春の終わりを告げるような夜風が、独身寮「若竹寮」の廊下を吹き抜ける。ここは、某一流企業の独身寮。ここに住むのは、23歳から29歳までの若い男たち。彼らは仕事に追われ、慌ただしい日々を送りながらも、ふとした瞬間に孤独を抱えている。
寮母である私は、小宮房江。四十歳。清楚な佇まいを持ち、歳を重ねてもなお美しいと言われる。その黒髪は艶やかに揺れ、端正な顔立ちは今でも男たちの視線を引きつける。夫は東京にいる。仕事の都合で別居生活を続けるうちに、私の中に満たされない感情が芽生えていた。
だが、私はこの仕事を天職だと感じている。男たちのために食事を作り、心の拠り所となることに、確かな生きがいを感じる。そして、もう一つ。彼らの視線が私の体を見つめる、その目が好きなのだ。
私はスタイル維持にも日々努めている。年齢を重ねても、女としての自分を失いたくない。だからこそ、私の服装は常に意識している。露出の高い服を着ることも少なくない。ブラトップに清楚なフレアスカート。上品でありながらも、どこか官能的な雰囲気を纏う。それが、私という存在を際立たせる。
男たちは、その視線を私の肌に這わせるように感じることがある。彼らが気づかぬふりをしても、私には分かる。その視線の中に潜むものを。そして、それが私に、得も言われぬ高揚感を与える。
男たちの疲労と私の役割
日々の仕事に追われた男たちは、夜遅く帰宅すると、まるで力尽きたようにソファに沈み込む。ネクタイを緩め、背広を脱ぎ捨て、無言のまま食堂に向かう。私が用意した夕食を前にして、しばらく何も言わずに見つめることもある。
「寮母さん、これ、今日の特製ですか?」
声をかけたのは、佐々木。二十五歳の営業マンで、最近特に忙しくしている。彼の目には、疲労と、ほんの少しの安堵が混ざっていた。
「あなたの好きな味にしてみたわ。」
私は笑って返す。彼は少し照れたように笑い、箸を動かし始めた。
彼らにとって、私はただの寮母ではないのかもしれない。彼らが仕事のストレスに押しつぶされそうになったとき、そっと寄り添う存在。だからこそ、私は意識的に彼らの目線を感じる。仕事の重圧に耐えながら、どこかで癒しを求めている男たち。その視線が、私の中の何かを刺激する。
時には、その視線に熱が帯びることもある。疲労と緊張の中で揺れる感情が、私の姿に向かってぶつかる。欲望と理性の狭間で迷う目。私はそれを見ないふりをする。でも、心の奥では感じ取ってしまう。
夜の独り言
ある晩、私は寮の廊下を歩いていた。消灯時間を過ぎても、まだ灯りが漏れている部屋がある。何か悩みごとでもあるのだろうか。
「…寮母さん?」
扉が開き、顔を覗かせたのは、木村だった。彼は二十八歳、技術職で日々神経をすり減らしている。しかし、この寮の中では一目置かれる存在だった。端正な顔立ちに加え、仕事ぶりも優秀で、上司からの評価も高い。将来は幹部候補とも噂される男だ。
「すみません、寝られなくて。少し話せませんか?」
私は小さく微笑み、静かに頷いた。
食堂の隅、蛍光灯の淡い光の下で二人は向かい合った。
「時々、自分が何のために働いてるのか、分からなくなるんです」
木村の声は低く、寂しげだった。遠く離れた家族のことを思いながらも、心の拠り所を見失っている男の姿がそこにあった。
「大丈夫よ、あなたはちゃんと頑張ってる」
私が静かに声をかけると、木村は小さく笑った。その表情の奥に、何か言いたそうなものが滲む。
「寮母さんは…寂しくないんですか?」
思わぬ問いかけに、私は少しだけ目を伏せた。
「…さあ、どうかしらね。」
私の中にも、応えようのない気持ちがあった。
木村との駆け引き
