
私は大学の帰り道を、いつもとは違う経路で歩いていた。夕方の街はどこか浮ついた雰囲気で、そんなときに限って普段は目にしないものが見えてくる。視界に入ったのは、マッサージのチラシを配る青年。爽やかな笑顔が印象的で、手渡されたチラシには「学割あり」の文字が躍っていた。
「学生さん? もし興味あれば、今から施術もできますよ」
配っていた彼は27歳くらいだろうか、ほどよく日焼けした肌にハーフパンツ姿が似合う“加藤さん”(仮名)と名乗った。その軽やかな口調と清潔感のある風貌に惹かれ、なんとなく断りきれない。おまけに学生料金があるというのだから、私にはうってつけだった。
マッサージに目がない私は、ふと以前、男性トレーナーの施術を受けてドキドキしたことを思い出した。――そういえば、男の人に触れられると、身体だけじゃなく気分まで高揚するんだったな。そんなことを思い出して胸が弾む。
案内されたのは近くのビルの三階にある、こじんまりしたマッサージルーム。問診票を渡され、書けるところだけ記入するよう言われる。名前や希望の施術時間、オイルの有無などを簡単に書き込むだけでOKとのことだった。
「どうぞ、ここでお着替えください。パンツだけ残して、バスタオルを巻いてお待ちいただければ大丈夫です」
部屋を出ていく加藤さんの後ろ姿を見送り、私はクスリと笑ってしまう。“パンツだけ”という指示は、こういうサロンではよくあることだ。ちょっとだけ“見られている感”を楽しむのが好きな私にとって、そのシチュエーションはむしろ刺激的でもあった。
だから、意地悪な気持ちで、バスタオルは胸のギリギリまでしか隠れないように巻いてみる。パンツはお気に入りのTバック。鏡の前に立ち、自分の姿を見て少しドキドキする。大丈夫、ここはちゃんとしたマッサージ店だし――なんて考えながらベッドに腰かけて待った。
やがて加藤さんが戻ってきたとき、視線が私のバスタオルのあたりで一瞬止まった気がした。でも彼は何事もなかったように笑顔で近づき、後ろから肩をやさしく揉みはじめる。
「肩、凝ってますね。結構疲れが溜まってるかも。胸が大きいと、その分負荷もかかりやすいんですよね」
さらりとした声だったが、私は顔が熱くなるのを自覚する。“胸が大きい”という言葉に、なぜか自分の秘め事を指摘されたような恥ずかしさと妙な高揚感が同時に込み上げる。
「じゃあ、うつ伏せになってください」
言われるがまま、ベッドにうつ伏せになると、バスタオルはお尻のあたりをふんわり覆うだけの状態に。加藤さんは私の足元から丁寧に揉みほぐしていく。足裏からふくらはぎ、膝裏、太ももの裏……段階を踏むたびに、じわじわと熱が身体に広がる。
その手つきが絶妙で、力強いのにどこか優しく、少しずつ上へ上へと近づいてくるとき、“このままもっと奥まで来たらどうなるんだろう”と期待する自分がいた。思わず足が開きがちになるのを意識するたび、心臓が弾んでしまう。
やがて加藤さんがベッドの上に乗り、私の足にまたがるような体勢でお尻まわりをマッサージしはじめたとき、バスタオルの下に手がするりと入り、直接お尻の肌をさする動きを感じた。お尻や太ももの付け根をしっかり揉みほぐす指先に、性感にも近い快感が混じる。私は声が出そうになるのを、必死にこらえていた。
「では仰向けになりましょうか」
うつ伏せを終えて仰向けになると、胸のあたりにバスタオルをかけてもらった。加藤さんは今度は腰やお腹のあたりを揉みはじめる。私は目を閉じ、深呼吸で落ち着こうとするが、彼の手がだんだん上がってきて、胸のふくらみの近くをさするとき、どうしようもなく呼吸が乱れてしまう。
手が止まる気配に、ふと目を開けると、加藤さんは私をまたぐようにベッドに上がり、真正面から私を見下ろしていた。エステサロンでは珍しくはない光景かもしれないが、私にはその“男性にまたがられている状況”が、危険なほど官能的に映った。顔が熱くなり、言葉が出てこない。
するとバスタオルの端から加藤さんの手が入り込み、胸の下や脇あたりを丁寧にマッサージしはじめる。ゆっくり円を描く動作がだんだん中心へと近づくにつれ、息が苦しいほどドキドキする。指先が乳首にかすめると、その瞬間、私の口から思わず「あっ……」という声が漏れた。
