午後三時過ぎのアトリエは、西日が床に長い影を落としていた。私はバスローブの下に何もつけていなかった。
隣に住む恵美に頼まれて引き受けた、地域の絵画教室のヌードモデル。三十八歳の専業主婦である私が「一度だけなら」と答えたのは、見られることにどこか飢えていたからだ。家事とパートの事務仕事を真面目にこなす毎日の中で、自分の輪郭をはみ出す瞬間を、心の奥で待っていた。
「胸だけでいいって。タオルもあるし、すぐ終わるから」
彼女の声に抗えなかったのは、友達だからだけではなかった。
教室は民家を改装した小さなアトリエだった。イーゼルが五台並び、鉛筆を走らせる音だけが静かに響いている。講師の高木さんが私に一礼し、無言でバスローブを脱ぐよう目で示した。
胸だけ、ではなかった。
一瞬、視線が泳ぐ。けれど生徒たちは誰も驚いた顔をしない。ごく自然なことのように紙と鉛筆を構えている。もう逃げられないと悟ったとき、私は何も纏っていなかった。
肌に触れる空気はひんやりしていた。それ以上に熱いのは、体の奥だった。内ももに沿って、かすかな震えが走る。五人の視線が一斉に私に注がれている。胸の先が冷気で少し硬くなり、柔らかな腹のふくらみ、そして薄い毛に覆われた秘部。少しでも濡れていたら、正面からはっきり見えてしまうのがわかっていた。
「まっすぐ立って、正面を向いてください」
高木さんの声が頭の奥でぼやけた。それでも私は言われた通りに動いた。膝がわずかに震えていた。できるだけ自然を装い、息を潜める。視線は正確に「そこ」へ向かっていた。光の加減で、小さく盛り上がった中心がぬらりと見えていた。薄い毛の隙間から、すでに湿った粘膜の色が透けて見える。
私は頬を染めながら背筋を伸ばした。ただ描いているだけだと自分に言い聞かせる。正面に立つ細身の男性だけは違った。私の表情を見ていた。頬の赤み、浅い呼吸、胸の起伏。私が感じはじめていることに、気づいていた。
「椅子に座って、右足を乗せて膝を抱えてください」
あまりにも無防備な格好だった。何も言えずに腰をおろし、脚を上げる。足を乗せた瞬間、空気がそこに触れた。ひやりとした感触に小さく息をのむ。脚を上げるほど中心が開かれていくのがわかった。熱を帯びた粘膜が、小さな唇の奥に見えてしまう。その恥ずかしさに、私はすでに濡れていた。内腿を伝うほどではないが、入り口がとろりと光っているのが自分でもわかった。
鉛筆の音が止まり、細身の男性が静かに言った。
「影になっているので、左足も同じようにお願いします」
両足を開ける、ということだ。断れなかった。ゆっくり左足を上げ、両膝を抱える。ビラビラが左右に開き、奥まであらわになった。ぬらぬらと光っているのが自分でもわかった。体の奥が脈打つように疼いていた。小さな穴まで、わずかに収縮しているのが見えてしまう。
「お尻の穴、動いてる……」
誰かの低い声。全部見られている。一番恥ずかしいところまで。それでも身体は感じていた。太ももの付け根が熱くなり、乳首の先端が硬く尖り、濡れた中心が勝手に熱を持っていた。触れられていないのに、そこだけが反応していた。
細身の男性が立ち上がり、近くに来た。
「もっと、開いてもらってもいいですか」
声は優しく、どこか残酷だった。私はゆっくりとM字になるように脚を開いた。濡れた中心がすっかり開き、内側のひだまで全員の視線に晒された。恥ずかしさと快感で、どこかが壊れていく感覚があった。入口がひくひくと収縮し、透明な液が糸を引いて太ももの内側を伝い始めた。
彼は細い筆を持っていた。毛先がしなやかに揺れている。それを見た瞬間、身体が小さく震えた。