この寮で、私を好きにならない男はほとんどいない。
彼らは皆、日々の仕事に追われ、ストレスを抱えながらここで暮らしている。そして、その寂しさを紛らわせるように、私に甘える。夕食の時、廊下ですれ違う時、視線が絡むたびに、その気配を感じる。
木村もまた、例外ではないのだろうか。
彼は理知的で、感情をあまり表に出さないタイプだったが、時折見せる眼差しが、それを裏切っていた。
「寮母さんって、不思議ですね。」
「何がかしら?」
「…寂しいと言わないのに、寂しそうに見える。」
言葉が少し遅れて胸に響いた。
「寮母だから、ね。」私は微笑む。
「そういうものですか。」木村は目を伏せ、カップを傾けた。
このまま流してしまうこともできた。でも、私はあえて、少しだけ隙を見せる。
「…あなたにそう言われると、少し意識しちゃうわ。」
木村は一瞬だけ動きを止めた。そして、ゆっくりと私を見つめる。
「意識するんですね。」
その静かな問いかけに、私は何も答えず、微笑みを返した。
二人だけの時間
「少し、飲まない?」
私は何気なく言ったつもりだった。けれど、木村の表情が微かに変わるのを感じる。戸惑いと、どこか期待を含んだ眼差し。
彼は静かに頷いた。
私の部屋へ向かうと、木村は少し緊張した様子だった。
扉を開けた瞬間、彼の目がわずかに見開かれる。
「…これ、寮の部屋じゃないみたいですね。」
「そうかしら?」
私の部屋は、寮にあるとは思えないほどの空間だった。間接照明が柔らかく灯るリビングスペース、深いワインレッドのカーテン、ホテルのように整えられたベッド。シンプルでありながら、随所にこだわりが感じられるインテリア。
「ビールでいいかしら?」
冷蔵庫から取り出した缶を二つ開ける。グラスに注ぐ手が、自然とゆっくりになる。
「寮母さんの部屋、初めてですね。」
「そうね。誰かを招くことなんて、滅多にないわ。」
本当は、そんなことはない。でも、そう言うことで、より特別な空気を作り出せる気がした。
木村はグラスを持ち上げ、軽く私と乾杯する。
「こんな時間に、二人で飲むのって…なんだか変な感じですね。」
「そうかしら? ただ、気楽に話せる相手がいるって素敵なことじゃない?」
ビールの泡が静かに弾ける音。夜の静寂が、それをより鮮明に際立たせる。
「寮母さん…」
木村がふと、言葉を切る。その目が、迷いながらも私を見つめていた。
「何?」
「俺…寮母さんのことが好きなんです。ずっと…ずっと、たまらないくらい。」
その言葉が、夜の静寂に溶けていく。
私はグラスを置き、彼の言葉を受け止めるように、ゆっくりと視線を返した。
彼の感情があふれ出した瞬間だった。
二人の距離が縮まる夜
部屋の静寂の中、ビールの泡がゆっくりと弾ける音だけが響いていた。木村はグラスを持ち上げ、一口飲むと、ふと私を見た。
「寮母さんって、不思議ですね。」
「何がかしら?」
「いつも皆に優しいのに、どこか遠い。」
彼の言葉が胸に触れる。男たちはいつも私を求める。食事を作り、話を聞き、寄り添う。それが寮母の役割だと分かっている。けれど、それ以上の距離を縮めることは決してなかった。
「そう見える?」私は微笑む。
「はい。でも、今は違う気がする。」
彼の瞳が、ゆっくりと私を捉えていた。まるで、私の内側まで覗き込むように。
「木村くん…」
「寮母さん…もっと近くに行ってもいいですか?」
彼の声が低く落ちる。私は迷いながらも、ゆっくりと頷いた。
木村がそっとソファの傍に座る。近くなる距離。息遣いが感じられるほどの空間。
「……」
私は、彼の手の甲にそっと触れる。その温もりが、思っていたよりもずっと熱かった。
「寮母さんって、本当にスタイルがいいですよね。」
