その夏の海は、記憶のなかのどれよりも青く、深かった。
私の中にまだ一度も知らない波が、何度も何度も押し寄せてきた。
大学を卒業して2年目。私は25歳になっていた。
恋も仕事も、いつも途中で諦めてしまうくせが抜けないまま、ただ日々に流されていた。
そんなとき、学生時代の友人・美穂から「海に行こう」と誘いが来た。
彼女は数ヶ月前に7年付き合った彼と別れたばかりで、私はいまだに「初めて」を誰にも明け渡せずにいた。
「……これ、着てみようか」
美穂が持ってきたのは、白く透けるようなキャミソールと、花びらのように小さなビキニだった。
「大胆すぎない?」
私が笑うと、美穂はウィンクして見せた。
日差しは強く、海は遠くに銀色の帯のように光っていた。
Tシャツの裾から覗く自分の脚がいつもより細く感じられて、私は少しだけ、今日の自分を肯定した。
ビーチに着くと、すぐに声をかけてきたのは、浅黒い肌の青年たちだった。
まるで絵に描いたような軽いノリ。でもその瞳には、まっすぐなものが宿っていた。
「俺、博。こっちは直樹。君たち、いい匂いする」
その一言に、美穂が声を上げて笑い、すぐに直樹の腕を取って歩き出した。
まるで仕組まれたように、私は博とふたりきりになった。
「日焼け、気にしないタイプ?」
そう言いながら、博がオイルのボトルを差し出してきた。
「焼けたくはないけど……」
差し出された手の中で、白く光る日焼け止め。
私はTシャツを脱ぎ、背を向けた。
指先が、そっと肩に触れた。
ひんやりとした感触のあとに、すぐ熱がじんわりと広がっていく。
肩甲骨をなぞるその手は、時折わざとらしく止まり、肌のきわを何度も往復した。
「ここも焼けやすいよ」
太ももの内側に指が入った瞬間、心臓が跳ねた。
ビキニの縁が押し上げられ、生地の下の柔らかい部分に、ほんの少し指が触れた。
「……触ってる」
小さくそう言うと、博は微笑んだ。
「感じてる?」
私の頬が熱くなるのを見て、彼は少しずつ、手を奥へと滑り込ませた。
布の下に忍び込んだ指が、敏感な部分をそっと押し、撫で、なぞってくる。
呼吸が乱れ始め、喉が乾いた。
「処女なの、私」
その一言が、唇から零れたとき、彼の動きが止まった。
「……ほんとに?」
私は頷いた。彼はしばらく黙っていたが、目を伏せる私の手を取って立ち上がらせた。
「なら、ゆっくりする。ついてきて」
彼に連れられて歩いた先は、人目につかない岩場の奥。
岩に手をついて立たされ、後ろから抱かれる形になった。
「怖くないようにするから」
彼の舌が首筋に触れた瞬間、全身が跳ねる。
ぞわぞわとした感覚が背中から腰へ、そして太ももへ。
キャミソールがめくられ、ビキニがそっと下げられ、風が肌を撫でるたびに、羞恥と興奮が交互に押し寄せた。
「綺麗だよ、全部」
後ろから舐められる感触。
お尻の割れ目をゆっくりとなぞるように、舌が這っていく。
そこから濡れた部分へ、口づけを落とされ、花弁の奥まで丹念に吸われた。
「や、そんなとこ……」
声が漏れた。
自分でも知らないくらい濡れていて、舐められるたびに音がした。
「入れるよ」
言葉よりも、身体が先に頷いていた。
ゆっくりと、硬く熱いものが押し入ってくる。
初めてなのに、痛みよりも「満たされる」という感覚の方が強かった。
「全部、入った……」
彼の声が震えていた。
私の中で、彼がゆっくりと動き出す。
擦れるたびに中がきゅっと締まり、快感がじわじわと広がっていく。
乳首を指で転がされ、腰を引き寄せられ、ピストンが徐々に深く、強くなる。
そのたびに「ん……あっ……」と、止められない声が漏れた。
「声、出ちゃうね」
彼の言葉に、羞恥と興奮が入り混じり、身体の奥がきゅんと痺れた。
「中、熱くなってきた……」
彼が囁き、突き上げが早くなる。
「私も……だめ、イキそう……」
絶頂の瞬間、身体が痙攣して、頭が真っ白になる。
彼が中で脈打ち、熱いものを注ぎ込まれたとき、私はただ受け入れるしかなかった。
結合したまま、しばらく動けなかった。
そして、彼が抜けたあとの空虚と、なかから溢れた液体の感触に、現実が戻ってきた。
「……何もつけてなかったよね?」
言った瞬間、彼は私の口を塞ぐようにキスをした。
舌が絡まり、胸が揉まれ、私は再び意識が溶けていった。
「もう一度、していい?」
私は首を横に振った。
けれど、彼の欲望は収まらず、私の唇に彼のそれが押し当てられた。
愛液と、彼の体温が混ざったそれを、私は目を閉じて受け入れた。
そして、もう一度──
その後、美穂は何も言わなかった。
ただ、同じ目をしていた。
何かを得て、何かを失くした目。
夏が終わっても、身体の奥には彼の熱が残っていた。
そして、私の中には確かに、別の何かが宿っていた。
私はひと夏で、女になった。



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