まる。
スクリーンの明かりが、薄暗い劇場を照らす。
彼女のすぐ隣の席に座る。
美佐子先生は、俺を見た。
一瞬、瞳が揺れた。
けれど、すぐに彼女は何もなかったかのように前を向く。
俺もまた、何事もないふりをする。
ただ、隣にいる。
6. 触れぬ熱
映画が進む。
愛と裏切りの物語。
スクリーンの中で交わる視線、秘められた情熱。
美佐子先生が、わずかに息を呑む。
その微かな反応に、俺の心臓が高鳴る。
知っている。
彼女の心が、俺のすぐそばで揺れていることを。
けれど——
俺たちは知らないふりを続ける。
何度も、指先が動きそうになる。
ほんの数センチの距離。
この手を伸ばせば、彼女の手に触れられる。
だが、それは叶わない。
俺たちの間には、ひとつの影が横たわっている。
彼女の夫。
俺たちは、静かに燃えながら、触れられない熱を抱えていた。
館内は満席に近く、偶然にも美佐子先生の隣の席が空いていた。
俺は迷うことなくそこに座る。
美佐子先生は一瞬、息を呑んだ。
けれど、彼女は何も言わず、視線をスクリーンに向けた。
俺たちは知らないふりをする。
映画に集中するふりをしながら、すべての感覚が隣の彼女に引き寄せられる。
やがて、ほんのわずかに、指が触れた。
一瞬の静寂。
触れた瞬間、美佐子先生の指が微かに震える。
ひざ掛けの下、彼女の手がそっと俺の手を包む。
「……ここなら誰にも見えないわ。」
微かな囁きが、暗闇の中に溶ける。
俺の指先を絡めながら、美佐子先生はゆっくりと、まるで愛撫するように指を這わせていく。
しなやかな指が、俺の手のひらをなぞり、密やかに求めるように絡みつく。
映画の中では、激しく求め合う恋人たちの姿。
けれど、俺たちの間に流れる熱は、それ以上に深く、切なく、淫らだった。
逃げない。
俺の指が、ゆっくりと彼女の指をなぞる。
彼女もまた、そっと指を絡めてきた。
旦那は映画に集中している。
俺たちだけの時間が、密やかに紡がれていく。
劇場の暗闇が、すべてを包み込む。
呼吸が重なり、熱が伝わる。
理性が揺らぎ、すべてが崩れそうになる。
この距離で、俺たちは互いを求めていた。
6. 触れぬ熱
映画が進む。
愛と裏切りの物語。
スクリーンの中で交わる視線、秘められた情熱。
美佐子先生が、わずかに息を呑む。
その微かな反応に、俺の心臓が高鳴る。
知っている。
彼女の心が、俺のすぐそばで揺れていることを。
けれど——
俺たちは知らないふりを続ける。
何度も、指先が動きそうになる。
ほんの数センチの距離。
この手を伸ばせば、彼女の手に触れられる。
だが、それは叶わない。
俺たちの間には、ひとつの影が横たわっている。
彼女の夫。
俺たちは、静かに燃えながら、触れられない熱を抱えていた。
館内は満席に近く、偶然にも美佐子先生の隣の席が空いていた。
俺は迷うことなくそこに座る。
美佐子先生は一瞬、息を呑んだ。
けれど、彼女は何も言わず、視線をスクリーンに向けた。
俺たちは知らないふりをする。
映画に集中するふりをしながら、すべての感覚が隣の彼女に引き寄せられる。
やがて、ほんのわずかに、指が触れた。
一瞬の静寂。
触れた瞬間、美佐子先生の指が微かに震える。
ひざ掛けの下、彼女の手がそっと俺の手を包む。
「……ここなら誰にも見えないわ。」
微かな囁きが、暗闇の中に溶ける。
俺の指先を絡めながら、美佐子先生はゆっくりと、まるで愛撫するように指を這わせていく。
しなやかな指が、俺の手のひらをなぞり、密やかに求めるように絡みつく。
映画の中では、激しく求め合う恋人たちの姿。
けれど、俺たちの間に流れる熱は、それ以上に深く、切なく、淫らだった。
逃げない。
俺の指が、ゆっくりと彼女の指をなぞる。
彼女もまた、そっと指を絡めてきた。
旦那は映画に集中している。
俺たちだけの時間が、密やかに紡がれていく。
劇場の暗闇が、すべてを包み込む。
呼吸が重なり、熱が伝わる。
理性が揺らぎ、すべてが崩れそうになる。
映画のスクリーンでは、官能的なシーンが流れ、交わる視線、触れ合う肌、熱を帯びた囁きが溶け合っていく。
その光と影が揺れる暗闇の中で、俺たちの鼓動もまた、映画と呼応するように高まっていた。
「……こんなにも。」
美佐子先生の囁きが、ひざ掛けの下で絡み合う指先から直接伝わる。
触れ合う指がまるで求め合うように絡み、ゆっくりと這わせるたびに、互いの熱が波紋のように広がる。
映画の音に紛れた、美佐子先生の浅い呼吸。
「もう……戻れない……。」
彼女の声は震えていた。
旦那は微動だにせず、映画に集中している。
それでも俺たちには、その存在すら霞むほどの熱があった。
呼吸が交差し、理性の輪郭がゆっくりと溶けていく。
すべてが映画と現実の狭間で交錯し、時間が引き伸ばされていく。
俺たちは、触れることだけで、すべてを伝え合っていた。
触れ合う指先が熱を帯び、まるで互いの想いを語るように絡み合う。
映画の中では、激しく求め合う恋人たちが画面越しに絡み合い、喘ぐ声が静寂を切り裂いていた。
彼女の指が、ゆっくりと俺の手を導く。
「……ねぇ……感じる？」
美佐子先生の囁きは、暗闇に溶けるように甘く震えていた。
俺は答えられない。
ただ、ひざ掛けの下で交わされる指の動きだけが、すべての感情を代弁していた。
逃げない。
指先を絡めるたび、ひざ掛けの下で交わる手がより深く絡み、やがてその動きは映画の中の情熱と共鳴し、静かに、けれど抗えない熱を孕んでいく。
「こんなに……抑えられないの……。」
彼女の指が、求めるように俺を締め付ける。
呼吸が浅くなり、映画の官能的なシーンと現実の境界が曖昧になっていく。
スクリーンの中では、愛し合う男女が極限の情熱に呑み込まれている。
そして、俺たちも。
旦那の静かな寝息が微かに響く。
その存在が霞むほどに、俺たちの間の熱は激しく燃え上がっていた。
触れるだけ。
それだけなのに、すべてを支配されてしまいそうになる。
理性が崩れ、境界が溶けていく。
映画の中の熱と、俺たちの熱。
すべてが重なり合い、頂点へと導かれる。
俺たちは静寂の中で燃え尽き、堕ちていく。**
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