思いがけない言葉に、私は一瞬動きを止める。
「……何を急に?」
「いや、ずっと思ってました。寮で会うたびに、背筋の伸びた姿勢とか、綺麗なシルエットとか……寮母というより、まるでモデルみたいだなって。」
彼の言葉は率直で、けれどどこか戸惑いを帯びている。
「褒めても何も出ないわよ。」
私は軽く微笑んだ。けれど、心の奥で小さな何かが揺れた。
迷いと意識の変化
私はグラスの中のビールを見つめながら、ふと立ち上がった。
「少し、シャワーを浴びてくるわ。」
言葉に出した瞬間、自分の声がわずかに震えていることに気づく。
木村は驚いたように私を見たが、何も言わずに頷いた。
部屋の奥のバスルームへ向かう途中、私は自分の鼓動が少し早まっているのを感じる。
これは、ただの習慣のはずだった。夜にシャワーを浴びるのは、いつものこと。けれど、今日は違う。部屋に木村がいる。静かにグラスを傾け、私を待っている。
鏡の中の自分を見つめる。いつもと同じ自分。でも、どこか違う。
私は、深く息を吐いた。
「…落ち着いて。」
心の中でそう呟く。
シャワーの音が、部屋の静寂を切り裂くように響き始めた。
湯が肌を滑る感触に、私は自然と目を閉じた。暖かな水流が肩を包み込むと、張り詰めていた心が少しだけ緩む。
——木村は、今どんな気持ちでいるのだろう。
彼の視線を思い出す。探るようでいて、どこか迷いを含んだ瞳。私を知りたがっているのか、それとも、何かを確かめようとしているのか。
静かに息を吐きながら、指先で首筋をなぞる。シャワーの温度が、私の体の中に残る小さな緊張を解きほぐしていく。けれど、胸の奥には別の何かが残る。
——このまま、何事もなかったように戻るべきなのか。
湯を止め、バスルームの曇った鏡に手を伸ばす。指先で水滴を拭い去ると、ぼんやりと自分の姿が浮かび上がる。
「…私は、どうしたいの?」
自分に問いかける。
その問いにすぐに答えは出ない。
バスローブを纏うこともできたが、私はふと躊躇った。
——余裕のある大人の女なら。
ゆっくりと、ランジェリーの肩紐を直す。シルクの生地が肌に滑り、冷たい空気が微かに触れる。髪を軽くまとめ、鏡の中の自分を見つめる。
そこには、寮母としての私ではなく、一人の女性としての私がいた。
視線を楽しむ余裕
ドアを開けた瞬間、木村の視線が私を捉えた。
一瞬、彼の指がグラスの縁で止まる。
「……寮母さん?」
「どうしたの?」私は微笑む。
わずかに見開かれた彼の目。けれど、すぐに意識を取り戻したように、グラスを傾ける。
私はソファに腰掛ける。ゆっくりと脚を組み、彼の動揺を静かに観察する。
「そんなに驚かなくても。」
「いや……ちょっと、予想外でした。」
彼の声が少し掠れる。だが、その瞳には戸惑い以上の何かが滲んでいる。
——彼は、私に憧れている。
その事実を改めて意識すると、私は少しだけ唇の端を上げた。
「もう少し、飲む?」
私はワインをボトルから注ぎながら、彼の視線を感じる。
この夜が、どこへ向かうのか。
私は、まだ知らなかった。
揺さぶられる心
静けさが、部屋を満たす。
グラスの縁にかすかに指を滑らせながら、木村の目がふと揺れる。彼の視線は、私の仕草を追いかけながら、しかし確信を持ちきれないように漂っていた。
「寮母さんは、こういう時、動じないんですね。」
私は微笑む。
「どうかしら。あなたがどう感じるかによるわ。」
木村は、わずかに唇を噛む。そして、グラスを手に取ったまま、小さく息を吐く。
「昔から、余裕がある大人の女性って、どこか遠いものだと思ってました。でも、今は……近くて、手を伸ばしたら届きそうな気がする。」