「すみません、大丈夫ですか? 痛くないですか」
加藤さんは落ち着いた声で聞いてくるが、その手はまだ胸の周囲を愛撫するように動いている。痛いわけでは決してなく、むしろ身体の奥がしびれるように熱い。喉が渇き、「ハァ…ハァ…」と浅い呼吸を繰り返すうち、バスタオルがずり落ち、胸が露わになってしまった。けれど、加藤さんは謝りながらも、そのまま私の肌に触れ続け、乳首まわりを優しく刺激し続ける。
「すごくきれいなバストですね」
彼が言ったその台詞は、私の頭をかっと熱くさせた。恥ずかしいのに、なんて快い言葉なのだろう。好きな人に褒められているわけではないのに、身体が甘く反応してしまう。瞬きを繰り返しながら「…あ、ありがとうございます」とだけ呟くと、加藤さんは再び胸に手を戻し、ゆっくり揉むように動かす。そのたびに、私は声にならない甘い吐息を漏らしていた。
やがて足元に移った加藤さんは、太ももや付け根を丁寧にマッサージしてくれた。Tバックを穿いてきた私は、濡れた下着が肌に張りついているのを自覚して、どうしようもなく恥ずかしかった。でも、その恥じらいがまた妙な高揚を引き起こす。
彼は一瞬ためらうようにしてから「…もしよければ、紙ショーツに替えますか?」と提案してきた。どうやら私の下着が濡れているのに気づいたようだ。私が何も答えられずにいると、加藤さんはバスタオルで下半身をさりげなく隠し、手早くTバックを下ろしてしまった。その動作はプロらしくスムーズなのに、私の心の中は恥ずかしさと期待感でぐちゃぐちゃだった。
すると、紙ショーツを渡される間もなく、加藤さんは私の鼠径部まわりをさするようにマッサージを続ける。指先がときおりクリトリスに触れるたびに、私の喉から声がこぼれる。
「嫌だったら言ってくださいね」
優しげな声とともに、彼の手が少し強めにアソコまわりをぐっと押し広げる。私はもう声を隠す余裕もなく、「あ…ん…」と快感を享受してしまう。そこからは、まるで理性が溶け去るようだった。
いつの間にか加藤さんの指が、私の中へ少しずつ入り込んでくる。湿った音が自分の耳にもはっきりと聞こえて、ますます興奮が高まる。彼はもう片手で私の胸を優しく揉みながら、アソコの奥を刺激してくる。腰が勝手に浮き上がり、我慢していた吐息が「あぁ…」と甘い声に変わる。
「…イキそう…」
自分でも初めて聞くような危うい声を漏らしながら、あっという間に私は絶頂へ達してしまった。腰がビクビクと震え、全身が熱く溶けていく。マッサージの“気持ちよさ”のはずが、いつの間にか完全に官能の世界へ連れ去られていたのだ。
放心状態のまま肩で息をしていると、加藤さんがもう一度私のアソコに触れてきた。私は敏感になったそこを刺激され、再び甘く切ない声を漏らす。気づくと彼はズボンをいつ脱いだのだろうか、私の股間あたりに腰を下ろし、硬くなったものを私の奥に重ね合わせてきた。体が「あぁ…」と拒むどころか、むしろ積極的に求めるように震え、そのまま彼のものが私の中へ――。
あとはもう何度も繰り返す快感の波に身を浸し、こんなに気持ちよくていいのかとさえ思うほど何度も絶頂を迎えた。まるでマッサージという名の秘密の行為。それまでとはまったく別次元の官能に溺れ、私は声を抑えられないまま快感を貪ってしまった。
施術が終わる頃には、外の空は夕闇に包まれつつあった。私は解放感と罪悪感が入り混じる面持ちで着替えを済ませ、加藤さんにお礼を言う。帰り道、足もとがふらつくほど身体はほぐれていたが、それ以上に心が乱れていた。もう一度行ってみたいような、行くのが怖いような複雑な気持ち。あの行為は一体なんだったのか――でも確かに、最高に気持ちよかったのは事実だった。
あれから時間が経った今も、私の中ではあのマッサージと呼ぶにはあまりに艶めかしい出来事が、刺激的な記憶として残っている。もう一度あの場所へ行けば、同じように身も心も溶かされるのだろうか。そう思うと怖くて、でも、どこかで惹かれてしまう自分がいる――そんな秘密を抱えつつ、私は今日も大学へ足を運ぶ。



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