「仰向けになってください」
抵抗せずに床に背を預けた。両足を自分から広げ、恥ずかしい奥をすべて晒す。床の冷たさが背中に沁みるのに、下半身は熱かった。
「もっと見やすくしてください」
膝の裏を両手で抱え、さらに開いた。羞恥が頂点を越え、思考が遠く霞む。自分の中の何かを壊したくて、自分で自分を突き放すようにその格好を選んでいた。秘部が完全に開かれ、クリトリスがすでにぷっくりと膨らんで顔を出していた。小さな蕾は脈打つたびに微かに動き、入口からとろりと蜜が溢れていた。
筆の毛先が内腿に触れた。一滴の水分を含ませたような、冷たくぞくりとする感触。毛の一本一本が肌をなぞる。太もも、膝の内側、下腹部。生え際を通り越し、濡れた中心のすぐ外側を撫でた。
「ん……っ」
熱のこもった吐息が漏れた。筆が小さな蕾のすぐ隣をかすめる。まだ触れていないのに感じる。クリトリスはぷっくり膨らみ、脈打つたびにビクンと動いていた。彼はそれを観察するように見つめていた。
「触ってないのに……もう……」
脚の力が抜けそうになりながら、開いたまま耐える。入口がひくひくと収縮し、蜜がさらに溢れ出る。
「ここ、ですよね」
筆先が蕾の縁をそっとなぞった。
「……あっ……だめ……っ」
全身が跳ねた。腰が浮きそうになるのを押さえ、息を殺す。もう我慢がきかなかった。筆の毛先が敏感な皮をわずかに押し上げ、電気が走るように腰の奥が締め付けられる。
「は……ぁ……あ……」
筆は執拗に小刻みにクリトリスのすぐ横をくすぐる。濡れたひだに毛先が触れては離れ、そのたびに腰の奥がぎゅうっと疼く。頭の中が真っ白になった。入口からとろりと蜜が溢れ、太ももの内側を伝い落ちる感触まで鮮明だった。
筆の先端が蕾のど真ん中に落ちた。
「──っ!!」
声にならない叫びが胸の奥で弾けた。背筋が反り、指先が張り詰める。筆は円を描くように優しく、確実にそこを愛撫していた。乳首もカチカチに立ち、すべての性感帯が露わになっていた。クリトリスを直接撫でられるたび、腰が勝手に浮き、中がきゅっと締め付けられる。
筆が一度離れ、再び強くクリを押し上げるように押された。
「あっ──あぁあっ!」
全身が跳ね、太ももが痙攣した。絶頂だった。息を止めたまま震え、口を開けたまま何も言えず、世界が静かに遠のいていく。中から熱いものが溢れ出し、床に小さな水たまりができていた。
目を開けたとき、彼は少し離れたところで私をスケッチしていた。いつの間にか全員が筆を取り、脚を開いたまま余韻に震える私を描いていた。秘部はまだひくひくと収縮し、クリトリスは赤く腫れ、入口からとろりと蜜が溢れたまま開いていた。
これはただの羞恥ではなかった。崩れ落ちるように辿り着いた、ある種の浄化だった。快楽と引き換えに、「いい妻」「清楚な女」という仮面を一枚ずつ脱がされていたのかもしれない。
服を着たとき、心のどこかが軽くなっていた。素の自分をそのまま取り戻したような感覚。帰り道、空を見上げた。静かな夕暮れ。肌の下にまだわずかに熱が残っていた。下着を履いた瞬間、まだ敏感なところが布に擦れて小さく震えた。
もう一度、やってもいいかもしれない。
そう思ってしまったことが、何よりも自分を裏切る言葉だった。けれど私は歩きながら、唇の端をほんの少しだけ緩めた。あの日のアトリエで私が失ったもの。それは隠してきた自分だった。見られることで、初めて本当の女になれた気がしていた。
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