その言葉の向こうに潜むものを、私は見逃さない。
「じゃあ、試してみる?」
彼の指がピクリと動く。
私の言葉が冗談なのか、本気なのかを測るように。けれど、戸惑いの奥には、確かに私を求める熱が見え隠れしていた。
「……寮母さんは、ずるいですね。」
彼の声が、ゆっくりと低く落ちる。
私はただ、ワインを揺らしながら微笑むだけだった。
沈黙の緊張感
木村が視線を落とす。その目の奥にある迷いと、抗いがたい衝動の狭間を、私は静かに見つめる。
私は、わずかに姿勢を正し、ソファの背もたれに軽く身を預けた。
「そんなに緊張しなくてもいいのよ。」
私の言葉に、木村が小さく喉を鳴らす。
「別に……緊張なんか……。」
彼の指が、無意識のうちに膝の上で動いた。
私はその小さな仕草を捉えながら、心の中で微笑む。
彼は揺れている。
そして、私はその揺れを、ほんの少し楽しんでいる。
「私が怖いの?」
「……怖い、というより……。」
言葉を探している彼の様子が、可愛らしくさえ思える。
私はそっとグラスを置き、彼の方へと身を寄せた。
「あなたの中で、私ってどういう存在なの?」
私の問いに、木村は答えられなかった。
ただ、視線だけが、絡まったまま、ほどけなかった。
揺らぐ呼吸、絡まる想い
沈黙が重なり、時間がゆっくりと伸びていく。
私はゆっくりと姿勢を変え、膝を引き寄せるようにしてソファに座り直した。その動作に合わせて、木村の喉がかすかに動くのを見逃さない。
「こんな風に向き合うのは、初めてね。」
「……そうですね。」
彼の声は、先ほどよりも低く、そしてどこか熱を帯びていた。
ワイングラスをそっとテーブルに置くと、私は彼の視線を意識的に受け止めた。
「私に憧れてる?」
木村は少しだけ目を伏せる。そして、すぐにゆっくりと見上げた。
「……それだけじゃないです。」
その言葉が、静かな部屋の中に深く落ちる。
私は微笑んだ。けれど、その微笑みは、自分自身への問いかけでもあった。
視線が絡み、呼吸が重なる
木村の目が私の瞳を深く捉える。彼の視線は、もう先ほどまでの迷いではない。
ゆっくりと、私の仕草を追うその目が、求めるものを明確にしていく。
「……寮母さん。」
低く落ちた声が、部屋の静けさに染み込んでいく。
私は、微笑んだまま彼を見つめ返す。お互いに言葉を失ったまま、ただ視線だけが絡み、ほどけない。
彼の呼吸が、わずかに乱れる。
私はその音を聞きながら、ゆっくりと身を寄せた。
「あなた、緊張してる?」
囁くように問いかけると、彼の喉が小さく鳴る。
「……してません。」
けれど、その言葉とは裏腹に、彼の指が膝の上でわずかに動いた。
私はそっと彼の手を取り、胸の上に導く。
「ほら……」
木村の指が触れた瞬間、彼の呼吸がわずかに乱れる。私の鼓動が、その手のひらを通して彼に伝わるのがわかる。
「感じる?」
彼は答えない。ただ、震えるように息を吸い込む。
「あなたが思うより、私はずっと、普通の女なのよ。」
私はそっと微笑む。
木村の目が、私を捉えたまま揺れる。その視線の奥にあるのは、迷いと、抑えきれない感情。
そして、その境界線が静かにほどけていくのを、私は確かに感じていた。
この体験談で興奮したら必見!!
独身寮『若竹寮』の寮母を務める40歳の小宮房江。夜には、妻と離れて暮らす生活が淋しかろうと、単身赴任中の男の部屋を訪ね夜○いをかけたりもしていた。「私を東京の奥さんだと思って接してくれていいのよ」と言い、男の本物の妻より過激な奉仕をしていた。そんなある日、『若竹寮』に新たな入居者がやってきた…。
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