背徳の純愛 〜上司の妻に堕ちた夜、禁じられた想いが交差する〜

第一章：出会い

その夜、僕は上司である豊さんに誘われ、彼の家に招かれた。飲み会で終電を逃した僕を見かねて、豊さんが「泊まっていけ」と強引に誘ってくれたのだ。正直、遠慮したかったが、あまりにしつこく勧められ、断ることができなかった。

玄関を開けた時、目の前に現れた女性――彩花さんは、予想以上に美しかった。肩まで流れる黒髪に、優しげでありながらどこか儚さを感じさせる瞳。薄手のニットに包まれた華奢な体が、夜の柔らかな光に溶け込むように見えた。

「こんばんは。遅くにすみません……」

「いえいえ、気にしないで。主人がお世話になってるみたいだし。」

彼女の微笑みは柔らかいけれど、どこか影を帯びているようにも見えた。それが何故なのか、その時の僕にはわからなかった。

リビングに通され、豊さんと僕は飲み直すことになった。彩花さんは手際よくグラスやおつまみを用意してくれ、その仕草一つ一つが洗練されていて美しかった。

「ありがとうございます、彩花さん。急にお邪魔してしまって……」

「大丈夫よ。あの人、しょっちゅう飲み歩いて帰りが遅いから慣れてるの。」

彼女の言葉には少しだけ棘があった。だが、それが不思議と心地よく感じたのは何故だろう。もしかすると、彼女の言葉の裏に隠された寂しさを感じ取ってしまったのかもしれない。

しばらく飲み続けた豊さんは、やがて酔いつぶれてソファで寝てしまった。静まり返ったリビングに残されたのは、僕と彩花さんだけだった。

「すみません……豊さんがこんなことに……。」

「いいのよ。いつものことだから。」

彼女は苦笑いしながらそう言ったが、その笑顔の奥に潜む孤独を僕は見逃さなかった。何かを訴えかけるような瞳。その瞳に見つめられた瞬間、僕の胸は不思議な高鳴りを覚えていた。

「……お茶でも淹れるわね。少し落ち着きましょう。」

彩花さんはキッチンへと向かい、僕は何もできず、ただその後ろ姿を見つめていた。彼女の仕草すべてに引き寄せられている自分に気づく。

「翔くん、どうぞ。」

彼女が差し出してくれたお茶を受け取りながら、僕は彼女の美しい指先に目を奪われた。その指先が今にも壊れてしまいそうなほど儚く見えて、思わず心を揺さぶられる。

「ありがとうございます……。あの、彩花さん……大丈夫ですか？ なんだか疲れているように見えます。」

彼女は一瞬驚いたように僕を見つめた。そして少しだけ視線を逸らしながら、かすかに震える声で言った。

「……気づいてくれるのね。そう、ちょっと疲れてるのかもしれないわ。」

「僕でよければ……何かお話を聞きますよ。」

その言葉を口にした瞬間、彩花さんの瞳に浮かぶ影がほんの少し揺らいだように見えた。僕の存在が、彼女にとって何かを変えるかもしれない。そんな感覚が心に灯る。

彼女と向き合うたびに、僕の胸の中で膨れ上がっていく感情。これはただの憧れや同情ではない。もっと深い何かに引き寄せられている。

「翔くん……優しいのね。」

彼女の言葉に胸が熱くなる。もっと彼女を知りたい。もっと、彼女を感じたい。

第二章：抑えられない感情

豊さんが眠りについてから、静まり返ったリビングに残されたのは僕と彩花さんだけだった。時計の秒針が響くほどの静寂の中で、僕の心臓だけがやけに騒がしく音を立てていた。

「なんだか、不思議ですね……」

僕は無意識に口を開いた。その言葉に、彩花さんが少し微笑む。

「何が？」

「こうして……彩花さんと二人きりで話していることがです。」

「ふふ、確かに。普通ならこんな状況、ありえないものね。」

彼女の声はどこか寂しげだった。視線が交わるたびに、僕は胸の奥で何かがざわめくのを感じる。抑えきれない感情が、言葉を超えて溢れ出しそうになる。

「僕、彩花さんが……素敵だなって思っていました。」

自分の言葉に驚いた。けれどもう引き返せない。彼女の目が僕を見つめ返し、その瞳に映る僕自身を見た時、何かが崩れ去っていくのを感じた。

「翔くん……どうして……？」

「ずっと、感じていたんです。彩花さんのことが……ただの上司の奥さんってだけじゃなくて……。」

その言葉がきっかけだったのかもしれない。彩花さんの瞳が揺れているのがはっきりと見えた。

「私も……ずっと苦しかったの。誰かに気づいてほしくて、でも誰にも気づいてもらえなくて……」

彼女の言葉が、僕の胸に鋭く刺さった。今この瞬間だけでも、彼女を救いたい。そう強く思ってしまった。

「彩花さん……僕は……」

言葉を重ねるよりも早く、僕たちの唇は重なっていた。

触れ合った瞬間、全身に熱が駆け抜ける。彼女の唇は信じられないほど柔らかくて、僕の中にあるすべての理性を簡単に飲み込んでしまった。

「彩花さん……もう、止められません……」

言葉を紡ぎながら、僕の手は彼女の肩に触れ、その温もりを確かめるようにそっと抱き寄せた。僕の胸の中で渦巻いていた感情が、今まさに形を持って解き放たれようとしていた。

「翔くん……私も……止めたくないの……」

彼女の声が震えている。けれど、その瞳に映るのは決意だった。僕を見つめるその瞳は、まるで全てを委ねるように優しくもあり、どこか儚げだった。

「彩花さん……あなたがこんなに……」

理性は完全に崩れ落ち、ただ感情に突き動かされるままに彼女の存在を求めていた。言葉では表せないほどの想いが、互いの間を満たしていく。

「翔くん……もっと……私を見て……私を感じて……お願い……」

彼女の言葉は、僕の心を深く揺さぶる。求められることの喜びと同時に、彼女を失いたくないという恐れが僕を支配していた。

「僕も……彩花さんが……こんなにも……」

気づけば僕たちは互いに触れ合い、言葉では表せない感情を共有していた。彼女の肌の温かさ、呼吸の音、そのすべてが僕を強く惹きつけて離さない。

「どうして……どうしてこんなにも……翔くん……お願い……私を見ていて……私を感じて……！」

彼女の声に応えるように、僕の心はただ彼女を求め続けていた。静まり返った部屋の中で、二人だけの世界がゆっくりと確立されていく。